PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
3群4枚目 「単」とは言え複雑で奥深い
やっぱり単焦点が好き
単焦点レンズの設計だってむずかしい
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前回、ズームレンズを設計するむずかしさをひとことで言うと「登場人物が多いこと」と言われていたけど、じゃあ単焦点レンズはどう? ひとことで言えばどこがむずかしいのかしら? |
答えは簡単です。それは「登場人物が少ないこと」です。 |
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ん? どういうこと? 矛盾しているように聞こえるけど。 |
単焦点レンズでは大きさなどの兼ね合いでズームレンズほどレンズ枚数を使えませんが、レンズが少なければ少ないで、これまたむずかしいんですよ。 |
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雑だなあ。もう少し詳しい説明をお願い。 |
たとえば、仕事であるプロジェクトが生まれたとします。それを20人で進めるのと、5人で進めるのとでは、ゴールは同じだとしても仕事の進め方はまったく違ってきますよね。さあ、どっちが簡単だと思いますか? |
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人数が多ければ、細かく役割分担をして、着実に仕事を進められるよね。 |
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その代わり、まとめ上げるのが大変。意思疎通もしづらくなるし。 |
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まさにそれがズームレンズ設計のむずかしさだったでござるな。 |
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一方、人数が少ないと意思疎通はしやすいけど、一人一人の守備範囲を広くして仕事を進めなきゃいけない。つまり1枚のレンズに求められることが多くなる。 |
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それもまた大変だよなあ。 |
要するにどっちも、それぞれむずかしさがあるんですよ。 |
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相変わらず雑だけど、なんとなく分かった。 |
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結局、ずーっと大変なお仕事ってことですね! レンズの設計って。 |
そんな、身も蓋も無い言い方を・・・その通りですが・・・それに加えてレンズの「キャラ」も、単焦点レンズでは大事な要素になってきます。 |
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「キャラ」というと? |
ズームレンズの性能がこれだけ良くなっても、依然として単焦点レンズが好まれ、使われ続けている・・・そのいちばんの理由は、「いろんなキャラを味わえること」だと思うんです。 |
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逆に言うと、ズームレンズにはキャラはない、ということでござるか。 |
いやいや。どんなレンズにもそれぞれのキャラがあって然るべきですし、われわれもそういう考えのもとにすべてのレンズを設計しています。ただ、ズームレンズは使われ方がオールマイティですよね。 |
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それ1本でいろんなものを撮るためのレンズですからね。 |
そういう使われ方をするレンズだと、強いキャラは却って邪魔になります。 |
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その点、単焦点レンズは・・・ |
キャラを立たせちゃってOK。それがあえて単焦点レンズを選ぶ最大の理由でしょう。「小さい」「小さい割に明るい」のが単焦点レンズの長所。それだけでも単焦点レンズを選ぶじゅうぶんな理由になりますけど、「キャラ」はさらにその向こうにある、個々のレンズが持つ個性のこと。 |
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つまり、単焦点レンズはズームレンズに比べて、より「趣味性が高い」という言い方ができるのかな? |
そうですね。もちろんキャラにもいろいろあるわけですが、その中からじぶん好みの1本を探し出して長く愛用する。そのレンズでしか得られない写りを愛でる。そんな出会いができたら写真を撮る者として最高じゃないですか。レンズを次から次へと買ってしまうのだって、結局その「出会い」を求めているわけです。 |
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なんだか、ずいぶん美しい言い方をしたなー。 |
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設計する時には、どんなキャラを目指すのでござるか。 |
それはレンズによっていろいろです。せっかく世に出すなら「愛されキャラ」で、みんなに愛されて幸せになって欲しいのが親心ですが、でもそれだけじゃつまらない。使っているうちにだんだん良さが分かるキャラもあるし、殆どの人には理解されないけど、一部の人からは大絶賛されるキャラだって必要。 |
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面白い。人間と一緒ね。 |
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原田さんが個人的に好きなレンズは、最後のやつでしょ? |
え? なんで分かったんですか? |
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この期に及んでその逆質問がすごい。 |
まぁ、あくまでも商品ですから、実際にはあまりアバンギャルドなレンズは作りづらいですけどね。でも本当は写りの選択肢を思いっきり広げて、「こんな不思議な写りをするレンズもあるのか!」と驚いたり、あるいはこちら側から「もしかしてこんな変わり種レンズお好きじゃないですか?」って提案できるのが理想ですよね。 |
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つまり、まとめると? |
えーと、何でしたっけ? あ、そうそう。つまり、少ない人数で仕事を進めつつ、最終的には狙い通りのキャラを発揮させないといけないのが単焦点レンズの設計のむずかしさということです! |
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- 1群1枚目 設立趣意書
- 2群1枚目 凸に始まり、凸に終わるのであります。- レンズとは、なんじゃらほい
- 2群2枚目 だから「収差」というのです。- とっても収まらない話
- コラム:原田研究員からのメール - 「例のレンズタイプの件」
- 2群3枚目 焦点距離のナゾ- それはいったいどこからどこまでじゃ
- 2群4枚目 エフチの「チ」 - あの数字の並びはいったいどこから来たのか
- 2群5枚目 ガラス作りとコーティング - レンズの要を忘れるべからず
- 2群6枚目 謎の写真用語・説をめぐるアレコレ - あなたは「でっこまひっこま」を知っているか
- 2群7枚目 続・エフチの「チ」 - レンズの開放F値ってどうやって決まるの?
- 3群1枚目 レンズ設計ことはじめ - 設計者の描く理想とは
- 3群2枚目 シミュレータと設計者 - 完成レンズを見通す、見極める
- 3群3枚目 ズーム再考(最高) - そもそもは航空用語だったらしいです
- 3群4枚目 やっぱり単焦点が好き - 「単」とは言え複雑で奥深い
- 3群5枚目 続・やっぱり単焦点が好き - レンズに込められた設計者の想い
- 3群6枚目 「商品企画」というお仕事 - 商品が生まれいづるところ
- 3群7枚目 試作のプロフェッショナルたち (前編) - 設計図と完成品のはざまで
- コラム:原田研究員からのメール - 「交換レンズは3本まで」という法律について
- 3群8枚目 試作のプロフェッショナルたち (後編) - ものづくりの最終工程で行われる試作とは
- 4群1枚目 Zマウントはこうして生まれた - 100年間変えられないことを、考えて、決める
- 4群2枚目 フード首脳会談 - レンズ設計のその果てに
- コラム:原田研究員からのメール - レンズの楽しみ方案内