PHOTO YODOBASHI

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Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EF600mm F4L IS III USM

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

簡単に近づくことができない被写体を撮影するには、言うまでもなく超望遠レンズの力が必要です。このカテゴリーは俗に「大砲」とも呼ばれ、昔から「ヨンニッパ(400mm F2.8)」「ゴーヨン(500mm F4)」「ロクヨン(600mm F4)」「ハチゴロー/ヤゴロー(800mm F5.6)」と呼ばれる定番が存在します。今回ご紹介する一本は、大砲の中でも最大口径を誇り(168mm)、二番目に焦点距離が長い、ロクヨンの三代目となります。600mmという長大な焦点距離に対して、16.8cmの最大径はまさに「バケモノ」です。有効径は当然これよりも小さくなるとはいえ、砲身としては対空砲にも分類されるサイズですよ。それはともかく、この組み合わせがもたらす圧倒的なボケとシャッター速度がロクヨンの存在価値なのですが、三代目になって劇的に軽量化されました。3920gだった二代目から、なんと3050gにまでダイエットしたのですが、勢い余って(?)ゴーヨン(EF500mm F4L IS II USM)よりも軽くなっているのです。

「3kgって言っても絶対値的には重いでしょ」という感覚は、大砲使いにはありません。被写体や構図をイメージし、場所と時期を絞り込み、車やバイクで移動し、フラッグシップクラスの三脚+ビデオ雲台+「お立ち台」でじっとその瞬間を待つ世界があります。そしてその世界に生きるカメラマンの多くが、初代は5kg超えで開放は少し甘かったことも知っているのです。「3kg」というのは天地がひっくり返るような大革命なのです。しかも描写力もAFも手ブレ補正も、みんな強化されているというではありませんか。

そんな最新最強ロクヨン砲のレポート。例によってスケジュールはタイトで、「私でいいのだろうか」などと考える暇もなくフィールドへと射出された次第ですが、ファインダーを覗いて度肝を抜かれました。今の時代、600mmという焦点距離はズームレンズの守備範囲にもなっていますが、F4の目を通した世界は別格。合焦部はもちろん、ボケの中にも「層」があり、それが重なることでしか再現できない立体感があるのです。

( Photography & Text : TAK )

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

大阪国際空港(伊丹空港)のB滑走路北側に陣取り、機体が前に迫ってくる離陸シーンを中心に撮影しました。空港に行くたびに機体の大きさに圧倒されますが、600mmであればそれが伝わるサイズで収めることが出来ます。パーツのラインやリベットなどの描写も大変シャープで、質感表現も豊かですね。ジェットブラストもリアルに再現されていますし、絶妙なトーン再現により、機体のツヤやフォルムも実に生き生きと描かれています。特に感心したのは、プロペラ機が着陸してくるショット。距離があるのにもかかわらず立体感があり、前景から背景までの各要素の位置関係がつぶさに見て取れますし、現場の空気感もリアルに伝わってきます。ヌケも素晴らしいからこそ、空気の質の違いさえも写し取れるのでしょうね。AFは「C-AF」モードで臨みましたが、高速に正確に追従してくれたので安心して撮影に集中できました。離陸時とはいえ時速300km近くは出ていますから、AFもスマートであるに越したことはありませんよね。本レンズでは新たに「リアフォーカス」を採用。レンズ本体の小型化はもちろん、各設定スイッチがより撮影者側に近づいている分、操作性も向上しています。この日はご覧の通りの快晴でゴールデンアワーを期待したのですが、夕刻になり太陽の前だけに雲が登場。ご丁寧に太陽を隠し続け、そのまま日没を迎えました。私がロケに出るとよくこうなるのですが、日頃の行いを改めたいと思います。


Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

ズームで絞って撮ることが多い鉄道写真。撮影ポイントでもロクヨンを見かけたことはほとんど記憶にないのですが、せっかくなのでやってみました(ホームに乗り込む勇気はありませんでした 笑)。現場ではかなり引いたのですが、4両程度の短い編成なら枠内に収めることができました。ご推察の通り、ズームとは次元の違うヌケです。走行中の列車は置きピンで撮るのが常道と思われますが、C-AFでもこのピントでございます。飛行機よりはるかに遅い被写体ですが、距離はグンと近いですからね。3枚とも三脚に載せて撮影したのですが、手ブレ補正モードはオンでもオフでも問題ありませんでした。それだけ優秀な頭脳を持った手ブレ補正機構なのでしょうね。ちなみに2枚目の新快速、なんと敦賀から姫路まで行くんですよ。ロマンがありますよね。でも撮影時は寒いのなんの。大体線路は土手にありますから、周りはそうでなくても線路のところだけ風が「ビューッ」と。こんな時「自分は一体ここで何をやってるのか」と思うことがありますが、鉄道写真家へのリスペクトも上限に達した次第です。余談ついでに、「EF」って機関車っぽいですよね。


Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

Canon EOS 5D Mark IV, EF600mm F4L IS III USM, Photo by TAK

飛び立つ仲間を直立不動で見送るコハクチョウの姿にハマっております。数羽ずつ、ねぐらの湖へと飛び立つのですが、必ずこうして見送るんです。イイヤツでしょ。イイといえば、5段分の手ブレ補正。これが非常に強力で手持ちでも余裕なのです。取り回しの良さにも助けられました。サッと持ち上げると、自然と良いバランスで構えられるので、結果的に「重い!」とは感じないのです。レンズ構成図を見てみると、先代に比べてガラスや三脚座が全体的にカメラ側に配置されていることが分かりますが、なるほど、そういうことだったのですね。これなら片手にレンズ+ボディ、片手に三脚でも歩けます。もちろんそこそこの距離に限りますが、体育が苦手だった私でも800m程は歩けましたからね。これが4kgとか5kgだったら違う作戦を立てていたでしょう。ちなみにこの日も晴れの予報が見事に外れ、夕刻になっても強風でただ寒いだけでした(長いレンズなので強風下での保持にはご注意)。日頃の行いを一層悔い改めようと思いますが、曇天においても惚れ惚れするようなコントラストと色再現力に救われました。派手とか地味とかそういう二元論では語れない。そこには慈悲深さも感じられるのですが、被写体の存在感はもちろん、生き残りをかけてシベリアから渡ってくる彼らの生命力や感情さえも伝わってきませんか?


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贅肉を削ぎ落とした、究極のロクヨン。

曲線と直線が織りなす見事なライン。白と黒のバランスに赤のアクセント。実に美しい出で立ちです。美しいものには無駄がありません。飛行機や鳥がその良い例ですが、「Canon EF600mm F4L IS III USM」も模範例なのです。重量も含め一切の無駄がなく、無駄を経由しないからこそ、より確実に結果を出してくれるのですね。3kgならこれまで諦めていたような撮影も視野に入ってきますし、撮影の幅も一気に拡大するでしょう。実は今回、全てのロケ日において夕焼けを見ることができなかったのですが、これが5kgのレンズだったら立ち直れなかったかもしれません。しかしこの「軽さ」なら、「また行こう」と思える。この差は極めて大きいです。立体感、ボケ具合、解像力、単焦点ならではのキレ、深みのある色再現、リアルな質感表現、豊かな階調幅、最強のAF。もう繰り返す必要はありませんね。

ロクヨンの価値をご存知の方には釈迦に説法ですが、先ず以て、この世界はササッとロケに行って、イイ感じのショットをサクッとゲットできるような簡単な世界ではありません。動体の一瞬の姿を、自分の思うままに捉える。そのたった1枚に辿り着くまでに何年もかかるような世界です。ただ、同じ年月でも、全幅の信頼を置けるレンズであれば得るものも多くなるのではないでしょうか。いや、ひょっとしたらより短い期間で「この1枚」をものにすることが出来るかもしれませんし、更には成功カット数も膨れ上がるかもしれない。本レンズの比類なき実力を目の当たりにすると、それが現実的に思えてくるのです。

このレポートを書いているたった今、撮影したコハクチョウの中の約60羽が北帰したとの知らせを受けました。やはり暖冬だからなのか、去年よりも相当早いタイミングで驚いているところですが、本レンズで撮る機会に恵まれて本当によかったなと思います。もうお分かりですよね。この一瞬に「次回」はないのです。万難を排してでも、今すぐにでも、手にして使いこなしたい。知床で、北極で、サファリで野生動物と向き合ってみたい。そんな冒険心を掻き立ててやまない、至高のロクヨンです。

*本レンズは極めて大口径であるが故に、前玉の前に装着できるフィルターが現時点では存在しません(後部差し込みフィルターは装着可能=52mm)。その代わり、フッ素コーティングなどで守りを固めています。

( 2019.02.20 )

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あらゆる難敵を粉砕する最大口径のキヤノン砲。1門いかがでしょうか?

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本レンズには「レンズフード ET-160(W III)」が同梱されていますが、便利な短めのフードもございます。収納性が上がるだけでなく、少しでも周りに迷惑をかけたくない時などにも重宝しますよ。

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本レンズには「ソフトケース LS600」が同梱されていますが、より堅固なプロテクションをお望みの方はこちらのハードケースをどうぞ。

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