PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/320, F5.0, ISO 100, Photo by A.Inden

Canon EF16-35mm F2.8L III USM

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

キヤノン“大三元レンズ”のひとつとしてワイドレンジを担当する「EF16-35mm F2.8L III USM」。発売から少々時間が経ってしまいましたが実写レビューをお届けします。キヤノンEFマウント(フルサイズ)に対応する広角ズームレンズながら、テレ端が35mmと比較的長いため標準域的な撮影までもこなせてしまうという使い出に富んだ一本です。もちろんメーカー最高峰の「L」を冠するレンズですから、ワイドレンジが大好物という方にとっては羨望の的となる存在であることは言うまでもないでしょう。製品名からもわかるように今回Ⅲ型へと進化し、各収差を効果的に抑制するためにレンズ配置などを変更。絞り羽根枚数は9枚にアップ。フレアやゴーストを低減する新開発のレンズコーティング技術「ASC」「SWC」を採用し、レンズ前・後面にはフッ素コーティングを施すという念の入れようです。前モデルからすでに、目が覚めるようなシャープネスと、広角としては望外のボケ味で楽しませてくれていただけに、そこからさらにどう進化したのか?リニューアル内容からすると描写特性に関するものですので、撮りためてきた作例カットをご覧頂きながら確認していきたいと思います。

( Photography : A.Inden / Text : KIMURAX )

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/800, F5.6, ISO 200, Photo by A.Inden

全長15.9mmプラス、重量155gアップ。

大きくなって、重くなりました。一見ネガティブな点をクローズアップするようなタイトルにするのは如何なものか?というご意見もあるでしょうが、筆者は決してそうは思わないのです。リニューアルするなら高性能化と共に、軽量化あるいはコンパクト化という流れになることが半ば当たり前のことのように、我々ユーザーが慣れきっているからちょっと違和感を覚えるのかも知れません。もちろん、小型&軽量化は使い勝手や、持ち運びなどにも影響してくることなので大事。しかし、そこを度外視してでも最高の画質を求めた結果こそが、今回のIII型というわけなのですから・・・全長プラス&重量アップ、大いに結構です!(笑)。今回はEOS-1D X Mark IIに装着してのシューティングでしたが重量バランスもOK。実際に撮影を始めてしまえば、サイズアップなんてことは全然気にもなりませんでした。ちなみにこちらのカットはワイド端での撮影。画面全体に行き渡るシャープネスの効いた緻密さには目を見張るものがあります。そう、すべてはこの画質のためなのです。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/2500, F4.0, ISO 100, Photo by A.Inden

開放からたった1段絞るだけで、もうこれ以上絞る必要なしというぐらいにキリッとした描写です。ワイド端は16mm。これだけの超広角ですからパースはそれなりにつきますがそれほど違和感は無いですね。また広角系レンズでウイークポイントになりやすい画面周辺の画質ですが、像に流れは見られません。ほとんどパンフォーカスになっているものの、奥行きまでちゃんと感じさせる立体感もありますね。二人とそのすぐ左に見える船のあたりが特に。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/1600, F2.8, ISO 200, Photo by A.Inden

今度は一気にテレ端へズーム。絞り開放での画です。フロントグリルへの写り込みの色合いがいい塩梅に出るように露出をアンダー方向に振ってみましたが、クルマ全体の艶感からメッキの質感まで見事に再現しています。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/1600, F4.0, ISO 800, Photo by A.Inden

AFはとにかくサクサクと速いです。屋外で使用していると動作音はまったく聞こえないほどに静か。サッとレンズを向け瞬時にこんな画がゲットできるのです。手ブレ補正機能は無いので、きちっと構える必要はありますがね(笑)。ピントピークが浮かび上がってくる解像力には、思わずゾクッとしてしまいます。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/1000, F2.8, ISO 200, Photo by A.Inden

強い日差しを受け、透き通っているかのように見える花びらが印象的に再現されています。そのきらめきをさりげなく引き立てているボケ味。広角系でボケ味を云々することはあまり無いのですが、このクセのない柔らかなボケ味は本レンズの大きな価値のひとつ。Lレンズたらしめる表現力です。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/500, F2.8, ISO 200, Photo by A.Inden

ワイドな画角は引きのない空間では特に重宝します。いかがですか?コンクリートの壁や非常ベルボックスのサビの質感。実物そのままにというリアリティですよね。発色も見たままに忠実。シャドー部の粘りもいいです。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/640, F2.8, ISO 100, Photo by A.Inden

しべまでくっきりクリア。前ボケもいいです。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/8000, F2.8, ISO 200, Photo by A.Inden

広い画角がゆえに、屋外では強い光源がフレームインしてしまうこともしばしば。実際、アングルによってはゴーストが出ることもありますが、ちょっと工夫してあげればこの通り。またフレアの心配はまったくといっていいほど無く、しっかりと抑えられていました。おかげで、クリア感も上々。コントラストの低下もないですね。青空のトーン再現も秀逸だと思います。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/400, F2.8, ISO 800, Photo by A.Inden

シャッタースピードを稼ぐためにISO感度を上げての撮影。その際、見たままの雰囲気に近づけるべく露出をアンダー方向にコントロールしています。昨今のカメラの高感度特性が良くなってきたとはいえ、やはり仕上がりを考えるとあまり上げたくは無いですよね。その点F2.8の明るさはやはり頼もしいものです。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/4000, F5.6, ISO 200, Photo by A.Inden

絞り開放からたった2段絞っただけでピントピークに達してしまう印象です。この緻密さ、さすがですね。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/250, F2.8, ISO 200, Photo by A.Inden

少々雑然とした被写体ですが、きっちりと丁寧に描き込んでいます。一つ前のカットでもそうでしたが、フリンジなどもほとんど見受けられず。色収差がしっかりコントロールされているのがわかります。


Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/4000, F2.8, ISO 100, Photo by A.Inden

ワイド端で開放すると周辺落ちが目立ってきますが、ちょっと不思議なこの光景にただならぬ雰囲気をプラスしてくれました。周辺落ちは絞りで対応するなり、後処理で如何様にもできますので問題ありません。むしろこんな雰囲気に仕立ててくれるのですから、落ちないよりは落ちてくれたほうが好都合なのです。

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/8000, F5.0, ISO 200, Photo by A.Inden

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/3200, F2.8, ISO 400, Photo by A.Inden

Canon EOS-1D X Mark II, EF16-35mm f/2.8L III USM, 1/80, F3.2, ISO 100, Photo by A.Inden


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III型への道のり。それは周辺画質への徹底したこだわり。

広角レンズは写し込む範囲が広く、しかも“超”が付く広角ともなればレンズ面の隅の隅まで使ってイメージセンサーにありったけの光の情報を届けることになります。そういうこともあり誤解を恐れずに言えば、超広角レンズでは拡大して見た際に周辺の像に多少流れがみられても、ある程度まとまっていれば大したものだと評されてきたわけです。その点先代のII型においてはA3程度でのプリントサイズでも何ら問題はなく、素晴らしい仕上がりを見せてくれました。そこからさらに進化した新しいIII型。その凄みは一般的な鑑賞サイズを超える出力にも耐えうる周辺画質を可能にしてしまったということです。II型になんら不満はなかったという人にとっては、もしかするとオーバースペックの領域なのかもしれません。しかし、あえてそのゾーンにまで切り込み本レンズを世の中へ送り出したことは、まさに開発スタッフの方々の矜持そのものだったのではないかと筆者は勝手に推察するのです。キヤノンが有する技術のすべてを注ぎ込んだ、最高峰の大口径広角ズームレンズはこれです、とね。一般用デジタル一眼レフカメラで5000万画素超えの世界に真っ先に突入したメーカーが、今回III型となる本レンズを投入したこと。それは高画素機が当たり前になる世の中を示唆しているのかも知れません。兎にも角にも画の仕上がりの素晴らしさは、すでにご覧いただいた作例カットからもお判りいただけたのではないかと思います。しかも一度手に入れてしまえば永く使い込めるレンズ。そう、確かな資産となってくれる一本です。プロフェッショナルユースの多くの方は、発売直後にすでに手にされていることと思います。もちろん、広角好きなアマチュアの方にとっても、この先も長い写真生活をよりよくするためにはきっと外せない存在になるはずです。さあ、購入までの悩ましい時間すらも、楽しんでみてはいかがでしょうか。

( 2017.07.24 )

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10年ぶりとなるリニューアルで、大きく性能をアップした超広角ズームレンズ。最新の技術を惜しげなくそそぎ込み、画面の隅々まで惚れ惚れする描写力です。高画素機をお持ちのユーザーの皆さまも納得の性能。感動の解像力をぜひご堪能ください。

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EF16-35mm F2.8L III USMはねじ込み式のフィルターを使用できることもメリットのひとつ。ZXプロテクターは特殊男性緩衝材によるフリーティングフレームシステムを採用し、フィルターガラスへの負担をほぼゼロに軽減。4K、8Kなどの高解像度にも対応し、レンズ本来の描写力を引き出す保護フィルターです。

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