PHOTO YODOBASHI

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Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

Nikon NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

人によって“標準レンズ”とはそれぞれなのですが、35mmの登場はかなりの皆さんが待ち望んでいた一本ではないでしょうか。Nikon Z特集の際に記事として取り上げたのですが、本家「SHOOTING REPORT」が今頃の掲載となり申し訳ございません。ようやくのレポートです。私にとっての標準レンズはわかりやすい話で恐縮ですが50mm。35mmとなると若干構えてしまいます。こんな仕事をしていても、単なる一介のカメラ好き。Z 7ユーザーであってもZ用35mmについて好みの焦点距離の関係からさほど予備知識がなかったのです。カタログを見ると本当に贅の限りを尽くしたレンズなのですね。EDレンズ2枚に、非球面レンズ3枚。そして実勢価格を見てさらにびっくり。他の編集員から「いいよ〜」と手渡され、ミラーが無くなりレンズ設計の制約が一段階取り払われた中で、Nikonがどんなものをこのレンズに注ぎ込んできたのか楽しみに持ち出してみました。作例と共にご紹介したいと思います。

( Photography & Text : K )

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

よく写るなんてのは飽きてます、それを超えた何かがこのレンズにはある

鉄信仰・・・最近鉄らしいカメラが減りましたが、基本的にカメラが好きな人はクロモリの自転車が好きだったり、バイクであるならば鉄の塊であるハーレーが好きだったり(当社比)、というか当編集部比ですね(笑)。いえ、何が申し上げたいかといえば、鉄に冒された私はどうしてもクルマやバイクを撮ってしまいます。そしていかに鉄が鉄らしく写るか。しかも鉄信仰の私を震わせる写りで魅せてくれるのか。まったくもって単なる性癖としか言いようがありません。仕事柄本当にいろんなレンズを使ってきました。それはカートボタンを押してはクリアボタンを押し、そうやってうなされつつ買ってきたものもあれば、仕事でためし使いをしたり。その中でも何本かの中に入る写りです。他の例に漏れず、開放から驚くような描写なのですが、それだけではありません。なにか息を飲む写りです。

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

好みの面で言うとかんたんなのです。この目を見張るキレがありつつ、周辺はなかなか好みの落ち方をします。とはいえ、結像する力そのものが落ちるのではなく、単に明るいレンズらしく光量が落ちるということです。これはいいなあ。困る人もいるかもしれませんが、周辺の光量は絞り込むという解決策がありますね。そんなことはともかくこんな鉄モノを撮る際、光線状態がナーバスな環境でクロームメッキのようなレンズには厳しいものが画面内に入るとき、色に絡む収差はちょっとガッカリさせられることがあります。もちろんイマドキらしい実に優秀な写りだなあと思うのですが、描写全体を見るとなんだか少しにやけるのです。

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

ボケ味を見てみると、にやける理由がわかりました。サラッと抜けていくようなボケ味ではなく、どこかクラシカルな雰囲気を纏います。量感があって、クラシカルと言えばややこしいボケ味ですが、そのキワのラインでまとめて雰囲気を醸しつつ、しかもボケのエッジはきっちりと丸められています。上の一連の作例を含めて描写傾向をしげしげと観察するに、これはなかなか「お好きな人」が開発してませんかねえ。この時代に求められる要件はきっちりクリアしつつ、写真を撮る現場、手にする人たち、そんなシーンが見えてるな、そんな印象です。これは個人的に嬉しい。

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

もういくつかボケ味とピントピーク、ここに焦点を当てて見てみましょう。開放で人の手にリアリティを感じさせる描写、試し撮りの永遠のテーマの一つです。ホイールナットを回すレンチの前ボケを見ると、ちょっと水面なんかも試してみたくなります。

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

伝わるのか・・と思うのですが、この「ヌト」っとしたボケ味。好みもあるかと思いますが、何気に構えて、何気に撮って、画面再生して「いいなあこのレンズ」と次を撮ってみたい衝動に駆られるのは、こんな描写傾向のレンズだと個人的には思います。

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

開放で撮って美味しい距離がありまして、被写体の大きさとフォーカスピークの置き所にもよりますが距離にして60〜70cmくらいでしょうか。こんなシーンで実に立体的に捉えてくれます。また、絞って描写傾向が変わるということもないのです。曇り空の日で、少し空気が地面近くに滞留してるような空気感の一日でしたが、その雰囲気がよく再現されています。

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

すぱっとキレのある画も。歪曲は皆無といっていいほどによく補正されています。

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K

かつてよく通った喫茶店にお邪魔。これだけの描写性能を誇りながら、コンパクトなボディとのマッチングで威圧感がないのです。人物を捉えるレンズとしても、本当によい1本かもしれません。50mmあたりとちがって周りの景色まで取り込めるので、その人が纏う雰囲気を柔らかいボケ味で表現できそうな気がします。

Nikon Z 7, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, Photo by K


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近しい1本になる、そんなレンズ

なんだか脱線した話ですが工業製品の世界はなかなか凄いことになっていまして、クルマやバイクのいわゆるスーパースポーツの世界は、もはや「これ何処で乗るんだ??」「誰が乗るんだ??」といった具合まで突き抜けてしまっています。性能を極めていく、工業製品の世界でそれは一つの道筋であり、ともかく見えやすい着地点でもあります。それは決して否定されるべきものではなく、一つの頂であり、もちろん魅力に溢れているとは思います。昨今レンズの描写も文句の付けようがない性能を誇るものが、誤解を恐れず記すなら「殆ど」といっていいほどになってきました。しかしちょっと取っつきにくいなと、なんとも罰当たりな思いも隠せないのです。文中に記しましたが、今だからこそ技術的に可能なこと、そことよい距離を保ちながら、何だか作り手に同じような思いがあるんじゃないかなと感じさせられた1本でした。びっくりするような一枚が撮れるような才はありませんし、ファインダーを覗いて「ひひ」とシャッターボタンを押す、そして、再生画面を見る。「いいじゃ〜ん!」と一人ほくそ笑む。そんな私のようなカメラ好きを虜にさせてくれるものを感じる1本でした。

( 2020.03.05 )

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ニコンZシステム向けに開発された高性能35mmレンズ。高性能なズームレンズが多数ある今、敢えて単焦点レンズを持つ贅沢さにしっかりと応えてくれる1本です。

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