FUJIFILM GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

こちらは5段分の強力な手ブレ補正を搭載した、中望遠ハーフマクロ（最大撮影倍率0.5倍）レンズ。中判ミラーレスデジタル「GFX（Gマウント）」向けのマクロレンズとしては、レビュー執筆時点で本レンズが唯一のラインナップとなっています。フルサイズに換算すると95mm相当となる画角はマクロレンズの中でもスタンダードといってもよく、とても扱いやすい画角となっています。また、ワーキングディスタンスが稼ぎやすいので、花の撮影はもちろんのことポートレイトにも重宝することでしょう。EDレンズを3枚も組み込んだリッチな光学系を有し、撮影距離に応じて複数のレンズ群を制御する「フローティングフォーカス方式」を採用。これにより撮影距離の変化による描写性能の変化を抑制し、近距離であろうが遠距離であろうが高解像な撮像を提供してくれるとのこと。そのあたりの実力、しっかりと確認いただくべく撮り貯めてきた撮影カットをご覧いただきましょう。

( Photography : A.Inden / Text : KIMURAX )

ひんやりとした乾ききった空気感までもが伝わってきそうな描写。潤いを失った樹皮から細かな枝先までもが、曖昧になることなく克明に写し込まれていることがわかります。

車体のフォルムはもちろん、雨染みや錆染みが所々に見られる塗装面の質感再現までぬかり無し。ピント面のキレ味、いいですね。大げさになりすぎない前後の自然なボケ味も手伝って、程よい立体感が得られているのでしょう。

かなり大胆に前ボケを入れてみましたが、悪目立ちするようなところはまったく無いですね。ハイライト部分も自然に馴染んでいます。画面の下部あたりがもっと煩くなってもおかしくないようなシチュエーションなのですが、クセのないボケ味です。

前後のボケの連なりもいいですね。ピント面はキリッとシャープに、背景はゆっくりととろけるようにボケていく。こういった描写を得られることが、単焦点レンズをチョイスする大きな理由のひとつでもあるでしょう。

さあ、被写体に近づいていきましょう。ピント面の薄さがよくわかりますね。革紐、ニスを施された白木、ガラスそれぞれの質感までもがきちんと伝わってくる描き込み。絞り開放でのボケのボリュームも程よく、まるで革紐の留め球をじっと見つめている視界を再現しているかのような、情緒を感じる写りです。

本レンズの最短撮影距離は45cm。ほぼそれに近い距離での撮影になります。プルンッとしたその姿を瑞々しく描き出された水滴。とても柔らかで品のあるボケ味との対比が絶妙です。同じような構図でも、マクロ撮影ではピントをどこに持っていくかで印象は随分と変わってきます。そんなトライを繰り返す際にも、本レンズのAFの動きは静かかつ機敏。この応答性はマクロ撮影時にはとても重要なファクターです。

風景の一部をスパッと切り取りやすい画角ですね。圧縮効果が効いていることもあり、立体感によりいっそう拍車が掛かっています。

それなりの距離があるものの、拡大して見ると少年が飛ばした砂粒までしっかりと写し止めています。そんな細かい部分の描写の積み上げで、写真としてのリアリティが得られるのですよね。

95mm相当のレンズなので、一般的に言われる手ブレ限界「1/焦点距離」は「1/95」ということになりますが、手ブレ補正のおかげで難なくクリア。ガラス、金属、布といった異なる質感をリアルに表現する高い解像力、忠実な色再現に感心させられます。

被写体の形をそのままに捉えられる焦点距離は扱いやすいですね。

ハイキーな画でも立体感ビンビンです。

ご覧いただいてきた作例の中で唯一、開放から絞ったカットです。ちょっぴりですけどね（笑）。とにかく開放からキレ味のいい描写を見せてくれるレンズです。絞って像を整えるという作業の必要はほとんど無く、もっぱら被写界深度を調整する時にだけ絞るという感じでしょうか。

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ボケ味、キレ味、マクロレンズの醍醐味ここにあり。

ファインダーを覗いているだけでもワクワクしてしまうのがマクロの世界です。本レンズは絞り開放F4というスペックですが、センサーは中判フォーマット（43.8×32.9mm）。フルサイズ機でのF4レンズを使用したときよりも大きなボケが得られますからね、そのボケが主役をぐっと引き立てる撮像の臨場感にゾクッとしてしまいます。そんな魅惑の世界を楽しませてくれる一方で、被写体との距離をおけば画角95mm相当のいわゆる中望遠レンズとしても重宝します。マクロ撮影だけが取り柄でないのがマクロレンズ。あれっ？ちょっとややこしいですかね（笑）。ま、とにかく被写体との距離に関わらず、絞り開放からビシッと気持ちのいいシャープな像はさすがと言わんばかりの仕上がりでした。少々絞り込んでいってもカリカリしすぎることもありませんしね。「GF120mmF4 R LM OIS WR Macro」の描写力・表現力は魅力的です。そしてこの写真のクオリティを確かなものにしてくれる要素の一つでもあるのが手ブレ補正。マクロ撮影や望遠レンズを楽しんでいる方ならよくご存知のことでしょうが、とにかく面白いようにピタッと止まります。三脚を据えてのじっくりマクロ撮影もいいですが、インスピレーションに導かれるままに手持ちで被写体にグイグイ迫って行く楽しさを、ぜひとも味わってみてください。ボケがたっぷり欲しい時も、全面キリッとシャープに写したい時も。寄っても引いても、ハイレベルなアウトプットをしっかりもたらしてくれる。プロ・アマ問わず、ボケ味、キレ味といった、マクロレンズならではの醍醐味を存分に楽しむことができる骨太な一本です。

( 2018.01.15 )