PHOTO YODOBASHI

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K: さて、いよいよ例のアラインアンスのことをお聞きしましょう。

山木: お、とうとう来ましたね(笑)

K: 改めてこのアライアンスがどういうものか、教えていただけますか。

山木: ときどき誤解されるのですが、このアライアンスは技術提携ではありません。今後の商品開発のロードマップを共有して棲み分けを図るというものでもありません。マウント機構、およびそこで行われる通信の仕様を同じくするのが、このアライアンスの内容です。その枠組みの中で、各社が独自性を保ちつつ、持ち味を生かした商品の開発をして行く。そういうことです。

K: シグマさんには、パナソニックさんからこの話があったという記事を読みましたが、当初シグマさんはこの件をどう受け止められたのですか。

山木: 実はSAに代わる新しい独自マウントの開発に入っていました。

K: それは、フォトキナで発表のあった「フルフレームFoveon」を見据えてのものだったのでしょうか。

山木: いや。SAマウント自体、フルフレームを想定したものでしたし、APS-Hセンサーを搭載したsd Quattro Hを出したのはフルフレームへの布石でもありましたから、マウントを変えないとフルフレームが実現できないということはありませんでした。それでも新しいマウントが必要になった理由は、やはりショートフランジバック化です。レンズ設計の優位性という意味で、ショートフランジバック化は避けて通れないという判断をしていました。

K: それが既に開発に入っていたのに、そこへ違うマウントにする話が急に持ち上がってきた・・・そういう状況だったわけですよね、シグマさんとしては。

山木: そうです。当然、社内でもいろんな意見がありました。私自身もどうすべきか非常に悩みました。先ほどもおっしゃっていただいたように、シグマには「独立心」とか「独自路線」を尊重する社風が伝統的にあります。自由にやりたいという。ましてや、これで行こう!と決めたマウントの開発、それはつまりボディ、レンズ共にという意味ですが、その開発が既に進んでいたわけです。当たり前ですが簡単に答えが出るはずもなく、長い時間をかけて議論を重ねました。

K: そして、最終的にこのアライアンスに参加し、Lマウントで行く決断をされました。そのポイントは何だったのでしょうか。

山木: その答えはシンプルで、「ユーザーから見たらどうなんだろう?」ということ。それが一番の理由です。

K: つまり、カメラを使う側としてはその方が面白くなると。

山木: そういうことです。「選択の振れ幅の大きなカメラシステム」と言えばいいでしょうか。違うメーカーのボディとレンズを、マウントアダプターではなく、互換性を100%担保しながら自由に組み合わせられる。使う人が望むものができ上がる。しかもそれが、ライカ、パナソニック、シグマという、それぞれ持ち味の違うメーカーであれば、本当に面白いことになると思いました。

K: そういう未来のイメージはすぐに湧いたのでしょうか。

山木: シネレンズをやってきたことの影響も大きいと思います。シグマは2016年にシネレンズの市場に参入しましたが、シネ用機材の世界って、必要な性能をもった物を自由自在にアタッチメントさせて使う文化があるんです。そのイメージが頭にありました。

K: しかし重い決断だったと思います。

山木: 自分でハッパをかけてそれなりに進んでいる仕事を、今度は突然やめろと言うわけですから、心が痛みました。みんなが必死に取り組んでいるのを見ていましたからね。でも、これはシグマの転換期なんだと。ここでわれわれはどうすべきなのか。それを過去に囚われずフラットに考えたら、自ずとこの結論に至りました。

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K: 「フルフレームFoveon」の話になりますが、フォトキナでは2019年中に出すと高らかに宣言されていましたね。

山木: はい、言っちゃいました(笑)。

K: ええと・・・大丈夫でしょうか?(笑)

山木: 今のところ、すべて予定通りに進んでいます。先ほども申し上げた通り、フルフレームのFoveonについてはこのアライアンスとは関係なく、ずっと以前から研究を続けてきたことです。もちろん解決しなければならない課題はまだまだありますが。

K: とうとうあの描写がフルフレームで・・・世界中のシグマファン、Foveonファンが心待ちにしていたことがいよいよ実現するのですね。最初にFoveonを搭載したのは確か2002年のSD9でしたが、それがいよいよここまで来ました。やはり感慨深いものがありますか。

山木: まだまだ進化の途中ですから、感慨に浸れるのはずっと先になりそうですね。でも、このセンサーがあったおかげでシグマのレンズが良くなったという自負はあります。DPシリーズの頃、ユーザーのみなさまから「このセンサーに見合うレンズが、お前のところには無いじゃないか」とご意見をいただいたのが始まりだったんです。あれで一つギアが上がった。

K: Foveonを測定器としてレンズの開発を進めたのですよね。

山木: ごまかせないんです、Foveonは。でもいいセンサーがいいレンズを生み、そのレンズがさらにいいセンサーを生む・・・せっかくレンズもボディも作っているのですから、そういう相互作用が働くのが理想ですし、事実そうなってきたと思います。

K: 山木社長ご自身として、シグマはレンズ屋ですか?それともボディ屋ですか?

山木: (しばらく考えてから)もちろんFoveonはこの先さらに強力な武器になっていきますし、先ほどもお話ししたように、レンズとボディはシグマがカメラシステムを考えて行く上での両輪です。しかし、シグマの創業原点はレンズにありますし、そのDNAは今でもしっかり生きています。なのでご質問の答えとしては「シグマはレンズ屋」、でしょうね。

K: シグマはこれからどこへ向かうのでしょう?

山木: 「これから」というより「この先も常に」という観点からお話をさせていただくと、社長としていつも考えていることが二つあります。一つは当然ですが会社を存続させること。従業員とその家族の生活がかかっているのですから、どこへ向かうにせよ、これが私の一番大事な仕事です。二つ目は、ただモノを作るのではなく、お客様に「シグマがあってよかった」と言ってもらえるブランドにすること。他には無いものを、こだわりをもって作る。「Made in Aizu」であることもその一つです。大きなメーカーのように、あらゆるものをずらっと揃える「全方位戦略」をシグマがやっても意味はありませんし、そもそも体力的に無理です。だから私は「何をするか」よりも「何をしないか」を常に考えています。シグマはいつもシグマらしく。Lマウントになってもそれは変わりませんよ。


時に真剣に。時にユーモラスに。極めてご多忙にも関わらず、われわれのインタビューに長い時間を割いていただいた山木社長。インタビューが終わるや否や、社員の方が「社長、もうみなさんお待ちです!」と告げ、「あっ、いかんいかん・・・」と小走りで去って行かれたのが印象的でした。

「実は、お話しできることはそんなに無いんですよ」という山木社長の言葉でスタートしたインタビューでしたが、いざ蓋を開けてみれば、いろいろと興味深いお話が聞けたのはご覧いただいた通り。特にLマウントアライアンス参加への苦悩や葛藤のくだりは、それをお話しするお顔が実に晴れ晴れとされていた分、かえってリアルに感じた次第です。

「ユーザーから見たら面白いことになると思った」

常にユーザー目線。その上で、やりたいことをやりたいようにやる。シグマが、いつも私たちをハラハラ、ドキドキさせてくれる理由が分かったような気がします。2019年は間違いなく台風の目となるシグマ。その進路予想図を、じっと注視しようではありませんか。

( 2018.12.17 )

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