PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

It's a α

「α」と「SONY」のマリアージュ、その歴史を紐解く。

SONYというメーカーは、なぜこうも少年の心を鷲づかみにするのでしょう。すでにオッサンになって久しいのですが、ここはあえて少年と記しましょう。そして女性のみなさんごめんなさい! つまるところ童心に返らされてしまう、そんな製品を繰り出すメーカーであると、かように申しておるのであります。しかしカメラの世界にどっぷり浸かってると、SONYがコニカミノルタからカメラ事業を引き継ぐと耳にした際には、正直なところ「ソニーがカメラあ??」とも思いました。このなんとも言い表しがたいアンビバレントな心境をわかってくれる人も多いのではないかと。そして初号機α100の登場から約12年・・SONYさん申し訳ございません。「α100」「α77」「α99」「α99 II」と一眼レフだけでも4台、「α7S」「α7R」「α7R II」「α7R III」とミラーレスシリーズも4台、気がつけばありとあらゆるモデルに手を出し、SONY製カメラは我が家の防湿庫内におけるトップコンテンダーを伺うまでに成長しております。そんなわけで、編集部きってのαユーザとなってしまったのであります。いったいなにがそんなに財布の紐を解いていったか、SONY αシリーズの歴史も一緒に紐解いてみるといたしましょう。

( Text : K )

な、なんてレンズを出してくれんの。
Sonnar T* 135mm F1.8 ZA 誕生。
しかたなくα100とセットでお買い上げ。
2006年

コニカミノルタからカメラ事業を引き継いだ際、なんだか妙に神妙にしてたんですSONYさん。口を開けば、やれ伝統がとかなんとか。全然SONYらしくないなあとちょっとがっかりしてました。しかし、しれっとこんなレンズが登場。135mmでF1.8ですよ? F2とかF2.8とかじゃなく、F1.8。もう寝ても覚めてもこのレンズが気になって仕方がない。当時はフルサイズのセンサーを搭載しているカメラ自体が全然珍しい時代で本来の画角で使えないのにも関わらず、どうやって手に入れるか、そのことばかり毎日考えていたのを鮮明に覚えています。そんなわけで、うなされつつα100とセットで購入。まだボディは1,000万画素程度でした。35mm換算で200mm超え。「長っ!」とブツクサいいながら街撮りなんかでよく遊びました。そうなんです、ボディには正直大して興味はなく、まずはレンズが欲しくてSONYのボディを手に入れることになったのでした。

SONY α100, SAL135F18Z Sonnar T* 135mm F1.8 ZA, 1/250, F2.2, ISO 100, Photo by K

SONY α100 & Sonnar T * 135mm F1.8ZAで撮影。
バイクに詳しい方なら時代を感じますよね。DUCATIのトップレンジとしては既に5代前のバイク。
APS-Cでの使用で画角が狭くて扱いづらいのですが、そのヌケ・キレにともかくニンマリ。ローパス有りの1,000万画素クラスだと、フィルムなどに比べるとどうしてもまだピントピークが曖昧にしか見えなかったのですが、それでもとにかくシャープで四六時中持ち歩いてました。なかなか奇特なユーザだったと思います。ちなみにこのレンズは今でも愛用しています!

底力を感じさせる、
フルサイズ・センサー搭載機「α900」登場
2008年

かのニコンも、2007年にようやくフルサイズ・センサー搭載機「Nikon D3」を登場させたばかり。そんななか、事業を継承してまもない2008年に早速フルサイズ・センサーを搭載したα900が登場。正直このタイミングでだせるのが凄いなと感心しました。エレキ部分をSONYが、カメラのメカ部分を旧コニカミノルタと、まだこの頃はセンサーメーカーとカメラメーカーが協業するかのように開発が進められていたのではないかと想像してしまいます。それほどに短い期間での登場であり、また会社が違えば、何もかもが違うわけです。文化も違えば仕事の進め方も違う。そう易々と・・思うものの、真相は当時の当事者の皆さんに伺ってみなければわかりません。それにしても天晴れ!な登場でした。これも想像に過ぎませんが、いちはやくフルサイズ・センサー搭載機をリリースすることで旧来のユーザを安心させたかったのもあるかもしれませんね。もちろん、将来へのアピールも。ちなみにα900はなぜか手が伸びませんでした。しかしAマウントのレンズ資産があれば、間違いなく買っていたと思います。

ほら、それっぽいのが出てきました。
NEXシリーズ登場!
2010年

2009年にはオリンパスから初のミラーレスカメラ「E-P1」が登場。間髪入れずに、NEXシリーズを投入してくるあたりが凄い! しかも実にデザインコンシャスで、SONYらしい製品。SONYにとっても初めてのミラーレスカメラとなるわけですが、デジタル一眼レフの技術的資産もおそらくかなり役立ったと想像されます。操作系も既存のカメラとは一線を画したもので実験的な要素も多分に感じられたカメラであり、飛びついて買ったのを覚えています。当然新マウントとなるため交換レンズが殆どなかったわけですが、このフランジバックの短さもあり、アダプター経由で他社の様々なレンズが使い放題。編集部でも小さなライカL/Mマウントのレンズを取り付けてみんな遊んでいました。アダプター経由でもシャッターが切れるようになっていたのは英断でありましょう。もしかしたら、そうせざるを得なかったのかもしれませんし、いろんなレンズで撮れた方が楽しいじゃん、なんてことを開発側の方でも考えていたのかもしれません。そうそう、NEXシリーズは最終的に「α」ブランドに統合されるわけですが、初代からαロゴが実は入っているんですね。

デジタル+一眼レフという“定型フォーマット”を見事に破壊。
ミラー固定、光学ファインダーを取っ払った、
「ソニーα77」ここに降臨。
2011年

プレスリリースを読んだときに、思わず笑っちゃいました。いやあ、実にソニーらしい。ミラーと光学ファインダーといえば一眼レフのアイデンティティそのものです。形こそ一眼レフのままですがまったく別物のカメラに。まずミラーをトランスルーセントテクノロジーで透過型とし、固定としてしまいました。そうなると常にセンサーへ光が届くわけで、センサーも「開けっ放し」。となると、ファインダーもセンサーから絵を送ってEVFにしちゃえばいいんじゃね? と、有機ELに置換。結果としてまず爆速カメラに。たしか秒間12コマあたりまでコマ速が上がりました。ミラーの振動もないわけでミラーブレから解放されます。さらにファインダーを覗けば「写る絵」をそのまま見ることができてしまうという。ボケ味や被写界深度をリアルタイムで写る絵そのものを見ることができてしまうのも画期的ですが、WBや露出も然り。いま振り返ってみるとα77は未だに一眼レフ形式のカメラとしては最も先進的であり、ミラーレス形式と一眼レフ形式のブリッジ的なカメラとも捉えることができます。そもそもデジタルカメラである以上、レンズを通りセンサーで受け止めた絵をダイレクトに見て撮影を行うことは、ある種本質的というかあるべき姿でしょう。「こうなったらいんじゃない?」「メリットはこう」「やれるんだったらやろう」と作ってしまうのがソニーがソニーたる所以。イッツァソニーであります。そして、Aマウントレンズ資産に対して、それを活かせる、時代に則したボディを投入しているわけですから、天晴れというほかありません。ハイ、もちろん購入しました。こんなイノベーター的存在の機材を前にすると財布も大開放、レジでドル箱山積み状態と相成ります。

もうホント勘弁してもらえませんか?
フルサイズセンサー搭載「α99」登場。
よろめきつつ、Aマウントレンズ資産を計上。
2012年

α77のフルサイズセンサー搭載バージョン、α99の登場です。α77まではボディを買うまででよかった。しかし、ソニーには厄介なレンズが存在するのです。そう、カール・ツァイスのレンズです。旧ミノルタ時代から魅力溢れるレンズラインアップではありましたが、AFでツァイスが使えるというのは常々魅力を感じていたのです。そしてα99なんて出てきた日にゃ・・遂に本格的にAマウントレンズの魔界へと旅立つことになりました。我々機材愛好家の間には「マウントを増やす」というフレーズが存在します。「やってはいけない」「なんと魅力的な」という相反する意味を持つ不思議なフレーズです。すでに築き上げた1つのレンズ資産に対し、またそれと同じく山を築こうという実に業の深い話で、興味のない人からすれば全く意味不明な行動であります。たとえば焦点距離が違うレンズを何本も揃える、これはまだ言い訳がたつ。しかしたとえば50mmレンズを何本も買う、これはもうまったく意味不明です。言い訳も「毎日同じパンツ履かんやろ」ぐらいしか思いつきません。話が猛烈に脱線して本題を忘れてしまいましたが、魅力的なレンズラインアップに革新的なボディが加わると、他でシステムを構築していたとしても、それを揃えようという気にさせられるのをまざまざと実感させられました。革新的ですよ、レンズが充実してその選択肢が多く、なにより撮影のハードルを格段に下げてくれるボディなのですから。

SONY α7S, SEL55F18Z Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA, 1/50, F1.8, ISO 100, Photo by K

α99+ 24-70mm F2.8 ZA SSMで撮影。たとえば後処理でWBを変えるのと、現場で意図するWBで撮影するのは違いが出てきます。露出も同様で、意図する露出を見て撮影する。もっとも如実に違いが表れるのはフレーム(縦横比)です。あとからトリミングを行うのと、それを見て撮影するのではまったく違います。フィルム時代に脳内ですべて行っていたことですが、現場で仕上がりを見ながら撮影できるのなら、それに越したことはないですよね、デジタルカメラですから。このカットはモロッコで撮影したものですが、現場でもの凄く楽しかったのを覚えています。ファインダー上で仕上がりをダイレクトに見ながらの撮影ですから、自分が持つイメージとの対比もリアルタイムであり、撮影もノリやすいのです。いまでこそミラーレスカメラの台頭にくわえてそのシステム的な充実から当たり前になりつつありますが、お気に入りの1本を選べるラインアップ、そしてデジタルの申し子のようなカメラでの撮影は本当に楽しかった!

あきれて物も言えない
超コンパクト・フルサイズセンサー搭載、ミラーレス機
「ソニーα7」誕生
2013年

記憶に新しい「α7」の登場。ちょっとここでRX1についても触れておきましょう。α7登場の約1年前、フォトキナの会場でクリアケースの中に鎮座していたのがRX1です。35mmレンズを固定式とし、なんとフルサイズセンサーを搭載してきました。超絶に小さなボディを見た際に「ほんとにちゃんと写るの??」「バッテリーは持つの?」と思ったのをよく覚えています。レンズのテレセン性の確保や電力のマネジメントにまだ不安を感じるような頃でした。実際に購入して使ってみると、バッテリーの持ちはさすがに今ひとつでしたが、呆れるほどによく写るのです。センサーを自前で作り、そもそもがイノベーションを長年生み出し続けてきたエレキ屋。ソニーという会社の凄さをまざまざと感じさせられました。そんなわけで、α7のようなカメラはそう遠くないうちに出るだろうとは思っていました。しかし、それもあっという間に出てきて呆れると言うほかありません。また1からレンズシステムを構築しなければならないのはもちろん、いわゆるデジタル一眼レフシステムを抱えているわけで、自らそれに匕首を突きつけるようなものです。しかし結果的にそれをサラっとやってしまうあたりがソニーらしい。ちなみにα7は購入に至りませんでした。理由はカンタン、マウントアダプタ−経由で遊べるものの、α7には純正レンズが欲しい! つまり、システムとしての成熟を見守りたいといったところでした。ところがですね、、同時に発売されたα7Rについてはやらかしてしまいました。だって、超高画素にローパスレスのセンサーなんですもの。いい大人が「だって」って。

ほんっと勘弁してください。
画素数を絞って高感度特性を向上、高ダイナミックレンジ。
「ソニーα7S」誕生
2014年

ニコンのD3も似たような性質のボディでしたが、標準モデル・高画素モデルを出した上で、α7Sです。個人的にはこのα7Sが一番グサっときました。そもそも写真というものは、目で見たほどに階調の幅を捉えられません。そこにチャレンジしようというのは素晴らしいの一言。画素数的には1200万画素程度なので、高ダイナミックレンジという特性が画素数を超えてどれだけ感性に訴えてくるか楽しみで仕方ありませんでした。即予約後、嬉々として街に繰り出しました。後に懇切丁寧なアップデートを施したII型が登場しますが、未だにこの機種がメインとなっています。そうそう、どうしてもスチル面ばかりに目が行くのですが、4Kを実現した機種でもあります。

SONY α99, Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM SAL2470Z, 1/5000, F2.8, ISO 100, Photo by K

なんとも分厚いトーンが特長のα7S。かなり開けた露出なのですが、ハイライト・ハイエストライトの連なりがとても綺麗なカメラです。当然ローキー側に振ってもシャドーから絵が立体的に立ち上がる雰囲気はこのカメラならでは。1,200万画素なのでデータが軽いのも魅力的。元々高感度に強いカメラなので、初期型もおすすめ。お安く併売中です。

ほんとに出すの??
出てくる以上は全方位に渡ってのアップデート
「ソニーα99II」登場
2016年

Aマウントレンズをしこたま抱えてしまったユーザである拙者も、正直なところα7シリーズの隆盛とシステムの充実を見ると、さすがにAマウント機はもう出ないかなと想像していました。突っ走るだけではなく、全方位に対してやれることをやる。凄いなあと思わされた機種です。4千万画素超えに、現時点で盛り込めるものは全て盛り込み、画素数を考えれば驚くべきスピードを身に纏った機種です。α99でそれなりに満足していたため、発売から少し経ってから購入。もちろん、Aマウントレンズを多数抱えるが故ですが、もうひとつ理由があります。この高画素センサーは名センサーと呼ぶに相応しいと感じるからです。Aマウントレンズを使い、このセンサーで撮りたい! そうして購入に至りました。センサーの話についてはまた他のページにて。

あらたにトライすることで、背負った弱点をすべて払拭。
システム全体の充実もそこに伴い、
かくして「ソニーα9」ここに戴冠。
2017年

コンパクトデジタルカメラのように、センサーを開けっ放しで、電力や発熱の問題が発生し、レンズラインアップにおいてすべてを一気に整えることを迫られ、ボディのスピード、ファインダーのクオリティ、、同じカメラでも枠が違えば、すべてを1から作り込む必要がありました。一眼レフ形式に比べれば、どうしても劣る部分が多々あったのですが、それを見事に払拭するどころか凌駕する面も備えて「α9」は登場しました。動体が歪むなどの欠点を克服しつつ、ファインダーがブラックアウトしないなど、ともかく驚きの1台です。α9の登場で、Eマウント機のシステムはここに一定完成を見たといってよいでしょう。

それは、ソニーというメーカーを象徴するブランドに。

あらためて事業継承からこれまでを振り返ってみて感じるのは、2つ。1つは、やはりイノベーターと呼ぶに相応しいメーカーであるということ。レガシーがあり、ややもすると身動きがしづらそうなシーンでも、時にはその枠組みに合わせつつも新たな基軸を生み出し、時には大胆に新しい形を定義する。そしてただいたずらに突っ走るだけではなく、全方位に対して全力を尽くす。字面にするとなんだか陳腐ですが、実行するとなると企業としての断固たる決意と体力が問われることです。これだけでも賞賛に値すると言えますが、なによりカメラというものに真っ直ぐで、いまココよりも、もう一歩。そうやって撮り手の領域を、たゆまぬ技術革新を積み重ね、確実に拡げてきたことに敬意を感じます。小難しい言い回しは置いといて、とにかく「欲しくなる物」を作るメーカー。それがソニーだと思います。しかし、ここではAとEだけで話をしていますが、他にも多数リリースしたカメラがあるわけです。いったいなんという馬力でしょう。

そうそう、カメラとレンズの話に終始しましたが、ソニーについて感心させられたことをもうひとつ。いつ、どの機種であったかは失念しましたが、被写体となる顔を覚えてそれをずっと追い続ける、運動会などでうってつけのAF。あれには本当に感動させられました。どちらかといえば、そんな機能を実装する現場を思い浮かべて感動したのです。ひとりの写真好きとして、もうひとつ。やはりセンサーを作っているメーカーということもあり、画には一家言あると感じます。黎明期のコンパクトデジタルの頃は「画がカラフルすぎだな」と感じていたのですが。またデバイスの使いこなしについては感心させられます(たとえば液晶表示の美しさなど)。

次、なにやるんだろう?

ソニーは、「カメラの世界でも」そんな期待されるメーカーであると感じます。それがここに至る足跡なのではないでしょうか。

ソニー特集 - トップへ

( 2018.04.27 )