PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

ASAHI PENTAX SP
Super-Takumar 1:1.4/50

モノクロフィルムを毎日1本撮ってはその晩に自ら現像していた日々。かれこれ20年前のことです。シャッターを切る回数ならば、数えてはいませんが、デジタルカメラを手にしている今の方がその頃よりずっと多い気はします。けれど、フィルムの時代は1枚1枚を真剣に勝負していた気がするのもまた確か。1日3本、4本と撮った日はヘロヘロになりました。なにしろ、あの頃は「とりあえず撮ってから考える」なんてできなかったのです。今はずいぶんと便利になりました。でも時々何かが足りないと感じてしまうのは、きっとシャッターを切るたびに勝負を求められなくなったせいなのだろうと思ったりします。

だからといってデジタルよりアナログなフィルムがいいという簡単な話でもなく。今、フィルムで写真を毎日撮って毎晩現像してなんてことはとてもじゃないができそうもありません。スキャンデータに写り込んだゴミ取りレタッチなんて、できればもうしたくない。36枚全カットはしんどい作業でした。それに、今の高解像なデジタル写真を見慣れていると、フィルムの写真は想像以上に写っていない(笑)。

新しく出たACROS100 IIの箱を見ると「Made in UK」の文字。2020年を迎えるデジタルカメラ全盛の時代に、国を跨いでACROS100 IIというフィルムが生まれてきたのです。それは賞賛に値するできごと。35mmフィルムが写真機に使われるようになって約110年、その間に生まれてきた星の数ほどのフィルムカメラたちを「ACROS100 II」が未来へと繋いでくれたのでしょう。

今回は家にあった「ASAHI PENTAX SP」で撮影しました。当時大ヒットした商品だけに、希少性がないため中古市場でも値頃なカメラです。でもこれは亡き父の形見、手放すわけにはいかないのです。内蔵露出計に入れる電池がなかったので、今回は昔のフィルムの紙箱には必ず書いてあった「晴れた日の順光は1/125秒・F11」、「曇りや日陰なら1/125秒・F4」を思い出して適当に。この2つを頭に入れてシャッターを切ればきっと何かしら写っているはず…と現像から上がってきたネガを見ると、1/1000秒のシャッター速度では画面の右半分が未露光となってしまっていた。20数年ぶりに使うまで気がつかなかった、オーバーホールに出さなくては。

カメラにモノクロフィルムを詰めて写真を撮るという久しぶりの体験。今回は被写体を吟味して1枚1枚大切に撮るのではなく、巻き上げレバーをごりっと回すリズムを楽しむことにしました。お陰で大したものが写ったカットはなく、ベタを見せるのがとても恥ずかしい。でも、上がってきたカットを見て、あの頃、モノクロフィルムをカメラに詰めて、光と影ばかり追いかけていた自分を鮮明に思い出すことができました。私にはそれが一番の収穫。

( Photography & Text by Naz )

※クリックで作例を拡大

ACROS 100II で写そう
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( 2020.02.21 )

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