PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Canon EOS R / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2 vol.3
キヤノンのシステムを旧F-1から何代も使い続けてきたユーザーとして、全く新しいシステム「EOS R」を、この価格とこの性能で出してきたことに驚きを感じました。そして、一番嬉しいことは、全てが新しくなったにも関わらず、Canonがフィルム時代から（この頃の描写への影響はレンズですね）一貫しているナチュラルでニュートラルなトーンと色作りが、しっかりと受け継がれていることです。描写の好みは時代によって変化してきます。ともすればそれに流されることが多いと思われますが、EOS Rの画作りは、まさに、The Canonでした。
( Photography & Text : A.Inden )
夏の終わりの色
南に向かって海がひらけている湘南は、夏の間は海岸線に沿って夕日が沈むため、海に落ちる夕日を狙ったり、夕方の少し柔らかくなった逆光で波しぶきの燦きを撮影するには、これからがベストシーズンになります。この日は風が強く綺麗な波が遠くの方まで立っていました。しばらく波の立つ場所と光の方向を考えながら海岸線をブラつき、ここかなと決めた場所に座り、後はいい時間になるのを待つだけと思っていると、ベストポジションと決めた場所に後からカメラ女子が2人。みんなわかってるなと見ていたら、カメラを向ける方向はバラバラ。どんな写真ができるのだろうとその方向を見ても…？だから写真って面白いんだなと妙に納得。慣れ親しんだ色味とトーンのカメラを持つと、安心感からか、ゆるゆるとした写真タイムを過ごすことができました。
レンズ遊び
上の5カットのうち2カットはEFレンズ、1カットはマウントアダプターを使って旧ヤシカ-コンタックスレンズ（ヤシコン）です。レンズのバリエーションが増えるのがミラーレスの良さですね。ただ、どこまでストレスなく使えるかは心配なところです。EOS Rは、純正のマウントアダプターを使うとAFはキビキビと、レンズの補正を設定しておけば、周辺の収差、色収差もRFからEFにレンズを変えた時に自動的におこなってくれます。ヤシコンは電気接点が無いため、レンズ無しレリーズ可能を設定してから使います。EVFでMFのレンズを使うのは遠近両用眼鏡をかけた身には辛いものですが、ピントピークが赤くなる設定が素晴らしく、開放でも迷うことなく合わせたい場所にピントを持っていくことができました。これで防湿庫に眠っている明るい開放値のレンズが復活できそうです。レンズの描写は、キヤノン同士の差はほとんどなく、ヤシコンでは物にまとわりつくようなトーンが表現されています。素直なThe Canonの描写であれば、個性的なレンズをそのままの雰囲気で楽しむことができますね。こんなところにもレンズ沼の入り口が…
拡大していただくと、波しぶきの美しさを感じていただけると思います。風と光がマッチすると、ブレイクする前の綺麗な波しぶきを撮ることができます。
伊豆半島に沈んでいく夕日です。夕日の眩しさを感じさせる写真を撮るのはかなり難しいのですが、柔らかい色味とトーンが見せる技か、写真なのに目を細めてしまうぐらいの眩しさを感じます。
上のカットとのレンズ違いです。こちらはRF24-105mm。上のカットも大三元と呼ばれているレンズですが、明らかに新しいRFレンズの方がきめ細やかな描写をしています。マウントが大きくなったなと思っていたのですが、ここまで明らかな差が出ると仕方ないと思えますね。
手ブレ補正と暗い場所でのAFの動きが明らかに進化しています。かなり暗い場所ですが、迷うことなくピントが合います。手ぶれ補正は50mm前後であれば1/6秒まではブレない感じです（1カット目の作例）。風景を止めながら遊具をブラそうとすると、三脚が必要と思っていましたが、もうそんなことはないですね。
高感度ISO 3200での撮影です。手ブレ補正がしっかり効いていると、これ以上の感度は一般的には必要ないと思っています。一番気にするところは、アンダー部分のノイズです。かなりアンダーなところにもノイズは感じられませんでした。特殊な環境以外では、もう感度のことは気にしなくていいと思います。
電球にほぼ露出を合わせても、周辺のシャドーの領域に色を伴った黒が広がっていきます。かなりアンダーな条件を色々試してみましたが、シャドーの階調はかなり広く、完全に潰れた黒を作り出すのが難しく感じたほどでした。
（サムネイル画像のクリックで大きな画像をご覧いただけます）
フィルムを変えるようにボディを変える。
ソニーが突っ走っていた35mmフルサイズミラーレスの世界にニコン、キヤノンが参入。ライカSLに加えMもEVFをつけるとフルサイズミラーレスの一員に。自分好みのレンズを自分好みのボディで使うことができる、そんな夢のようなことが、ついに現実になってきました。レンズの個性とボディの個性がコラボして新しい個性が生まれる。撮影者の意図を自由に表現できる時代の幕開けを感じます。「フルサイズでなくてもいいのでは」と感じる方はいらっしゃると思います。確かに今のレンズ設計はセンサーの大きさに最適に作られているのか、センサーサイズに関係なく素晴らしい描写をします。ただ、ちょっと良くなりすぎてるなと感じてしまうのです。贅沢を言ってるのはわかっています。でも、人の世界も優等生ばかりじゃ物足りない感じがしませんか。
35mmの規格が誕生して100年以上、様々なレンズが誕生しました。同じ焦点距離、開放値なのに全く違う描写をする個性的なレンズが世に溢れているのです。まるで宝箱のようでワクワクしますね。ただ、そのレンズの個性を味わい尽くすにはやはり35mmフルサイズが必要になってきます。35mmフルサイズの世界は敷居が高いと思われてる方、一歩踏み出せば新しい世界が開けています。「Canon EOS R」は新しい時代への一歩を踏み出す勇気を与えてくれるリーズナブルな価格。決めるのはあなたです。
このレビューを読んでレンズ沼を怖いもの見たさでのぞいてみたい方へ。たくさんありすぎて、これ一冊を紹介できません。もちろんコンプリートも可能。電子書籍ですと「この本じゃま」と言われないで済むと思われます。
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( 2018.11.09 )
驚きのコストパフォーマンス。「利益でるのかな」とPY編集部でも話題になっているらしいこの価格。。
日常のシーンならなんでも撮れる焦点距離、ブレない、ボケ味綺麗、シャープな描写。一本でいいと思わせるヨドバシ泣かせのレンズ。
RFレンズのようにレンズ側でカメラの設定をコントロールしたい方へ。
できるだけ安い価格でEFレンズを使いたい方へ。
レンズにつけていることがわからないぐらいの薄いレンズアダプター。