PYメシ撮り道場最終回「白米」

お米好きですか？　好きだけど、あえて撮ろうとは思わないですよね。それはおそらく撮っても映えないからとか、シンプルすぎるとか、見慣れすぎて写真として伝わりにくいなどの理由からでしょう。メシ撮り道場最終回のお題は「白米」。そこにはきっと「みたままを伝える写真」から「映える写真」にするヒントがあるように思います。ポイントとなるのは湯気の使い方、ご飯粒の見え方、そして白米への熱い想いがどれほど写っているか、でしょうか。PY編集部員の苦悩工夫を見ていただき少しでも参考になればと思います。

（ Text by Z II ）

お題「白米」

#1 - iPhone 7 Plus

柔らかな光で白飛びや黒潰れしないようにバランスを取っています。それでいて湯気を感じさせる条件になるように撮影場所を考えていますね。普通に何気なく撮っているように見えて実は細かな計算と工夫が見えます。しかし映えるにはもうひとひねり熱い気持ちを盛り込みたいですね。

#2 - iPhone 11 Pro

奇をてらわずリアルな、そのままを撮っています。湯気によってレンズが曇ったのが計算なのか偶然なのか分かりませんが、よい感じにホワッとしています。今日もいつも通り元気に生きてます！という感じが伝わってきます。

#3 - iPhone 6s

これはカッコイイ。白米の透け感、湯気の量、差し込む朝日、まるでコマーシャル写真のようです。スマートフォンで撮れる限界に限りなく近いクオリティですね（やり過ぎ）。ここまでのものにするには完璧な準備をして臨んだように思います。相当に無駄な熱さですが、その熱い気持ちは今後どんな仕事にも姿勢として表れてきます。無駄なことにこそ価値がある、を体現している素晴らしい写真です。

#4 - ASUS ZenFone 5

奇をてらうことも、表現スタイルのひとつです。ただ、何を伝えたいのかが伝わらないと見た人にスルーされてしまうので難しいのです。僕らはここにいるよ！なのか、もったいない！なのか、食われてたまるか！なのか、いろいろ想像するのも楽しいですね。

#5 - iPhone XS

あれ？どこかで見た気が（笑）。少々柔らかめに炊き上がった飯粒の艶と立体感は出ていますね。面白い写真ではありますが、熱い想いというまでには達していませんね。

#6 - iPhone X

白皿に白米のおむすび。なぞかけ？と深読みしてしまいそうな写真です。おそらくコンビニの塩むすびだと思いますが、シンプルを追求して白米、塩、白皿と全て白い物で統一したのかなという感じを受けました。どうせなら背景も白にしてみたら面白い写真になったかもしれないですね。

#7 - iPhone XS

さて、悩ましい被写体が登場です。これ白米か？　うん、まぁなんとか白米は写っていますね。そもそも白米を狙って撮っていないのでなんとも評しがたいですが、撮り方として手前のどろりとした部分はいただけないですね。料理にも顔があります。盛り付けた料理人もその顔に命をかけているのですから、そこはきれいに撮ってあげましょう。

#8 - iPhone 6

こちらの工夫はメシの友を使ったところですね。少々主張が強いようにも思いますが、これも撮影者の想いですので、とても良いと思います。光も柔らかで全ての登場物の質感から香りまで伝わってきますね。

#9 - iPhone 11 Pro Max

ひとしきり悩んでみて開き直った感が見えます。白米というものを深く深く愚直なまでに追求したら、アルミのコッヘルで炊いたご飯に明太子という姿に辿り着いたのだと思われます。しかも、ひと腹をドンと乗せる思い切りと、寄りすぎることのないさりげなさ、色合いもよく湯気こそ無いものの見た人の唾液線に訴えるに十分な写真であります。

一手間の工夫が、見たままの写真から感じる写真に変える

写真というものの役割は、当初は「見たままを写す」ことだったのではないかと思います。やがてその役割が「伝える」ことになり、さまざまな意図を持った写真が生まれ、写真という文化が大いに成熟しました。スマートフォンとSNSの繁栄した現代は、誰もが写真の力を試せる時代だと思います。見たままの写真ではもはやスルーされてしまいます。伝わる写真でなければ目は止まりません。五感に響く「感じる写真」でなければ、人の心は動かせません。それは簡単なものではありませんが、ほんのちょっとした工夫であったり、少しだけ想いを込めることで近づいていくのではないかと、メシ撮り道場を通して思いました。

今の写真をより良くしたいという欲求を持ち、問題意識を持つ者こそ成長していくのだと思います。写真を使って何を伝えたいのか、シャッターを押す度にそれを意識していたら、その積み重ねは人間として大きな成長につながるのではないでしょうか。

写真と本気で向き合おう。

( 2020.05.22 )