PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SORI2 - 新宿光學總合研究所

第1話
フィルター事始め
写真用フィルターとは何か

色に変化を与えるフィルター

じゃあ、まずは「色に変化を与える」フィルターから。もっともシンプルなのは、色がついたフィルター。それをレンズにつけて撮る。

カイハツ北村
2号

つまり、色眼鏡で世の中を見るわけですね。でも、ひとくちに色と言ってもどんな色? いまいちピンと来ないんだけど。

よく使われたのは、ハンサーと呼ばれる、色がついていて、ある特定の色を不自然にならない程度に強調するフィルター。例えば緑のフィルターで森を撮ったり、青で青空を、赤で夕景や紅葉なんかを撮ったり。スカイライトフィルターにはごく薄いピンク色が付いていて、人の肌が青被りするのを防いでくれるので大変良く使われました。デジタルなら簡単にできる色温度の調整も、かつてはフィルターを付け替えることでやっていたんですよ。

カイハツ北村
2号

へえええ。

バリエーションもいっぱいあって、フィルターの一部分(半分だけ、外周だけ)に色がついたものや、セピア色にするものなど。あるいは自然とはとても言い難い、アバンギャルドな色づけをするものだってある。というか、あった。

カイハツ北村

PHOTO YODOBASHI

色つきフィルターの例。左上から時計回りにグリーンハンサー、セピア、グラデーション(ピンク)、チェンジャブルカラー(レバーを回すことで2つの色が無段階に切り替えられるスグレモノ)。

3号

「あった」ということは・・

写真がデジタルになって、そういう色つきフィルターはあまり使われなくなった。その点、もう一つの方法である「光の波長」を利用したフィルターは現代に即したやり方だと言える。

オヤカタ関
2号

ヒカリノハチョウ?

光というのは、実は波打ちながら進んでいる。その波の長さのことを波長と言うんだ。

オヤカタ関
2号

読んで字の如くですね。

その波長が、実は色の正体。「波の長さの違い」が、ヒトの目には「色の違い」として知覚されるというわけ。もう少し詳しく説明するとこう。

オヤカタ関

PHOTO YODOBASHI

全体的には「電磁波の波長」と呼ばれるものなんだけど、そこから説明し始めると大変なので割愛。その電磁波の波長のごく一部が「ヒトの目に色として認識される光の波長」の部分であると、まずはそう理解して欲しい。

オヤカタ関

波長が短いと紫。長いと赤。その間の、だいたい380nmから780nmまでがヒトの目が色として認識できる波長の範囲です。単位の「nm」は「ナノメートル」と読みます。1ナノメートルは10億分の1メートル。

カイハツ北村
4号

1メートルの10億分の1!

そんなわけで「色の違い=波長の違い」であることが分かったと思うけど、現代のフィルターはこの波長を利用して色をコントロールしているんだ。例えばこれを見てごらん。

オヤカタ関

PHOTO YODOBASHI

1号

何かのグラフのように見えます。

これはあるフィルターの特性を表したもの。タテ軸が透過率で、どのぐらい光を通すか。ヨコ軸が波長、つまり色。グラフを見て何か気づくことは?

オヤカタ関
2号

真ん中あたりで、ストンと落ちている。

そう。570nmから600nmあたりだけが、不自然に落ち込んでるよね。このあたりの波長は黄色。これはその部分の波長だけをカットして、センサーに届きにくくするためのフィルターなんだ。

オヤカタ関
1号

黄色が写って欲しくない写真? はて、どんな写真だろう?

さあ、何でしょう。ま、詳しくは改めてやりますよ。これは黄色い光をカットするフィルターの例ですが、もちろん他の色でも同じことができますし、逆の考え方をすれば、特定の色だけ通すことも可能です。

カイハツ北村

こうして波長ごとに透過率を変化させるのはフィルターの得意分野。だからフィルム時代には大活躍したよね。

オヤカタ関