PHOTO YODOBASHI

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SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/500, F1.8, ISO 125, Photo by TAK

SONY RX100 V / SHOOTING REPORT

1インチセンサー搭載コンパクトカメラのパイオニアである、ソニーRX100が誕生してから早いもので4年半の月日が経ちますが、いよいよ第5弾となるRX100 M5がお目見えしました。初代モデルから最新のM5までが今もなお併売され続けている(本原稿の執筆時点で)というところが、このRX100シリーズのユニークなポイントでもあるといえるでしょう。シリーズの進化・洗練と同時に、選択肢の拡充が着々と進められているわけです。今回、直近のモデルであるRX100M4からの変更点で目玉となるのが、「AF性能」と「高速連写性能」の向上が挙げられます。外観的には一卵性双生児と言ってもいいほど、基本的なデザインを踏襲。外寸は変わらず、重さが1g増しただけですからね。単体で見せられたら一瞬見分けがつきません(笑)。さて、話を戻すとAFは位相差AFとコントラストAFを組み合わせた「ファストハイブリッドAF」を新たに搭載し、AFポイントは315点で広範囲をカバー。AF速度はなんと0.05秒!高速連写は最高約24コマ/秒(RX100 M4は16コマ/秒)へとアップし、条件次第では150枚までの連続撮影も可能というのですから、シャッターチャンスへの対応力の高さに期待も膨らみます。というわけでこれらのトピックスはもちろんのこと、描写性や使い勝手などに関しても今一度確かめるべく秋の京都へと繰り出しました。

( Photography : TAK / Text : KIMURAX )

SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/50, F2.8, ISO 125, Photo by TAK

SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/400, F2.8, ISO 125, Photo by TAK

1インチセンサーによる高画質は揺るぎない価値

携帯性に優れた、幅101.6mm×高さ58.1mm×奥行41.0mmというコンパクトなボディながら、これだけ緻密な画を持って帰ってくることができるシアワセ。初代RX100から脈々と受け継がれる、1インチセンサー搭載のコンパクトカメラというコンセプトの賜物です。"コンデジ"という括りで考えると、まさにトップクラスの描き込みですね。上の2カットは共にフルサイズ換算50mm相当付近での撮影。それなりに被写体との距離もありますが、建物の細工ひとつひとつの造形やそれらの微妙な色合いの変化まできちんと再現しているのがわかりますね。質感を伴いながらの立体感ある仕上がりからは、センサーサイズによる懐の深さみたいなものを感じずにはいられません。またしっかりとした色乗りも、シリーズを通して感じられる美点だと個人的に思います。もちろん24-70mmをカバーするZEISSレンズや画像処理エンジンのアビリティが好影響をもたらしていることはあえて言うまでも無いでしょう。

SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/100, F4, ISO 125, Photo by TAK

輝度差の大きいシーンでも明暗バランスよく表現していますね。カメラ側の適正露出からアンダー方向に振ってあげると、雰囲気のよさがさらに増してくるという印象です。


俊敏にして的確なAFで狙ったものを逃さない

コントラストAFのRX100 M4に対し、本機は位相差AFとコントラストAFを組み合わせた「ファストハイブリッドAF」を搭載しています。像面位相差AFセンサーを用いたことで、フレーム内の約65%をカバーする315点のAFポイントで被写体をキャッチ。これにより動きのある比較的に小さな被写体にも迅速に対応できるわけです。画像処理エンジンはBIONZ Xで、新開発の「フロントエンドLSI」を今回新たに組み合わせたことにより、さらなる高速処理を可能にしているとのこと。冒頭でも触れたとおり最大画素数での高速連写は最高約24コマ/秒。ご覧のように、躍動感ある鳥の羽ばたきだってビシッと捉え続けてくれます。拡大して見ても、重なり合う羽の様子まできちんと描写。これならどんな被写体だってガンガン狙えるぞと思わずウキウキしてしまいますよね。同じく連続撮影モードは「Hi」のままで、画質の「ファイン」を選択すると、なんと150枚までの連続撮影が可能になります。SDカードの容量はガンガン喰うものの、数打ちゃ当る的な発想でいくと、快心のカットがいとも簡単に手に入れるなんてことも!!(画質はエクストラファイン/ファイン/スタンダードの3段階)。俊敏にして的確な描写は、こういった連続撮影カットが視覚的にわかりやすいので掲載していますが、一枚一枚を丁寧に撮影する際にだってその恩恵を享受できます。シャッターを切ろうとする撮り手の気持ちにシンクロするかのように、すかさず反応してくれる心地よさ。そして仕上がりのよさに思わず口元も緩んでしまうというものです。


SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/200, F1.8, ISO 125, Photo by TAK

可動式液晶モニターを使い、ワイド端(フルサイズ換算24mm相当)にて撮影。絞り開放ですが、水分をたっぷりと含んだ石畳の質感を見事に捉えています。石畳の中央から下部にかけてマゼンダとシアンが色被りしていますが、この程度であれば画像処理ソフトでも十分に対応できるのでご安心を。とはいえ、こうして見ると画の雰囲気を台無しにするようなものではないですし、偶然の産物をそのまま活かすのもアリだと個人的には思います。


SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/200, F2.8, ISO 125, Photo by TAK

ワイド端でも開放寄りで被写体に寄れば、背景もかなりボケてくれます。ハイライト部分も煩雑にならずになかなかいいボケの傾向だと思います。そして肝心のピントピークのキレは上々。一般的なコンパクトデジカメでは、こういった画にはなりませんよね。

SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/320, F2.8, ISO 125, Photo by TAK

有効画素数は約2010万画素。ススキの葉先から穂先までしっかりと解像しています。

SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/30, F2.8, ISO 125, Photo by TAK

目の前にあるかのような玉ねぎと長ネギの存在感。色乗りのみならず、ひとつひとつの姿形から質感までをも見事に描ききっています。リアルすぎて、思わずゾクッとしちゃったのは私だけでしょうか?このカメラを手にすると、今まで気にも留めなかったような光景や物まで思わず切り取ってみたくなるはずです、きっと。

SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/160, F2.8, ISO 1600, Photo by TAK

高感度のチェックでISO 1600にて撮影。髪の毛一本一本からジッパーのギザギザまで崩れは見られません。シャドーエリアのノイズもほとんど気にならないので、安心して常用できるレベルといっていいでしょう。フロントエンドLSIを組み合わせた画像処理エンジンBIONZ Xの効能が良好なノイズコントロールにも現れているのがわかります。

SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/60, F2.8, ISO 400, Photo by TAK

APS-Cやフルサイズのような大きいセンサーではないので、テレ端での撮影ですがボケ量はこのぐらいになります。よくよく見ていくと小さな点光源がリング状になっていますね。ズームレンズですので、条件次第というところもあるでしょうから、一応ご参考にまでということで。

SONY Cyber-shot DSC-RX100M5, 1/250, F2.8, ISO 125, Photo by TAK


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スピードという武器を手に入れたフラッグシップモデル

撮影していてとにかく気持ちのいいコンパクトカメラでした。以前にRX100 M4を使用した際、いろいろな動作において特にストレスを感じるようなことは正直なかったものの、本機のサクサク感はさらに次元が上がったと感じさせるものがありました。撮り手の気持ちに呼応するかのような動作をみせるので、使い始めるや否やもうこれが当たり前という感覚でテンポよくシャッター操作が進んでしまうのです(笑)。作例カットでは伝わりにくいので掲載はしておりませんが、カメラマンは鳥以外にも鉄橋を通り過ぎる列車を撮影し"速さ"の検証を試みたとのこと。条件は、AF動作速度およびAF追従速度を「最速」、連写モードを「Hi」に設定し、標準~望遠にて絞り開放。特急列車がフレームインした瞬間からシャッターを半押しすると、即座に被写体を捉えながらしっかり追従したと感心していました。こういったあらゆるスピード感こそが、本機RX100 M5の武器といえるでしょう。画の仕上がりという点においては、RX100 M4との歴然とした差は見られませんでした(すでにクオリティが高かったということもあります)が、速写性を重視するという方にはかなり魅力的なモデルに仕上がっているのは確か。但し、AF動作速度や追従速度といった設定を"最速"にして気分よく連写を多用すると、バッテリー消費も進みやすくなります。それだけ負荷を掛けているということですから、今日は撮るぞという日にはぜひとも予備電池の用意を忘れずに。備えがあれば、もうシャッターチャンスはあなたの思うがままです。

( 2016.11.25 )