PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/640, F5.6, ISO 100, Photo by NB

SONY SEL2860 FE 28-60mm F4-5.6

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

ソニーの「FE 28-60mm F4-5.6」のシューティングレポートをお届けします。「ん? 今ごろ?」と思われるかもしれません。そうなんです。このレンズの発売は2021年1月。まれに、というかしばしば、このようにシューティングレポートからするっと抜け落ちるものがあります。それでも商品として販売されている以上、時間が経っていてもきちんとレポートするのがフォトヨドバシの基本理念なのであります(なんて、胸を張って言えた義理ではありませんが。申し訳ないことです)。しかし今回の作例、ボディはすべて発売されたばかりの「α7C II」を使っています。そう、これは「α7C II ズームレンズキット」と同じ組み合わせなのです。そんなわけで今回のシューティングレポートは、このキットを買うとどういう写真が撮れるのか? という視点も交えてレポートすることにします。それなら、今ごろになってこのレンズのレポートを書いている気まずさも、多少は和らぐというものです。

( Photography & Text : NB )

SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/4000, F4, ISO 1600, Photo by NB

なぜこのシチュエーションでISOが1600なのか。それは、これが今回撮った最初の1枚で、「おっ」と思って慌ててシャッターを切ったはいいが、なぜかISOが1600に固定されていたという、要するに準備不足による失敗作なのです。しかし、図らずもα7C IIの良好な高感度特性が垣間見えるカットになりました。開放F4-5.6というこのレンズの場合、このあたりまでISOが上がることぐらい完全に想定内ですからね(少なくともこの構図では絶対になりませんが)。ノイズ? 画質の荒れ? 私には何も見えません。というか、もはやISO 1600を「高感度」と呼んで良いのかどうか、そんな昨今ではあります。

SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/30, F4, ISO 125, Photo by NB

超小型・超軽量の本レンズは、撮影の準備にひと工程必要です。ズームリングをちょっと回すと、レンズ先端がにゅっと出てきて撮影スタンバイ。いわゆる沈胴式のレンズです。小型軽量のα7C IIの相棒として、完璧に理に適っています。もちろん写りだって。微妙な色あいの椅子の発色や、よく磨かれたコンクリートに鈍く反射する光の表現に感心。

SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/125, F5.6, ISO 100, Photo by NB

目についたものをそのまま、難しいことは何も考えずに肩の力を抜いて撮る。このレンズはそういう撮り方ができるレンズですし、またそういう撮り方に、自然といざなってくれるレンズでもあります。傑作が撮れようが撮れまいが、「あー、今日も面白かった」 一日の終わりにそんな気持ちにさせてくれるレンズが、良いレンズです。


SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/640, F5, ISO 100, Photo by NB

おびただしい数の細かい葉っぱ。しかし一枚一枚が周辺部に至ってもきちんと解像し、存在を主張しています。また、細い枝や葉っぱのフチにいくら目を凝らしてみても、思わず舌打ちをしてしまうパープルフリンジは見当たりません。この開放F値とサイズ感はトレードオフの関係にあるわけですが、沈胴という奥の手で全長を稼ぎ、無理をせずにバランスよくまとめている。とてもよく練られた、優秀なレンズだと思います。

SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/80, F5.6, ISO 100, Photo by NB

ピントが合った部分の質感。指で触れるとどんな感触がするのか、完全にわかりますね。「想像できる」を通り越して「わかる」。そんな写り。直射日光下での撮影ですが、発色も良好です。さらに背後の葉っぱのボケ。これはテレ端ですが、まったくクセのない、自然なボケが見て取れます。

SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/60, F5.6, ISO 2500, Photo by NB

こちらはもっと奥行きのあるボケ。そもそも大きなボケを期待するのはナンセンスですが、こちらもまったくクセのない、自然な、とても美しいボケです。完全にとろけるのではなく、喩えるならトーストの上に乗せたバターの塊が、カタチを残したまま半分だけ溶けてそこに佇んでいるような、そんなボケです。手前のカーテンにも注目。

SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/125, F5.6, ISO 100, Photo by NB

そこそこ距離をとっての撮影で、しかも向こうの壁との間隔が殆どないにもかかわらず、バイクが浮き出てくるような立体感が感じられます。そして2つ前のカットの鮮やかさとは打って変わって抑制が効いた発色に、「へえ、こんな写りもするんだ」としばし見入ってしまいました。ここはもちろん日本ですが、なんだかヨーロッパの匂いがしませんか。カブがベスパに見えてきませんか。渋い、オトナの写りです。

SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/800, F5.6, ISO 100, Photo by NB

こちらも渋い写り。さすがにヨーロッパの香りはしませんが、代わりに酸っぱい匂いが漂います。これも質感の再現に唸った1枚。色もひとつひとつ違います。指でつまんだ時のやわらかさ。さらには口に入れて果肉を齧った時の、ほっぺた筋(?)の収縮。きれいにしゃぶり尽くした種をプッと遠くへ飛ばした時の、やったった感。そこまで、このカットから伝わってきませんか。紛うことなきニッポンの正しい梅干しの姿を、甘美に、そして端正に捉えています。

SONY α7C II, FE 28-60mm F4-5.6, 1/60, F5.6, ISO 320, Photo by NB


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疲労回復にもよく効く。

大口径レンズは、そりゃいいですよ。圧倒的な写り。大きなボケ。「ええっ? お前、それ買ったんだ?」と言われる優越感。でもね、疲れちゃうんですよ。大口径レンズはたいてい大きくて重いので、肉体疲労的な意味での「疲れる」ももちろんあります。でもここで言っているのはそうじゃなくて、なんと言えばいいのか、常に気が抜けないというか、ある種の不自由さを感じてしまうというか、絆創膏を巻いた指がうまく曲がらないみたいな、そういう「疲れる」。

「標準ズーム」という言葉からまずイメージされる焦点距離は、24-70mmでしょうか。そこから上も下もほんの少しだけカットする。開放F値も無理をせず、「ボケが楽しめる」程度に抑える。そうすると、こんなに小さくて軽いレンズが出来上がる。さらには沈胴式にして撮影をする時だけ全長を確保すれば、光線を無理なく素直にセンサーへ導くことができる。小さくて、軽くて、写りが良い。さらに買い求めやすい。三拍子ならぬ四拍子も揃った、これはまったく自由なレンズだと、私はなぜかホッとしながら思ったのでした。

ソニーがα7C IIのキットレンズとしてこれをチョイスしたのは、実に思慮深い判断だと思います。レンズキットを買うのは、多くが初心者の方でしょう。人生最初のレンズが、これかもしれないのです。いやいや、初心者はこのぐらいでじゅうぶん、なんて言っているのではありません。「自分にもいい写真が撮れた」「写真って面白い」そういう経験が、特にスタートの時期にはどれだけ重要か。だからこそ、なんですね。

( 2023.10.18 )

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お買い求めやすいズームレンズですが、どこも手を抜いていない、とても良いレンズだと思いました。

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40.5mmって、ちょっと良くないですか。というのもこの径、戦前から使われている、由緒正しいフィルター径なのです。40mmではなく、41mmでもなく(どちらもフィルター径として存在しますが)、40.5mm。なんだかシビれます。んなこたぁどうでもいいですね。

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