FUJIFILM XF10-24mmF4 R OIS

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

35mm判換算で15-36mm相当をカバーする広角ズームレンズ。ワイド側では自然風景をダイナミックに捉えたり、建築物全体をフレームの中に入れることも可能ですし、テレ側では自然な画角で日常スナップもこなせる、つまり幅広く対応できる焦点域を持っているわけです。またF4固定ですから、ズーミングによるF値の変化を気にすることなく撮影に集中できますし、手ブレ補正機構OISの搭載も心強い限り。考えてみますと、フジノンの銘を関したスチルカメラ用交換レンズで広角ズームというのは、フイルム時代を含めても数少なかったように記憶しています。そういった背景の中で初っ端からF値固定を出してきたのですから、開発には相当の思い入れがあったのではないでしょうか。発売から既に3年以上が経っていますが、その写り、使い勝手はどうなのか。最新のレンズと共用した場合に違和感などはあるのか。じっくりとご覧ください。

( Photography & Text : TAK )

高さにして20m、7階建ビルくらいはあろうかという柱状玄武岩の絶壁です。海面近くの岩の上から広角端15mm相当で仰ぎ見ることでそそり立つ姿を強調してみましたが、横位置でも余裕で上まで入りました。F8まで絞っていますが、当然のごとく画面の隅々まで極めてシャープです。岩のゴツゴツした感触、雲の表情、波の様子もリアルに伝わってきます。

29mm相当、開放での対逆光性能です。レンズが嫌がりそうなアングルにもかかわらず、このヌケの良さです。シャープネス、コントラストも申し分ありませんし、色滲みとも無縁。EDレンズや放送用レンズで培われたHT-EBCコーティングが力を発揮しているのでしょうね。ハイライトの中にもしっかりと階調の幅がありますし、ゴースト、フレア、周辺減光なども無さすぎて寂しいほどです。いや、真面目な話、出てくれては困るシーンも多いのでこれは非常に助かりますね。そういう意味では「プロフェッショナル」なレンズだと思います。

望遠端36mm相当で開放、最短付近です。この立体感、いかがですか？ 最短撮影距離24cmですから彼岸花も画面いっぱいに写ってくれます。ボケ味がこれまた気品すら感じられるほど良い塩梅で、キリッと端正に捉えられた被写体を引き立ててくれています。発色にも深みがありますね。X-Trans CMOSセンサーとフィルムシミュレーションの恩恵を差し引いても非常に豊かで、映像化が難しいとされる赤の濃淡さえも生々しく描いてくれています。

こちらは広角端15mm相当で開放、最短付近です。ボケ味の傾向は変わらずスムースで、周辺が派手に流れる気配もありません。ピントピークを画面中央から外してみましたが、解像感は高いレベルを保っています。一般的な広角ズームとは一線を画すパフォーマンスではないでしょうか。

少々懐かしさも感じるX-E2での撮影。引きの取れないところでもグーンと引いて「frame within a frame」の構図さえ取れてしまいます。他にもカメラマンがいて、ささっと撮って立ち去りたいシチュエーション。15mm相当とはいえ手ブレは気になりますし、ISO感度も出来る限り上げたくない。でもちょっと絞りたい。そんなワガママも手ブレ補正で叶うのです。補正力は「2.5段」とカタログにはあるのですが、広角ですからそれで十分でしょう。実際の感覚的には「もっと効いてるんじゃないの？」と思ったほど、しっかりと止めてくれました。

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広角レンズといえば歪曲収差がつきものですが、高性能非球面レンズを4枚も使用していることもあってか、とにかく全域で直線が歪みません。これなら建築物なども安心して狙えますよね。まさに「超優等生」という言葉があてはまるレンズではないでしょうか。

15mmとなれば情報量も圧倒的。複雑な被写体を複雑なままに捉える醍醐味も味わえます。こういう見上げるアングルだと、歪曲収差がシャットアウトされていることも顕著に分かりますね。

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もはや「人種のサラダボウル」となった国際観光都市京都。黄昏時に「クラシッククロームモード」、ノーファインダーで撮ると、どこの国にいるのか分からなくなりそうな浮遊感覚を覚えるのですが、これがまた楽しいのです。ステッピングモーターによるAF動作も俊敏で、とっさに構えてもスッと合焦してくれます。

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ウルトラワイドなウルトラ優等生

描写力、汎用性、操作性、どれをとっても粗探しをする気が失せるほど一級品です。これがズームレンズかと疑いたくなるほどに開放からシャープで、絞りの選択は基本的に被写界深度の調整のためと考えてよいでしょう。寄った時のボケ味はこれまたF4の広角レンズとは思えぬほど出色の出来栄え。シャキッと解像されたピント面を一層際立たせてくれます。逆光耐性も非常に高く、周辺減光も視認出来ないレベルでしたし、階調表現やコントラストや発色も秀逸。つまりクセというものが見当たらない、それはそれは使いやすいレンズなのです。F4ということで光学設計的にも無理をしていないことも功を奏しているのでしょうね。機能とスタイルを見事に両立させた鏡胴デザインからは、撮影の本質を見極めた富士フイルムの哲学が見て取れます。他のXFレンズ同様、金属製なので操作に安心感と節度感がありますし、幅広で上質な回転トルクのフォーカス／ズームリングのおかげでファインダーから目を離さずとも手探りで操作が出来てしまう。もちろんズームレンズなりのサイズ感はありますが、「重い」という感覚はありません。X-T20などのコンパクトなボディで使用する際も、グリップをつければ重量的にもルックス的にもバッチリ決まります。人間で言えばあまり冗談を言わず黙々と仕事をこなす職人のようなタイプでしょうか。でもそんな真面目な道具にこそ全幅の信頼がおけるのです。初めての広角としてまず手にしていただきたいレンズですし、F値の明るい単焦点の一本でも足せば広角域は完成するでしょう。と、ここまで書いておいて、「最新のXFレンズと比べて色々どうなのか」について触れるのを忘れていました。理由はいたってシンプルでして、最新レンズと共用しても、全ての面において何の違和感もなかったからです。むしろ3年以上前からここまでの完成度を誇っていたことに感心するばかりで、「XFレンズに外れなし」説を支持する根拠がまた一つ増えたのでした。

( 2017.10.20 )