PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Canon RF600mm F11 IS STM
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
望遠ズームを使う人の多くが超望遠単焦点レンズに憧れを抱いていると思います。でも、大きさやその価格から躊躇してしまい、思い切って購入というところまで至らないのが現実ではないでしょうか。「RF600mm F11 IS STM」はそういった悩みや迷いを払拭する、超望遠単焦点レンズの新たな選択肢です。EFマウントの「EF600mm F4L IS III USM」が168×448mm、3050gであるのに対し、「RF600mm F11 IS STM」は93×269.5mm、930g。ミラーレス用という点を差し引いても、とても小さく軽いのがお分かりになると思います。大きい・重い・高価であるという、ある意味では購入の妨げとなってしまう要素をメーカー自ら打破するのはそう簡単なことではありません。信頼できるカメラ、そして硝材、技術すべてが揃わなければ、このような思い切ったスペックのレンズをリリースするのは難しかったでしょう。キヤノンは1958年以降にSレンズ「CANON 600mm F5.6 I」ほか超望遠単焦点でF値が固定のレンズをいくつかリリースしており、望遠レンズのラインアップはとても充実していたということも見逃せない事実です。さて、気になるのはどんな描写なのか、そしてF11固定というスペックがどう撮り手の想像力に応えてくれるのかというところではないでしょうか。さっそく作例をご覧いただき、ご自身の目で確認してみてください。
( Photography : Z II / Text : Rica )
超望遠レンズで鉄道を撮りたいという写真愛好家もいらっしゃると思います。鉄道写真には、真横からだったり下から煽って撮ったりとさまざまな撮り方がありますが、今回は上から撮ってみようと少し高台の撮影ポイントから狙ってみました。600mmの超望遠レンズで撮影すると、遠くにある被写体が近くにあるように大きく見える、いわゆる圧縮効果を活かした撮影ができます。奥行き感がグっと縮まって見えることで迫力も増します。車両も圧縮効果によって短く見えますが、数えてみるとしっかり10両あります。また、AF性能に関しても優秀で、ステッピングモーターを採用した高速かつ静音なAFがしっかりと動体を追尾してくれました。
本レンズは超望遠レンズでありながら、とてもコンパクトで街中でもカメラバッグからサッと取り出して撮ることができます。ただ、絞りがF11固定となっており、手持ち撮影の際は普段よりもややISO感度を上げて撮る場面が増えるのも事実です。このカットはISO 1600で撮影していますが、クルマのボディの艶感やハイライトのグラデーションの描写は見事というほかありません。ボディ側の高感度耐性も相まってノイズも感じない滑らかな写りです。レンズ内光学手ブレ補正の効果も高く、静止している被写体ならシャッタースピード1/200秒前後で手ブレすることなく撮影できる印象です。被写体が動くものになると、それに合わせてシャッタースピードや感度をシフトすることが必要になってきます。
最短撮影距離4.5m付近での撮影ですが、綿毛の柔らかな質感や形状も高精細に描写しています。F11固定のレンズですから、絞りでぼけをコントロールできないというデメリットはありますが、これだけの描写力を持つ超望遠の単焦点レンズをカジュアルに携行できるという大きなメリットには抗えません。
強烈な逆光をあえて画面に入れての撮影です。もっと派手にゴーストやフレアが出るのでは？と思っていましたが、よく抑えられています。光がいちばん強い部分には若干グリーンのフレアが出ているように見えますが、じっくり見なければ気にならない程度です。DOレンズの採用によって入射する光の進路をしっかりとコントロールしていることがわかります。
仕切りや柵のある花壇などでは、被写体に寄って撮ることは難しい場合がありますよね。600mmなら、自分が立っている場所から離れたところに咲くお好みの花をグっと引き寄せて撮ることができます。ただし背景のぼけに関しては前述した通り固定絞りのため、ある程度メインの被写体と背景との間に距離がないと、柔らかなぼけにならないことも少なくありません。撮影シーンの状況をよく見て、画作りをしっかり考えて撮ることが大事になってきます。
四隅にほんの少し周辺減光がありますが、ほぼ気にならない程度です。それよりも海面の波や岩の質感、衣服や肌の質感まで丁寧に描き分けていることに感心しました。実はよく見ると釣竿の先が白く塗られているのですが、空に溶けることなくしっかりと竿先を描き切っています。
夕暮れにうろこ雲を狙ったカットです。超望遠で切り取ると、ひとつひとつのうろこ雲が圧縮効果によって見た目よりも大きく写り、摩訶不思議な画になりました。画面のセンターだけでなく、端の木々までくっきりと描かれているところにレンズ性能の高さが垣間見えます。
超望遠単焦点レンズを手軽に楽しむ、キヤノンの新提案
レンズ名にも、レンズの外観にも目印となるものはありませんが、実は本レンズにはDOレンズが採用されています。レンズの小型化を実現するにあたり重要な役割を担うDOレンズですが、登場から数十年経過した現在では一般的な技術となっており、本レンズには特別な名前はついていません。メーカーが明示している通り、DOレンズを採用しているとクリアな描写が得られる一方でフレア発生時にその周辺に色が出てしまうことがあります。ですが、本レンズで撮影した際、逆光や強い光源に向かって撮影しても、特に目立った色つきのフレアは見られませんでした。割り切ったスペックでデメリットについても説明がされているレンズですが、実際に使用してみると気になることはほぼなく、逆にそういったデメリットが本当に出てしまうのかを探ってしまいたくなるほどです。930gと軽量であるため携行するのは大変軽くありがたいのですが、撮影時の手ブレも大きくなりがちです。そこを約5段分のレンズ内光学手ブレ補正を搭載することでしっかりカバーし、シャープでクリアな描写が得られます。今回のレビューでもすべて手持ちでの撮影を行いましたが、効果は絶大だと感じました。EOS Rシステム向けのレンズは、広角から超望遠までズームレンズ、単焦点レンズに関わらず、必要なところにしっかりと各レンズをラインアップ。そうした上で、こういった遊び心のある製品をリリースしてくるところにEOS Rシステムへの自信や本気度が伺えます。本レンズは「超望遠レンズを身近に」というコンセプト通り、入手しやすい価格で手軽に携行できるレンズに仕上がっていますから、気になっている方はぜひとも手にすることをお勧めします。ズームレンズとは違う超望遠の世界があなたの写真表現に必ずや新しい風を吹かせてくれるはずです。
( 2020.11.10 )
600mmという超望遠域をF11という固定F値にすることで、コンパクトで手軽に使える一本に仕上げた、超望遠単焦点レンズの新機軸。シャープでクリアな描写を、EOS Rシステムで堪能できます。
今回のレビューはEOS Rシリーズの最新モデルEOS R5を使用して行いました。動体撮影にも強く、高速連写は最高20コマ／秒。超望遠レンズと組み合わせ、野鳥や飛行機、スポーツまで果敢にトライできます。
RFマウントレンズ専用のエクステンダーです。こちらは1.4倍。マスターレンズの性能をスポイルすることなく、高い描写性能を発揮します。RF600mm F11 IS STMに装着した場合、絞りは1段暗くなります。
こちらは2倍のエクステンダーです。1.4倍と同様に防塵防滴構造となっています。もちろん超望遠レンズに装着しても不安なく使用できるよう、高い耐久性と耐振動衝撃性能も有しています。