PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Panasonic LUMIX S 50mm F1.8
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
今回レビューをお届けするのはパナソニックの「LUMIX S 50mm F1.8」です。50mmといえばご存知の通りスタンダード中のスタンダード。一歩引いて広角的な捉え方も、ぐっと寄って中望遠的な捉え方もでき、日常的な場面はもちろん、ちょっとしたお出かけもこの1本で困ることはまずないと思われます。おまけにF1.8は、明るいながらもほどほどのサイズに収まっていることが多く可搬性に優れています。携帯しやすいサイズや軽さというのは、なにものにも変え難い強みです。しかも、大きなボケを得ながら超大口径クラスほどのシビアさは求められませんから、カジュアルに扱える一面も持ち合わせています。また、かしこまりすぎず、画にさりげなさをもたらしながら良い塩梅にフレームに収まることが多いのも50mmF1.8の魅力。ライブ感の演出に長けていると感じるので、何気ない日常を記録するにはまさしくうってつけと言えそうです。日々量産されていく写真を良い画質で残していきたいと思われるのでしたら、まず選択肢に入れていただきたい1本です。とはいえどんな描写なのかは気になるところですよね。早速見ていきましょう。
( Photography & Text : TA )
この日、雲は低く垂れ込みフラットな光という条件。さほど期待せずにシャッターを切っていたのですが、思いがけずいい塩梅に仕上がっているではないですか。これはかなり良いレンズでは？と直感しました。こんがりと焼けたパンやローズマリー、添えられた手拭いなど、それぞれの質感や色が丹念に描かれています。
わあっと客席が湧いた瞬間ですが、なんだか歓声が聞こえてきそうな瑞々しい写りではありませんか。リアリティはもちろん、その時間の前後までをも想起させます。ここぞと思った瞬間を逃さないAF性能も素晴らしく、実に頼もしいものです。
線はキリッとシャープ、けれども太くはなく繊細です。きちんと写ってその場の雰囲気までもが表現されています。手を変え品を変えとせずとも、呼吸をするかのようにただただシャッターを切っていくだけで、ちょっと良い感じの写真に仕立ててくれるから面白いものです。
被写体に忠実ながら、あくまでニュートラルな色再現性で撮影者の意向に寄り添うような順応性の高さがあります。ミックス光という環境下であっても、色がまとまらなくて困ることはないでしょう。前ボケにちょっとややこしいモノを持ってきましたが、それを味付けにしうるボケの美しさ。しかも画にどことなく艶っぽさが伴うのものですから、どんなものにもレンズを向けたくなります。
フラットな光の中、かなりアンダー目に振ってみました。僅かな光の量の違いを描き分けるので花が浮かび上がってくるような演出も手軽です。
今度は輝度差のあるシチュエーションで飛ばし気味にしての撮影。中間からハイライト側の階調もかなり豊か。スコーンと飛んでしまうようなことはなく、白背景を美しいグラデーションで描いています。底知れぬポテンシャルを感じ興趣が尽きません。
トーンに厚みを感じますし、滲むようなボケの描写に品を感じます。ガラス越しではありますがピント面も十分シャープ。雑味を全く感じないわけではなく、ほんの隠し味程度残されているように思います。サラっと流れるわけでもなく、かといって重すぎることもないバランス。それがこの垂涎の写りにつながっているのでしょう。
硬質なものの再現も見事としか言いようがありません。しっかりとした線を描きながら硬すぎる印象を持ちません。何のためらいもなく心にすっと入ってくるような写りです。
シャドーエリアからハイライトエリアまで丁寧な描き込みで、それぞれまでの距離がよくわかります。結果として画が立体的。F1.4くらいのレンズをマウントさせているような感覚になるのですが、それくらい、もしかしたらそれ以上の写りをもたらします。これは欲しくなってしまう、魔レンズの写りですね。
サイズと軽さ、写り、全てが心地良い
ファインダーを覗いている時点で良いなという実感はありましたが、手始めに撮ったカットを背面モニターで確認すると期待以上の写り。これは楽しそうと感じたのが最初の印象です。その印象は覆されるどころか、魅了されるばかりでした。前後のボケの質、解像感はいずれも心地よいバランスでまとめられていて、しかも色やトーン、コントラストの再現性においては極上の部類と言ってしまってもいいでしょう。これら全てのバランスが、しっかりとした線を描きながら色気を伴うような垂涎の写りを生み出しているのだと感じます。優秀なレンズが多くなりつつある昨今ですが、ため息が出てしまう写り、心地よい写りというのは本当に久しぶりです。 レンズを向けるだけでちょっと良い感じの写真に仕立ててくれるのですから。軽くてコンパクトですから持ち歩きも楽ちんです。それだけではありません、瞬間を捉える心強い助っ人となってくれるAFも備わっています。用途で使い分ける50mmは何本あっても困りません。こんな表現力が豊かなレンズで日常を捉えることができたらどんなに楽しいでしょう。この写りでこのお値段ですから、もはや買わない理由はありませんね。
( 2023.08.31 )
この描写でこの価格。もはやバーゲンプライスの極み。私事ながら、飛びつくように購入してしまいました。なにせこの写りですから。あくまでも決め手は価格ではありません（笑）。
Lマウントボディをまだお持ちでない方は、こちらのブラック仕様のS5IIXはいかがですか。こちらのレビューでご紹介した50mmレンズが付いてくるキットがお勧めです。有効画素数は2420万画素。日頃、私も使用していますが、トーンの再現性や色再現性共にとても満足していいます。