SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

シグマからAPS-Cフォーマットのソニーαシリーズ向けとなる大口径標準レンズ「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」が登場しました。フルサイズ換算27-75mm相当となる本レンズは、ハイエンドの標準ズームレンズと同じズーム全域F2.8を実現。しかも、扱いにくさを感じさせない小型・軽量なサイズを実現し「常に持ち歩ける標準ズーム」として仕上がっています。実物を手にすると「これでF2.8 !?」と分かっていても驚かされるサイズ感です。最大径：65.4mm × 全長：74.5mmというのは、コンパクトな大口径標準レンズ「SIGMA 30mm F1.4DC DN | Contemoporary」とほぼ同寸。重量も290gと350mlの缶ビールよりも小さく軽量です。これは写真撮影時の振り回しやすさに加え、動画撮影時のジンバル選択の幅を広げてくれる有り難いポイント。AFには高速かつ正確に動作し、静音性も高いステッピングモーターを採用しています。レンズ構成は10群13枚。高精度なグラスモールド非球面レンズを3枚、特殊低分散ガラス（SLD）も1枚採用し、写りにも妥協がないとのこと。最大撮影倍率1:2.8のマクロ撮影も行えることも嬉しいポイントとして付け加えておきましょう。それでは実写レビューをご覧ください。

( Photography & Text : Naz )

本レンズに組み合わせたのはSONY α6500。バッテリー込みのボディ重量は453g、本レンズと組み合わせても743gとフルサイズのシステムでは得られない軽快感。いつでも持ち歩けるからこそ、シャッターチャンスに強くなれるのです。新鮮な野菜の瑞々しさもご覧の通り。メリハリある見栄えのいい写りとボケ味のよさを巧みに両立させています。

最新レンズの写りを見ていると「遠景は絞って」という考え方は改めないといけませんね。ご覧の通り開放からこのキレです。青空を反射した窓ガラス、そして窓枠の金属と、それぞれを緻密で丹念に描いています。

緑の中に浮かぶレストラン。日中でもかなり暗い条件です。スリムな本レンズには手ブレ補正機構を備えていませんが、α6000系の最新のボディには、手ブレ補正機構が搭載されていますので心配は無用。ワイド端での撮影ですが、解像力もありますね。前後の配置がよくわかる立体感ある描写です。

小さく軽いと「これほど軽快に振り回せるのか」と撮影しながら、出番の限られるフルサイズ用F2.8通しの標準ズームレンズを思い浮かべてしまいました。標準ズームを既に持っていても、この軽快感は他のレンズでは得がたいものですから、物欲を強めに刺激されてしまいました。広角から中望遠までの常用域をカバーする標準ズームレンズは、単焦点レンズよりフレームを追い込んで撮影しやすいため、速写性の求められるストリートスナップでもフレームに緩さのない画が撮れ、重宝するレンズです。

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緻密で情報量が多い描写です。傘の布地、床の石材等、異なる素材の描き分けも巧いです。

テレ端の中望遠、フルサイズ換算75mm相当とさほど長くはありませんが、望遠レンズらしい圧縮効果。咄嗟に階段を降りる人物へフォーカスを合わせましたが、徒歩の速度では何の問題もありませんでした。

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冒頭に書きました通り、接写にはとにかく強い。テレ端ならばワーキングディスタンスも確保しやすく、大輪のバラも程よい大きさに整えやすいです。背景の木々は殆ど溶けています。1/3段絞っていますが、7枚羽根の円形絞りにより、ボケ玉の形状は大きく崩れていません。

実際にどこまで寄れるのか同じ被写体で試してみました。まずは石材の地面に落ちていた枯れ葉を自由に撮影。中間距離の50mm相当の画角でフレーミングしています。シャープなレンズながら、ボケは煩くないよう整えられている印象です。撮影時、葉の縁に青色の収差がごくわずかに見えましたが、ボディでの補正を「オート」に設定しておけば、しっかりと消してくれました。乾いた葉の質感再現も優秀です。

• こちらはテレ端の最短撮影距離（0.3m）。F4.5まで絞りましたが、十分なボケ量が得られています。被写体までの距離は鏡胴先端からの18.5cmと、しっかりと迫りつつも撮りやすいワーキングディスタンスを得られました。
• こちらはワイド端での最短撮影距離（0.12m）。最大撮影倍率は1：2.8。センサー面から12cmですから、レンズ鏡胴の先端から被写体までは約2.5cm。指1本が入る程度、フードを外さないと先端がぶつかってしまう程です。こちらもF4.5まで絞りましたが、さすがに中心部以外は放射状に流れるように像が崩れています。撮影に支障を来すレベルの寄り具合で、実際にはもう少し離れて撮るのが現実的です。

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本レンズは歪曲収差や色収差をカメラ側で電子補正する前提のレンズとなっています。撮影時のファインダー像には補正されていない像が表示されますが、それによれば色収差は電子補正なしでも良好に抑えられている一方で、歪曲収差はしっかりと認識できる程度に大きく出ていました。撮影ではカメラ側の補正を「オート」に設定していましたので、ご覧の通り歪曲収差も全く気にならないレベルに補正されています。

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αシリーズAPS-Cボディにジャストフィット
抜群の軽快さを持ちながらも性能に妥協なし

素晴らしい写りのレンズでした。そして困りました、買わない理由が思いつきません。ヨドバシ.comでのプライスは66,000円（記事執筆時）と実質6万円を割り込むお求めやすい設定。本当に買わない理由が見当たりません。。本レンズは樹脂製の鏡胴となっていますが、塗装を含め質感はArtラインに劣ることなく、またズームリングの均一で適度な重さについてもよくチューニングされ、ビルドクオリティも良好です。Artラインでお馴染みのAF/MFの切り替えスイッチやフォーカスホールドボタンは省略されていますが、作例撮影時にMFへ切り替えたのは最短撮影距離で撮影した時のみ。ボディ側にはカスタムボタンが豊富に用意されていますから、レンズ側になくても困ることはないでしょう。

APS-Cフォーマットの「α」にジャストフィットするサイズ感はまさに絶妙。群を抜く軽快さはあなたが撮る世界をも変えてしまうかもしれません。そう感じてしまうほど振り回すのが楽しいレンズでした。できることなら、フルサイズセンサーを採用するボディをお使いの方にもこのよさを知っていただきたい。 特にα7R系の高画素機なら、約半分にクロップされても画素数が不足することはないでしょうから、数多ある標準ズームのダークホースとして、選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。

( 2021.11.08 )