PHOTO YODOBASHI

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SONY SAL100M28 100mm F2.8 Macro vol.1 vol.2

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

マクロレンズというと被写体に接近した画を切り取るための道具と思われがちですが、そのキレのよい描写を、100mmの中望遠レンズとして捉えるシーンにも積極的に活用していただきたいところ。今回は、ソニーのデジタル一眼のフラッグシップ機であるα99と組み合わせ、F2.8という比較的明るい開放値を活かした撮影を中心に、センサーとレンズがどのような画を紡ぎだすのかを、実際の作例を交えながらご紹介いたします。

( Photography : T.Takahashi / Text : KIMURAX )

早速、絞り開放からですが、フォーカスした家紋をあしらった鬼瓦周辺の屋根をキリッと解像。銅製と思われる鬼瓦の下から緑青(ろくしょう)が出てきた錆染みをしっかりと捉えています。その軒下のシャドーエリアもきちんと粘って描写しており、組まれた木に彫りこまれた装飾の古ぼけた質感が伝わってくるようです。絞ればさらにキリっとしてくるのですが、共連れに奥の屋根の解像感まで上がってしまい、せっかくの風情が削がれてしまいます。この絶妙な柔らかさを伴った開放の画に、ついつい感じ入ってしまいます。

微妙に光を反射し、方や吸収する箇所が混在する石畳。無数の細かな凹凸、そこから生じる陰影までつぶさに捉えているのがわかります。

曖昧な描写では、もさっとした印象になってしまいがちな木々ですが、F5まで絞り込めばこのとおり。隅々までクリアに描き込んでいます。2000万画素超のセンサーを活かすべく、レンズがしっかりと解像しているからでしょう。

品のある、ふわっとした柔らかいボケ味。フォーカスエリアとボケが重なっているところにも、ベタッとした輪郭は現れずに、自然な風合いでボケが重なっています。

マクロ撮影のど真ん中といった被写体で。ぺたっとくっついてきそうな臨場感のある花粉と、それをそっとかき消すかのようなボケ味が美しいですね。絞り開放では僅かに見られた周辺落ちも、このように1段絞っただけで解消されています。

ブレーキのロゴ周辺にある細かいキズまでもつぶさに描き込んでいます。さすがはマクロレンズの緻密な描写。絞り開放からここまで再現してくれるのですから十分使っていけます。ブレーキパッドの質感にもぞくぞくさせられます。

こういう構図で撮ると、フォーカス部分からなだらかにボケが発生している様子がわかります。どことなく柔らかさを感じさせてくれる開放の描写が、古ぼけた被写体にマッチしています。


開放F値2.8のマクロレンズですから、絞り開放から適度な解像感と良好なボケ味を伴って印象的な画に仕立ててくれるという印象でした。α99にはレンズ補正機能(周辺光量補正、倍率色収差補正、歪曲収差補正)が搭載されていますが、100mmという焦点距離は比較的に素直な描写なので歪曲収差補正は不要でしょうが、絞り開放で周辺光量落ちが気になるようなときに補正できるのはいいですね。絞ったときのキレと、開放したときの柔らかさ(決してユルイというわけではありません)。1本で2度おいしい?本レンズが結ぶ像と、それを受け止める余裕あるセンサーとが生み出す多彩な表現を、我が編集部のカメラマンも最初は手探りながら、なんだかんだと結局は楽しんだ様子(笑)。試してみる価値ありです。