Panasonic LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

パナソニックのS PROシリーズ「LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.」をご紹介します。パナソニックのフルサイズ用レンズはSレンズとS PROレンズの2ラインで展開されています。本レンズはS PROレンズにあたり、ライカの厳しい品質基準をクリアした望遠ズームレンズ。全長は約179mmで最大径は84.4mm。付属する三脚座を外しての運用であれば約985gと、それなりのサイズ感ではありますが、このサイズ感こそがさまざまな面において妥協のないプロダクトであることを想起させるというもの。高い描写性能は勿論のこと、確実な結果に繋がってゆく信頼性、確かな手応え、タフな環境下に持ち出せる堅牢性など、おそらく申し分のない1本と思われます。では取り回しや使い勝手においてはどうなのか。本レンズは鏡胴が伸びないインナーフォーカスを採用しており、テレコンバーターの装着で最大400mmまでものリーチが可能。取り回しも良さそうですし、さらなる撮影領域にも踏み込んでいけそうですね。

70-200mmはポートレート撮影に適している焦点距離が詰まったズームレンズとも言えます。ひとくちに人物撮影といっても、「さまざまな場面で重宝する」という枕詞をつけると本レンズのようなズームレンズが候補にあがってくるのではないでしょうか。身動きの取れないシチュエーションにおいても、瞬時に引き寄せたり、広く写し込んだりと制約がありません。AFの確度やスピード、手ブレ補正の効果、手馴染みの良さなども気になるところです。では見てまいりましょう。

( Photography & Text : TA )

先ずはと、人物撮影をしようとお祭りに持ち出してみました。オートフォーカスはAF-Cに設定していたのですが、これが秀逸でした。いくつもの神輿が一堂に会し、見物客で道が埋めつくされているような賑やか、かつ忙しない状況でしたが、見ている部分に瞬時にフォーカスされ、画角の自由度も相まって面白いように画が決まります。この雑踏の中、見せたい部分が浮き上がってくるような写り。良いですね。

躍動感まで写し込めないかとグッと被写体に迫ってみました。表情だけでなく滲む汗がその時の情景を伝えてきます。

神輿がすれ違う瞬間。手前の神輿の隙間から奥の神輿の担ぎ手の様子を捉えてみました。美しい前ボケがなければ、またAFの確実性や取り回しの良さがなければ、こうは狙わなかったでしょう。

両腕を高く持ち上げて、バリアングルモニターで構図を確認しながら撮影した一枚です。ボディ内手ブレ補正に加えてレンズ内手ブレ補正をリアルタイムで連動させる手ブレ補正効果（6.5段分）は抜群で、不安定なホールディングもなんのその。

ボケの形状は四隅まで丸く、柔らか。主張することなく、主役（見せたいもの）を引き立たせるための名脇役に徹する印象です。

---

軽装でフィールドに持ち出してみました。初っ端からアウトフォーカスにややこしい題材を盛り込んでみましたが全く嫌な雰囲気になりません。手前がざわついてもおかしくありませんが、たいしたものです。輝度差のある条件でコントラストもつきますが良くまとまります。

最短撮影はおおよそ90cm、最大撮影倍率は0.25倍。葉の表面の凹凸、湿り気を帯びたところとそうでないところ、写り込んでいるものそれぞれの様相がしっかりと描き分けられています。全長が伸び縮みしないインナーフォーカスはこのような状況下で特に真価を発揮します。それにしても撮影距離を問わずキレの良いレンズですね。かなり気を使った設計のようで、必然的にボケも美しくなるのでしょう。

もくもくとした雲の描きかたひとつとっても、極めて緻密に、また滑らかに描いてくれます。それぞれの距離が離れているものをひとつのフレームに収めた時の圧縮効果もなかなかなものです。

こちらは116mm。クリックでワイド端70mm、テレ端200mmと画像が切り替わります。いずれのカットも同じ場所からF8まで絞って撮影しています。開放から周辺減光もほとんど見られません（ボディ側の補正はオフ）。絞り込んでも線は太くならず緻密な描写で、写りの傾向は変わりません。200mmともなると、人が踏み込めない領域をここまで手繰り寄せることができます。

握手してもらいたくなるような手。もう添える言葉は必要ないでしょう。可愛げがないほど写りますし、そしてまた、どんな条件を突きつけてもボケが美しい。確かな写りをするレンズです。

強烈な煌めきをフレーム内に配置していますが、このような条件でも雑味がなくクリアな写り。フォーカスした人物やボートの輪郭に曖昧さもありません。静かな湖なのですが、緻密な描き込みにより水面の僅かなうねりを感じとることができますし、奥行きも感じられます。

---

確かな写り、確かな手応え。

解像感や画の厚みのようなものは画素数に拠るところも多いのですが、今回マウントしたボディは約2400万画素のカメラ。それでこの写りです。レンズのポテンシャル以外のなにものでもありません。キレがあり、こっくりとした写りで何よりボケが綺麗。どんな条件を突きつけても、ですから本当にたいしたものです。焦点距離域で、またF値に関わらず描写のトーンが統一されているのも撮り手にとっては有難い話です。AFの確実性や俊敏性、取り回しの良さについても触れてきましたが、良くまとまっている1本です。と申してしまいますと、なんだか面白味に欠けると思われてしまいそうなのですが、こういうレンズこそ限界値がありません。再現幅は無限大と言えるでしょう。どんな状況でも、きちんとした結果に繋がります。F4通しとなると、いわゆる大三元レンズの影に隠れてしまいがちかもしれませんが、「このF4通しで良いか。」といった消極的な選択ではなく、「このレンズが良い！！」と言える、そんなレンズだと真に思います。また別売りのテレコンバーターが装着可能なのですが、こういった確かな写りをするレンズにこそ付けたいですよね。インナーズームで重心バランスに優れ、取り回しも良く、耐候性もあります。即座にAF/MFの切り替えができるクラッチ機構も搭載しており、まさしくその名の通りプロ仕様です。70-200mmあたりのズームレンズをお探しでしたら、間違いのない選択となる1本だと思います。

( 2023.11.01 )