PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SORI - 新宿光學總合研究所

  • 本稿は、写真用レンズについてより深い理解が得られるよう、その原理や構造を出来る限り易しい言葉で解説することを目的としています。
  • 本稿の内容は、株式会社ニコン、および株式会社ニコンイメージングジャパンによる取材協力・監修のもと、すべてフォトヨドバシ編集部が考案したフィクションです。実在の人物が実名で登場しますが、ここでの言動は創作であり、実際の本人と酷似する点があったとしても、偶然の一致に過ぎません。
  • 「新宿光学綜合研究所」は、実在しない架空の団体です。

2群2枚目  とっても収まらない話
だから「収差」というのです。

よん、さん、はち、ろく
よん、さん、はち、ろく
ハッキリ決めた・・・♪

うわー、懐かしいメロディですねえ。でも所長、なんか違いますよ。出だしは「よん、いち、にい、ろく」でしょう。「ヨイフロ」ですから。(※)

※ かつてテレビで盛んに流れていた、伊豆の観光ホテルのCMですが、もしかすると関東地方限定だったかもしれません。まぁご存じなくても記事を読み進める上でぜんぜん重要なことではないので、気にせずスルーしてください。

町田
馬橋所長

あら、私としたことが。どうして「よん、さん、はち、ろく」なんて歌っちゃったのかしら。ああ、わかったわ。私最近、祖父から「ヨンサンハチロク」と呼ばれるレンズをもらったのよ。きっとそのせいね!

わ、わざとらしい・・

町田
馬橋所長

町田さん、ヨンサンハチロクをご存じ?

当然じゃないですか。日本のレンズ史上に燦然と輝く金字塔ですよ? ニコンが1963年に世に出した国産初の標準ズームレンズ、「Zoom-NIKKOR Auto 43〜86mm F3.5」のことです。

町田
馬橋所長

なんだ、知ってるんだ・・

もう写真を撮ってみましたか?

町田
馬橋所長

撮りましたよ。ええ撮りましたとも。マウントアダプターも買って、私撮ってみました。

で、どうでした?(ニヤリ)

町田
馬橋所長

それがねえ・・ちょっとこれを見てくださる?

海の写真

ああ、海ですね。よりによって。

町田
馬橋所長

ええ。私、海に参りましたの。そして水平線の向こうにムクムクと沸き立つ、真っ白な雲を撮りましたわ。

地球って実は丸くなかったことがよく分かる、いい写真です(笑)

町田
馬橋所長

いやいや、地球は丸いって。でもこれ、逆に海が凹んじゃってますよね。肉眼ではこんなふうに見えなかったんですけどね。

所長、これは歪曲収差と言いましてね。

町田
馬橋所長

ワイキョクシューサ。ワイキョクシューサ。

どうして2回言ったんですか。

町田
馬橋所長

不思議な響きなので唱えてみました。で、なんですか? その歪曲収差というのは。

呼びましたか? 今、収差という声が聞こえましたが・・・

原田

いいえ。呼んではいませんが、居てもらっても構いません。

町田
馬橋所長

私がヨンサンハチロクで撮ったこの写真を見て、町田さんが歪曲収差だと言うんですよ。

ヨンサンハチロク! そりゃまた・・・どれどれ・・・おお、これはこれは。このレンズらしい、実にいい歪曲収差ですな。

原田
馬橋所長

こっちの写真も見てください。

夜景の写真

これも、よりによって夜景ですか。もしかして、知っててやってるんじゃ・・

町田
馬橋所長

ほら、この、左側にあるビルの明かりがなんだかハレー彗星がいっぱい落ちてきたみたいになってるでしょう。

夜景の写真

これはコマ収差ですね。

原田
馬橋所長

コマシューサ。コマシューサ。

レンズのカタログなんかを見ると、「収差」という言葉がたくさん出てきますよね?「収差を補正した」みたいな書き方で。

町田
馬橋所長

見たことがあるような、ないような・・・

1号

例えばウィキペディアで「収差」の項を見ると、こう書いてありますね。

収差(しゅうさ)

収差とは、望遠鏡や写真機等のレンズ類による光学系において、被写体から像への変換の際、幾何的に理想的には変換されずに発生する、色づきやボケやゆがみのことである。

「収差」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2022年8月22日 (月) 14:56 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org

馬橋所長

なるほどー、そういうことかー。

ぜんぜん分かってないですよね。

町田