PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
第7話
EXUS Lens Protect
シンク・アバウト・マルミのフィルター(その1)
光学性能(反射率)
まずはいちばん大事な光学性能から。プロテクトフィルターの場合、問題になるのが反射率です。 |
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すいません、「反射率」というのは? |
要するに、フィルターを通り抜けずに跳ね返ってしまう「光のロス」がどれぐらいあるか? ってこと。ここにフィルターが無ければ、いわば反射率は0%ということになり、レンズ本来の性能が過不足なく発揮されます。光学的には何の影響も与えないのがプロテクトフィルターの理想ですから、反射率もできるだけ下げたい。この反射率が、DHGの0.5%からEXUSでは0.3%に向上したんです。 |
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その差たった0.2%? そのぐらいは誤差の範囲でござろう。 |
うーん、数字だけだとそう感じるのも無理はないか。ではこれを見てください。 |
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タテ軸が反射率で、ヨコ軸が光の波長、つまり色です。このグラフにもある380nmから780nmあたりが、ヒトの目が色として認識する光の波長の範囲です。 |
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そして赤い線がEXUSで、青い線がDHG Superですね。 |
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うわ、こんなに違うでござるか! |
光の波長が短い、つまり左の方からすでにDHGより反射率が低くなっていますが、波長が長くなるにつれ、その違いが顕著になっていくのがよく分かりますね。 |
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光の波長については第1話でやったわね。波長が長いというのは、つまり赤の成分を含んだ光。DHGではまだ赤い光がこんなに反射してたんだ。 |
たった0.2%と言えども、実際にはとんでもなく大きな違いだということが、これでお分かりいただけたと思います。 |
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よく分かったでござる。 |
デジタル以降、カメラ・交換レンズの性能向上は一層顕著となっていて、当然、フィルターの性能も引き上げていく必要があります。撥水・防汚や帯電防止などの付加価値を付与しつつ、低反射を追い求めることが重要というわけです。 |
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それが「ただの」プロテクトフィルターじゃない理由ですね。 |
ちなみにこの反射率、製造上のばらつきの平均値とか、近似値とか、ましてや理論値なんかではなく、EXUSではひとつひとつの製品で本当に反射率0.3%を維持しているので、安心して使っていただきたいです。はい、次は機械的精度。 |
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機械的精度(平面性の確保と枠の構造)
ガラスの厚みを、DHGの1.3mmからEXUSでは2mmに変更しました。 |
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え? ちょっと待って。これタイプミスですよね? だって、ガラスは薄い方がいいんでしょう? 当然。 |
いや、間違いではありません。より厚い、2mmのガラスを採用したんです。 |
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それは技術の進歩に逆行しているように思えるんだけど。 |
すごく簡単な話で、薄いガラスは歪むんですよ。これはもう、自然摂理の問題。言うまでもなく、平面性の確保は超重要事項。薄いガラスで歪む危険性があるのだったら、厚いガラスを使って、高い精度を安定的に維持できるほうが良いという結論に至ったんです。 |
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でも、その代わりにいろいろと弊害が出るでござろう? |
ガラス素材の改良や、コーティング技術で解決済みです。ただ、厚みが増したぶん、フィルター枠も厚くなってしまうという、当たり前の問題が残ります。 |
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まぁ、それは当然なんだろうけど、枠はできるだけ薄くしたいよなあ。ケラレとか、枠が光を反射してしまう問題があるから。 |
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フィルターは重ねて使うこともあるしね。 |
そこで、ガラスと枠の固定方法を工夫しました。 |
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ガラスと枠の固定方法については、第3話で出てきましたね。 |
DHGではバネ止めという方法でガラスと枠を固定していたんですが、これを、リング止めとカシメ止めのハイブリッドで固定するように、まったく新しい枠の構造を考えたんです。これで、厚いガラスを入れても枠の厚みを抑えることに成功しました。 |
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はああ、ハイブリッドでござるか。 |
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リング止めと言っても、ただリングで押さえているんじゃなくて、リングにガラスを嵌め込んで、その上で枠に入れてるんですね。こりゃ手が込んでるわ。そのへんが秘密なんだな、きっと。 |
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第3話で枠の研究をした時には正直、「どれも一緒じゃね? 要は固定されればいいんでしょ?」ぐらいにしか思ってなかったけど、まだまだ新しい発想が生まれる余地があるんですね。面白いなあ。 |