PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Canon EOS-1D X / SHOOTING REPORT

発売から少し経ってしまいましたが、EOS 1DXの実写レビューをお届けします。このクラスのカメラは、プロユースは勿論、写真に入れ込んでいる方々には重要な"道具"そして"相棒"でしょう。既に多種多様なレビュー記事が出回っていると思いますが、評判云々関係無しにオーダーされる方も多いのではないかと想像しています。従来機である1Dsに比べれば画素数は減り(といっても、現実的に過不足の無い画素数)、1Dのスピードを兼ね備え、そして特性で分けられていた従来機2台が統合されたことは、事前に知らされた諸元を見れば明らかです。これまでのデジタルカメラの趨勢を鑑みるに、画素数の積み増しに躍起になっていた時代があり、高感度特性の向上を始めとする少し脇に置かれた要素の磨き込みが進んだ時期が訪れ、そして本当の意味でハードとソフトが高度にシンクロし、デジタルカメラの可能性を更に拡げつつある昨今、単に1Dsと1Dを統合しただけとは考えづらいですよね。このあたりの具合を探ってみたいと思います。

( Photography : A.Inden / Text : K )

粗を探す方が難しい、会心の出来

まずボディを握ってみると、従来機に比べて内に向かっていくような凝縮を感じます。少し難解な表現かもしれませんが、従来機が型枠に流し込んで作られる「鋳造」とすれば、1DXはまるで圧力をかけて鍛えた「鍛造」のような印象。「パーツとパーツを組み合わせてこの姿・重量となりました」というよりも、全てが逆算で、極めて高精度に磨き込まれたパーツ達がぎゅっと固められている、そんな印象なのです。それでいて重量を感じさせない。実際の重量と、いわゆる「重量感」とは別物だったりしますが、ここが食い違うボディは極端に良いか悪いかのどちらかのような気がします。何が良いか悪いか、それは"道具"としての善し悪しです。1DXを握った瞬間「お、これは獲れる(撮れる)な」といった確信を与えてくれるのですね。これは画も期待できそうだと直感しましたが、予想通りの仕上がりでした。ピクセル単位で感じる解像力、加えてあくまでナチュラルな階調再現力。これらが同居するのですから、画のレベルが1枚も2枚も上がった印象です。まずは、画のキレ(解像力、そして他の要素とのバランス)から見てみたいと思います。こちらをご覧ください。上のカットの100%クロップです。曖昧さを感じない切れ味を感じます。従来機をお使いの方なら、少し驚かれるのと同時に感慨深いものがあるのではないでしょうか。1DXはローパスフィルターが搭載されていますが、ローパスレス機と比較しても遜色ない描写であり、実に上手くまとめられた描写だと感じます。おそらくカメラを構成するパーツの中でも、かなりコストのかかるパーツと推察できますが、注ぎ込まれる開発リソース、そしてパーツそのもののコストもフラッグシップがフラッグシップであるためのものでしょう。幾つか作例を並べてみますので、1ピクセル単位の素性の良さを感じていただければと思います。

最近レビュー記事を書いていて懐かしいなあと感じるのが「実感的な解像力」についてです。ベイヤー配列の600万画素クラスが搭載されていた頃は、遠景の細かな被写体を解像しきれず、不自然な描写で、まだまだフイルムの描写に遠く及ばないと感じたものです。この頃は"実質的に"解像力が不足していました。しかし気がついてみれば、ここ数年の間に35mmフイルムの解像力を実質的に越えてしまった感があります。最近は単に解像するだけではなく、"実感的"にも越えつつあるのではないかと思うのです。無理矢理に解像するだけだったり階調再現性が乏しかったりすれば違和感を覚えるものですが、最近は解像力もありつつ、なおかつリアリティも伴ってきたように感じます。リアリティを支えるのはラインのエッジ感だったり、階調再現性と密接に絡むコントラストの付き方だったり。実にうまくまとまりつつあるなと感じるのですね。面白いのが今フイルムの画を見ると「甘さ」を感じたりします。でもそれは解像力という一面だけ切り取っての話であり、相変わらずトータルで見れば説得力のある画です。そもそもデジタルとフイルムはまるで違うものですが、上の作例のようにカリっと写る印象のデジタルと、フイルムの甘い雰囲気の融合というか、そんな進化をかえって予感させてくれる、それほどよく写るなあと感じるのです。

ベランダの欄干、窓ガラスを支える桟を克明に写し込むこの実力。ガラスをガラスと感じさせ、ドンと落ちた影、手前の反射の写り込みと、解像力だけでも、階調再現力だけでも成り立ちません。レンズの力も大きいと思われますが、スカっと抜けのよいこの描写。
カメラがガンガンに進化して、かえって自分のスキルの甘さが克明に写り込んでしまいそうです。

高原特有の抜けた空気感、コントラストを生む光がよく再現されています。F4での撮影のため、ピント前後は少しフォーカスを外れますが、ピントピーク付近の解像力は素晴らしいですね。単に解像するだけではなく、きちんと芝が一つ一つ明快に分離しています。


湿度が写る階調再現力

さて、次は階調再現についてお届けします。5D MarkⅢのレビューの際にも同じ事を感じましたが、階調再現性も一皮むけた印象です。従来機が少し距離のある被写体であれば、なんとなく様々な要素が一体に見えてしまうような印象でしたが、近くは近くに、遠くは遠くに、曲面そして被写体の質感と、それらが明快に写り込む印象です。言ってみればメリハリを感じる描写なのですね。そもそもメリハリとは豊潤なデータがあってこそだろうと個人的には感じます。従来機から比べて格段に素となるデータ量が増えたわけではないわけで(むしろ画素数は対1Ds MarkⅢから減っている)、しかしメリハリを感じさせるのですから面白いものです。推察に過ぎませんが、効率的なデータの取り出し、加工、そしてそれらを並べることが高効率化したのではないかと感じます。搭載されるハードの進化や、それらを動かすロジックの洗練化で、もう1段そしてもう1段と画作りを追求する余力が生まれ、この階調再現性のよさに繋がっているのかもしれません。もちろん、これまでだって階調再現性を追ってないはずがありません。たゆまぬ開発と努力の積み重ねが、この画を実現するに至っているのだと思います。1DXを手に入れられて、はじめて画を見つめれば、同じように一皮むけた印象を持たれるのではないかと思います。

女性の背中に夏特有の空気を感じます。それもまとわりつくほどの湿度ではなく、かといって乾いてはいない。幾分過ごしやすい湿度ですが、それでも少し重さを感じる空気です。入れ込んで撮っている方ほど、こんな描写が欲しいのではないか、そう感じる1枚ですよね。

分かりやすい作例です。べつに濡れているわけではありません。しかし触れば湿り気を感じるこの環境。実に上手く再現されています。もっさりと写りそうで、少し前なら悩みながらファインダーを覗くところです。デジタルカメラの特性を考えればシャドー側の再現力を活かして極力ローキーに振って、後から持ち上げるなんてことを考えるのですが、画面なりの露出決定のみでストレートですから、大したものですよね。フイルムなら中判で捉えたいシーンなのですから。


「地力」を感じさせる振る舞い

「ノイズ感少なく写りました」というだけではない、高感度時の写りのよさを感じました。どちらかというとモデルチェンジのサイクルの関係から、ミドルクラスのデジタルカメラの後塵を拝していた印象です。1Ds MarkⅢと5D MarkⅡの2台持ちだった方も多いのではないかと想像します。しかし、1DXの高感度時の描写はナチュラルで好感が持てるものに仕上がってきました。こんな感度まで撮れるの??といった超高感度でも、単に写るだけの非常用というよりは、どうしてどうして、かなりよい印象です。ホワイトバランスのよさには定評のあるEOSシリーズですが、たとえば作例のようにタングステン光下の写りも、人によって感じ方の違いはあると思いますが、よりナチュラルになった印象です。ほどよい補正具合であり、何よりこの微妙なチューニングにまで力を注いできているとの印象を受けることが素晴らしいと感じます。ああ真剣に作り込んできてるんだなと。当たり前なのですが。。。これだけ日々色々なカメラに接していると、極端で偉そうな物言いですが、開発陣の方々の温度まで感じてくる気がします。恐らく気のせいですが。。。

フイルム時代から考えれば、ISO6400で撮影できること自体が驚きですが、縮小しているとはいえこの仕上がりです。ちょっと嬉しくなりますよね。単にノイズを塗りつぶすだけなら、猫の髭がここまで再現されません。レンズも優秀ですが、絞り開放で、もっと細かな身体の毛並みまで再現されているのですから、十分でしょう。

さらにISO12800。もちろんノイズは感じるのですが、ここまで写ると、撮れる世界の枠がグンと外に拡がっていきますよね。さすがに階調の滑らかさは落ちてきますが、それでも「記録のための非常用」というレベルではありません。


文字通り満を持した、フラッグシップらしいリニューアル

1Dsと1Dを一本化させることができる素地ができた。だからこそ1DXが生まれた、と言葉面にすればそういうことなのでしょうけれど、これは凄いことだと思うのです。少なくとも仕事でこのカメラを掴み、極端な用途を除いて、おおよそ撮れないシーンが無いと感じてしまいます。しかも、いろんな要素が高次元に結実し、叩き出す1枚の画の説得力が1枚も2枚も上がった印象です。げんきんなもので、筆者を含めて多くの皆さんにとってあまり必要であるとは感じられませんが、これだけの仕上がりを見せられるとかえって「これの高画素版はいつ出るの?」とさえ思ってしまいます。作例撮影を担当したカメラマンが「さすがに難しいよ」とこぼしていました。この万能感を如何に伝えるか、そういう意味でしょう。それはつまり、確実に仕事をしてくれる、あとは貴方次第だ、そんなカメラに仕上がっているということでしょう。待ちわびていた皆さんを満足させてくれるカメラに仕上がっていると感じました。また、いまミドルクラスをお使いになっている皆さんも、逆に画素数がダウンするこのカメラの世界そして存在をぜひ覗いてみてください。メーカーがいまベストと考える一台をリリースし、この仕上がりです。また、ボディのキレ、ファインダーの見えなど、フラッグシップならではの世界があります。このカメラでこそ見えてくるものをぜひ体験してみてください。

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暑苦しいレビューなんて書かなくても・・・もの凄いオーダーを頂きまして、手に入れられる予定の方は、まずご予約を。商品確保に全力を尽くします。

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バッテリーは大変よく持つ印象ですが、ぜひスペアも。

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GPSがあれば、ロケハン後のロケーション特定など結構便利です。

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ワイヤレス?なんて感じる方こそ、一度お使いになってみてください。

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