PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

先代は1992年発売の名玉「smc PENTAX-FA★85mmF1.4ED[IF]」。詳細は先輩諸氏にお譲りしますが、端的に申し上げれば、単なる旧型ではなく85mm界のレジェンドです。しかし、カメラがデジタルに移行する中、2004年に惜しまれつつ生産終了。以来、85mm F1.4のポジションは空席のままとなっていました。その大きな穴がついに埋まるのですから、感無量であります。

同社ウェブサイトにてMTF曲線を見てみたのですが、思わず目を見開いてしまいました。開放でも60%以下のエリアが不要なほどで、F4にまで絞れば80%より上方でほぼ直線化していまして、描写性能を最優先させた中望遠レンズとして送り込んできたことは明白です。ご想像のとおり、開発陣が意識したのは先代。光学系を変えず、AFやコーティングをアップデートするだけでもユーザーを納得させられたはずですが、時代に即した収差補正力の向上等も加味して、一からやり直したとのこと。10群12枚からなるレンズ構成はこの焦点距離では珍しい負レンズ先行型となっていますが、前玉が引っ込んでいるのはレンズ人類共通のロマンです。後群のマスターレンズは8枚構成の変形ガウスタイプで先代から継承した部分も多いように見受けられますが、前群に4枚からなる大型の補正レンズ群を擁しているのが特徴的で、諸収差を徹底的に潰していく現代的なアプローチが見て取れます。フード込みで1355gというウルトラヘビー級の重量も、写りを最優先したことはもちろん、マスターレンズ全体を駆動させる強力な駆動系を担保した結果でもありましょう。開放から目の醒めるような現代的性能が期待されますが、やはりボケをどう味付けしているのかが見どころであり、色収差の補正や点光源の形、AFの動きなどにも注目です。早速ご覧頂きましょう。

( Photography : Z II / Text : TAK )

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

AFの動きを見るために、走り寄ってくる馬を狙ってみました。距離は30〜40m。設定はAF-Sのままとっさに構えて撮影した一枚ですが見事にピントが来ています。半段だけ絞りましたが、この距離でも馬の毛並みや肌の調子がつぶさに見て取れます。前景背景のボケもお行儀の良い自然なボケ方で、見事に分離された被写体が浮き上がっています。あいにくの空模様でしたが、コクのある発色とコントラストで現場の湿度が伝わってくるようです。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

では開放でグッと寄ってボケを見てみましょう。これは、、、素晴らしい味わいです。下町の雑多な背景は美しく洗い流され、傘の小間のボケ方さえ魅惑的です。アウトフォーカスとなった傘の中棒の輪郭あたりに僅かなフリンジが認められますが、デジタル処理無しでこのレベルですよ。雨で光る路面のハイライトの塩梅も絶妙。被写体の描き方にもリアリティが漂い、肌や制服の白の再現もお見事です。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

近景の範囲でのボケも前後ともに癖がなく、見せたいものをより引き立たせてくれます。ズームレンズには出来ない芸当ですよね。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

「とろけるような」とは、まさにこういうボケのことを言うのではないでしょうか。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

梅雨の時期、植え込みの新芽も伸び盛りです。AFが迷いそうなシーンですが、何の問題もなく合わせたい所にスッと合ってくれました。


PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

輝度差が大きく軸上色収差が出やすいシーンにもかかわらず、ピント面では全く認められません。非常に線の細い描写で、葉の葉脈や表面の艶感も克明に表現してくれました。歪曲収差も見事に抑えられ直線が直線として描かれていますし、隅々までピントが来ています。像面湾曲のコントロールが効いているのでしょう。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

硬質な被写体を狙ってみました。細いスポークの錆や汚れや重なり合う部分など、質感や立体感も抜かり無く再現。床面には細かな凹凸があるのですが、ボケ方に全く嫌味がありません。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

何の変哲もない踊り場ですが、思いの外、雰囲気のある写真になってくれました。直線のボケ方もこれまたスムーズです。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

陽が落ちたシーンもF1.4の出番です。アンダー気味にして色気ある造形を強調してみましたが、まさに狙い通り。マットなボディの質感やグラデーションの表現が何とも上質で、艶めかしい曲線もあるがままに描いてくれました。


PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

最短撮影距離は85cmと長めですが、この程度までは寄れます。本来料理を撮る際は少し絞って撮ることが多いのですが、サラダをフワッと見せるため絞り開放で撮りました。他のカットもそうなのですが、周辺光量の落ちはほとんど認められません。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II

真下に落ちる影が夏らしい景色です。傘のハイライトや影のエッジのキレも、ギラッとした日差しをリアルに感じさせてくれます。85mm F1.4というレンズは中景で浮き上がらせても面白いのですよね。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW, F1.4, Photo by Z II


PHOTO YODOBASHI

PHOTO YODOBASHIフードは100gもある立派なものが付属。先端は厚みたっぷりの保護ラバーでしっかりと覆われています。これなら縦向きに置いても傷の心配もありませんし、レンズ交換もスムーズに出来ますよ。

新時代のスターレンズを象徴する、中望遠の大本命。

写りは85mmの頂点と言っても過言ではないでしょう。カテゴリーでは最後発となることもあり、ペンタックスは一気にトップを取りに来たのではとも推察されます。先代の素性の良さを受け継ぎつつ様々なブラッシュアップを図り、結果として自然さが際立つ上質な絵作りを得た、というのが全体の印象です。例えばピント面。極めてシャープでしっかりと解像しています。が、それは自然さを伴ったシャープさであり、見ていて飽きることがありません。肉眼で見る時、対象物の表面や輪郭のシャープさを意識しているわけではありませんよね。つまり、肉眼で焦点を合わせた時の自然な見え方を再現してくれる、そういうシャープさを感じるのです。また、85mm F1.4のキモであるボケ味がこれまた極上。フォーカスピークからストンと落ちると言うよりは、透明感を漂わせつつ量感もあり、心地良くまとわりつくようなボケを味わうことが出来ます。また、距離を問わず前景背景ともに癖のないボケ方をしてくれるので、被写体が夢の世界にいるような美しい画が労せずして得られます。諸収差は高度に抑制され、像面湾曲も認められず平面であっても中央から隅までしっかりピントが来ます。ヌケ、コントラスト、トーン再現性にも非の打ち所がなく、どんな条件でも最良の結果をもたらしてくれる絶対的存在です。先代を知っているユーザーもきっと納得していただけるかと思います。

確かに、街で振り回すにはそれなりの決心が要るサイズかもしれません。しかし全ては写りのためであり、AFもこれまた秀逸で薄いピントを自在に操ることが出来ます。確実に結果を残せる信頼性は、何物にも代えがたいですよね。悪条件や腕不足さえも帳消しにしてくれるような、神通力を持ったスターレンズの中望遠。ポートレートに風景にスナップに、いや、何を撮っても幸せになれる1本です。既に後光が差していますが、新たなレジェンドとなることは必定。躊躇する理由はありませんね。

( 2020.06.26 )

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