OLYMPUS OM-D E-M1X / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2

2019年2月に発売されました、オリンパスの最新フラッグシップモデル「OM-D E-M1X」の実写レビュー第二弾をお届けします。縦位置グリップの一体化により、従来のフラッグシップモデルである「OM-D E-M1 Mark II」と比べ、ボディサイズは非常に大型となりました。センサーや画素数、コマ速など基本性能は同一ながらも、さらなる強化も図られています。画像処理エンジン「TruePic VIII」が2基体制に、低輝度下でのAF測距性能の向上、EVFの倍率向上、ハイスピード動画の対応、レンズと組み合わせて最高7段相当にもなるボディ内手ぶれ補正、気圧計・コンパス・温度計の搭載、2連装のSDカードスロットはUHS-IIに対応に、USB PDに対応したボディ充電やBluetooth搭載など、より幅広い環境で快適に使用できるよう、単なる機能アップではないカメラ全体の利便性向上と信頼性向上が図られたという印象です。

今回大型化されたボディにより、グリップが大きくなり形状も最適化。これまで以上にしっかりとカメラをホールディングできるようになりました。また縦位置グリップが一体化されたことにより、システム全体での防塵防滴性能も向上したことでしょう。加えて従来と同じ大型バッテリーを2個搭載できるようになり、電源の安定化と撮影枚数の大幅アップも実現。過酷な環境での信頼性の向上は、もはや他の追随を許さないレベルに到達しました。これらは、日常使用に近い状況ではオーバースペックとも言える強化策ではありますが、やはり絶大な信頼のおけるボディというのはどんな時でも使って気持ちいいものです。ボディサイズは従来機に比べるとかなり大きいのは確かですが、例えば35mmフルサイズフォーマットの上級機と比べればほぼ同等レベルに収まっており、今回使用したPROシリーズの高倍率ズームレンズや、大口径望遠レンズをマウントした時でもコンパクトなシステムサイズによる優位性はまだまだ十分にあると思います。それでは実写レビューをご覧ください。

( Photography & Text : T.T & Naz )

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気持ちいいカメラであると言うこと。

最初にOM-D E−M1Xのボディを手にした時には「これがマイクロフォーサーズ機か」とその大きさに驚きを隠せないものがありました。一方で従来のO-MD E-M1 Mark IIにPROシリーズのレンズをマウントした際のレンズヘビーに感じる重量バランスは解消されていて、握りの大きなグリップと合わせ、ホールディングした際のバランスのよさと手のひらに感じる高い剛性感が実に気持ちのよいものでした。そしてボディの電源を入れ、数枚撮影して感じたのが動作のキレの良さ。それも単に騒がしいほど動作が高速というのではなく、しっかりと制御と抑制を感じるチューニングが施されている印象です。この「これぞフラッグシップモデルだな」と強く納得させる存在感こそが最大の進化のポイントではないでしょうか。撮影者のテンションを高めてくれる機材であることは間違いないでしょう。

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猛烈スピード対応機

今や35mm判フルサイズミラーレス機が各社勢揃いする中、マイクロフォーサーズセンサーならではの答えをOM-D E-M1Xは持っていると感じました。高機能はもちろん、防塵防滴、縦位置・横位置とホールド性の高いグリップなど、あらゆる面からプロユースのスペックながらも、小型ボディに収められた圧倒的な機動力。これは正にマイクロフォーサーズのフォーマットだから出来る技ではないでしょうか。

早速いろいろ試してみました。先ず、AFキラーと言われる、爆速の我が愛犬にチャレンジしました。多彩なAFモードのカスタマイズが可能なOM-D E-M1Xですが、「インテリジェント被写体認識AF」にて撮影しました。高速で向かって来る被写体に、迷うことなく瞬間で合焦します。横に移動する被写体には追尾機能など有効ですね。また、最高7.5段という脅威の手振れ補正も試すべく滝の撮影に手持ちで挑みました。シャッタースピードは1/3秒。きれいに水が流れてくれます。これは強力です。描写性能も高く、風景から日常シーンまで幅広く使っていけそうです。

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より広いフィールドへ

ミラーレスカメラとしては早い段階で高い完成度を誇っていたOM-D E-M1シリーズ。それを大きく変えるのではなく、新しいOM-D E-M1Xでは熟成を重ねつつも、信頼性の向上に重きを置いたアップデートが行われたように感じます。この信頼性の向上というものは、多くの場合わかりにくいものですよね。しかしこのカメラでは違います。これまで積み重ねてきたOM-D E-M1シリーズへの高い信頼が非常にわかりやすいかたちで大幅に向上しているのです。その肝がボディの大型化といえるのではないでしょうか。

いまのデジタルカメラの世界には、このカメラより画素数においてもセンサーサイズにおいてもより高いスペックのものが多数存在します。でも、大事なのは適材適所。プロが求めているのは過剰なスペックではなく、必要にして十分なスペックと厚い信頼性。コンパクトなマイクロフォーサーズのセンサーでも、2037万画素にもなる緻密で精細な描写は、必要にして十分なダイナミックレンジを持ち、画にしっかりとした厚みを感じさせてくれます。実際に撮影してみると、ほとんどの用途で不足を感じることはないでしょう。高価なカメラであることは間違いありませんが、一方で厳しい業務にも耐えうる、最高レベルの信頼性を持ったプロフェッショナルなモデルだとすれば大変リーズナブルだともいえます。O-MD E-M1XとOM-D E-M1 Mark IIのどちらか一方ではなく、やはり適材適所。両方を上手に使い分けてこそ活きるOM-Dシリーズのラインナップだと感じた次第です。

( 2019.06.07 )