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Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

Canon EOS Kiss X90 / SHOOTING REPORT

ひとくちにエントリーモデルと言っても選択肢は多数存在するのですが、本機はキヤノンのラインナップの中で「一番シンプルな」一眼レフモデルとなります。言い方を変えれば「一番安い」一眼レフです。先代のX80からおよそ2年を経過して生まれた EOS Kiss X90 は、センサーが拡大・刷新されたのが主な変更点。それ以外の部分は先代モデルを踏襲していますが、本体重量は少し軽くなりました。

変化が少ないというのは、大きな進歩がないように思えるかもしれません。とはいえ必要十分な機能に絞った本モデルとしては「敢えて変える必要がない」とも言えます。EOS Kissというシリーズの中で熟成されてきたベーシックな一眼レフを、時代に応じてセンサーを積み替えて提供する。変更や開発はコストとなって消費者に跳ね返ってくるのだから、不要なことはしない。そんな潔い姿をしげしげと眺めてみると、なるほど確かに本質的な機能はもう満たされているのですよね。

カメラ趣味が高じて機材も揃ってくればエントリークラスのモデルを手にする機会はなくなると思いますが、真面目に使ってみると「いや、これはこれでいいぞ」と思えてきました。初心者の方におすすめしようと筆を執りながら、気がつけば中級者・上級者の方にもおすすめしたくなっています。兎にも角にも、この軽量なカメラをぶら下げてお散歩撮影に出かけるとしましょう。

( Photography & Text : Serow )


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一眼レフの、ミニマルなかたち。

はじめてカメラを手にする方のために、本モデルの基本的なことをおさらいしておきましょう。EOS Kiss X90は一眼レフですから、ボディ内にミラーがあり、光学式ファインダーを備えています。ファインダーというのは写真を撮るとき目で覗くアレですが、光学式というのはレンズとミラーとプリズムを通して見るもので、望遠鏡や双眼鏡みたいな仕組みと思ってください。昨今のミラーレスカメラであれば電子式のファインダー(EVF)がついており、目で見ているのはモニタです。対して一眼レフのファインダーの先には、実際の被写体があります。一日撮影してみたあとで、人間の目に自然で疲れが少ないのはやはり光学式ファインダーですね。一眼レフを選択する理由は、結局このファインダーにあるわけです。バリアングル液晶、すなわち可動式の背面液晶モニタはついていませんが、一眼レフを手にするならふつうはファインダーを覗いて撮影するはずです。実に無駄のない、そしてとても軽いボディが魅力と言えましょう。

Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

センサーは約2410万画素のAPS-Cサイズとなり、本機発売時点で、エントリークラスの一眼レフはほぼ横並びになりました。光を受け止めるセンサーは同レベルということで、この点、上位モデルとの差を気にする必要はないでしょう。やはり緻密さは増しますし、色の厚みにも貢献していると思います。キットレンズを使う限りではこの進化は感じにくいかもしれませんが、単焦点レンズを買い増していくとき、しっかりそれに応える心臓部があるわけです。

Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

神社の境内が縁日と化してしまう休日。こういった人の営みが素敵に思えて、ついついシャッターを切ってしまいます。青々と茂る樹々のディテールと、色鮮やかな商品の数々をしっかり描いてくれました。10年経ってもこの光景が見られるのか、シャツの柄はどう変わっていくのか、それはこれからのお楽しみです。

Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

さてエントリークラスの上位モデルとの差に連続撮影速度があります。といっても秒間5コマか3コマかという程度の問題ですし、無闇に連射するよりはキチンと狙ってシャッターを切るのが第一だと思うのです。国民の祝日に掲揚される国旗、せっかくならば二本とも「らしく」見えるように撮りたいわけですが、風というのは気まぐれなもので、5分ほどの間に両方が翻ったのはこの瞬間だけ。まあヨシとしましょう。

Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

要するに、待てばいいのです。瞬間を撮影するには連射性能以上に、被写体の動きを推測する想像力だとか、それを待つ忍耐力のほうが重要だと思います。あとはその1枚に費やせる時間でしょうか。釣り上げるシーンまでは、残念ながら待てなかったのですが。

Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

測距点数という違いもあります。要するにフォーカスを合わせるポイントが、画面内にいくつあるかということです。これは多ければ確かに便利なのですが、個人的には「被写体を真ん中においてピントを合わせてから、構図を決めてシャッターを切る」というやり方が速くて確実だったりします。この写真、左下にはフォーカスポイントがないので、ご夫婦にピントを合わせてから野球少年が画面に入るように向きをずらして撮影しました。写真を覚えるには、最初はこういったシンプルなやり方がいいのではないでしょうか。

Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

結局のところ、自ら動くことが一眼レフを使いこなすことに繋がっていくのだと思います。目線を低くしたいなら、しゃがむ。高い位置から見下ろしたいなら、そんな場所を探して移動する。写真撮影のキホンって、そういうことですよね。思えば昔のフォトグラファーたちは、真ん中でしかピントの合わせられないカメラを使って、絞りやシャッタースピードも自分で考えて、ズームしないレンズで写真を覚えてきたのです。X90だって、至れり尽くせりのカメラではありませんか。

Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

ひとつだけ、上位モデルとの差として言及しなければいけないのは画像処理エンジンのことです。要するに画像処理を担うコンピュータなのですが、本機に搭載されるのは「DIGIC 4+」、同時期に発売されたEOS kiss Mが最新の「DIGIC 8」ですから、4世代前のエンジンということになります。高感度の撮影などではさすがに差が顕著になってきますし、JPEG撮って出しの画も最新エンジンではかなりブラッシュアップされています。このあたり、上位モデルを少しうらやましく思うのは否めません。

Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

ですから写真撮影に慣れてきたら、RAW現像にもチャレンジしてみましょう。絞りとシャッタースピードだけで意図通りの写真をつくるというのはプロでも難しい話で、昔ならばプリントの行程がキモでした。カメラはきちんとプリントしやすいネガ(すなわちRAWデータ)を作ってくれていますので、その後の行程をカメラ任せにせず、自分で仕上げていけばいいのです。夜チビチビとお酒を飲みながら、昼に撮影した写真を1枚1枚仕上げていく時間。なかなか楽しいものです。


Canon EOS Kiss X90, EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II, Photo by Serow

写真のキホンは、いつもここから。

はじめて一眼レフを選ぶとき、エントリークラスのなかでも選択肢は多くて、何を選べばいいのか分からなくなってしまうこともあるでしょう。でもお伝えしたように、一番弟分のX90で十分な撮影性能が備わっていますから、あまり難しく考える必要はありません。写真にハマるか分からなかったら、できるだけお手軽な本モデルでOK。むしろシンプルである分、写真撮影のコツを少しずつ身につけていくのにぴったりの相棒になると思います。もちろん予算が許すのなら上位のモデルも視野にいれたいのですが、おすすめしたいのは単焦点レンズのための予算を確保しておくこと。1本明るい単焦点レンズを手にすれば、スマートフォンでは撮れない写真が本当に撮れるようになりますから。

さてエントリーモデルなどまったく見向きもしなくなってしまった中級者〜上級者の方にも、このクラスのモデルは使いでがあるということをお伝えしておきましょう。そう、サブカメラという立ち位置です。何より軽くて、十分以上のセンサーを持っていて、ガンガン使い倒せる気楽さがいいのですね。いつもエース級の機材を持ち歩くのでは、重いし神経を使うし、肝心の旅行やイベントを楽しめなかったりしませんか。そんなときのためにプレミアムコンパクトを選ぼうとすれば、お値段もそこそこしますし、レンズが気に入らなかったりする。「35mmの画角がひとつあればいいんだよなあ」とか「標準域でマクロがあればなあ」とか。・・・ほら、結構アリだと思えてきましたよね。APS-Cの真っ当なカメラ、今はこんな値段で買えちゃうんですよ。

たくさんの人達に写真を撮るよろこびを与えてきた EOS kiss。
永年に亘るキヤノンの一眼レフ技術があればこそ、この選択肢がいつもぼくらの前にあります。

( 2018.05.14 )

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本レビューで使用した標準ズームレンズとのキットです。大体のシーンはこれで抑えられますから、あとは望遠を足すか、単焦点レンズをひとつ。マクロで接写というのも楽しいですね。

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サブカメラとして選ぶならボディ単体でどうぞ。本当はすごい機材持っているのに、こういうクラスのカメラでささっと格好いい写真を撮ってしまう。あこがれますねえ。

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キヤノン伝統の「はじめの1本」。フルサイズセンサーにも使えるレンズで、キットズームの望遠側に近い画角になります。少し狭いかもしれませんが、誰もが納得の永遠のスタンダードです。どうぞご安心を。

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1本だけつけて軽快に町歩きするなら、このパンケーキレンズがおすすめ。35mm相当という画角は広過ぎも狭過ぎもせず、ちょうどいいと思います。標準キットズームで、各焦点距離がどのぐらいの範囲を写せるのか、確認してみるといいですね。

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マクロレンズとは接写ができるレンズのこと。花や昆虫にぐぐっと寄って撮影してみるのは、純粋に面白いのです。本レンズは画角的にも使いやすいと思います。LEDライトもついた優れものですよ。

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こちらはちょっと焦点距離の長いマクロレンズ。接写に関しては、すこし長い距離を保てるこういったレンズのほうが使いやすいのです。どんな世界が写せるのか、レビューも併せてご覧ください。

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SDカードは速度と容量で値段が変わります。とりあえず32GBぐらいで十分ではないでしょうか。バンバン撮るようになったら買い増ししてください。

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カメラを手にしたら、レンズだけはしっかりクリーニングを。写りが悪いのは汚れのせいなんてこともありますし、うっかり傷つけてしまうこともありますので。こちらはアルコール式で使い勝手がよく、必要な分だけ持ち歩きできます。

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