PHOTO YODOBASHI

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PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

写りと造りにこだわり抜いたリミテッドシリーズに、なんと4本目が登場です。フルサイズ対応の超広角レンズで、焦点距離は21mm。明るさはF2.4となります。フルサイズ用の超広角域は「HD PENTAX-D FA 15-30mmF2.8ED SDM WR」のみが担っていたので、新たに単焦点という選択肢が加わったことは喜ばしいことです。しかもこれまでの3本が基本的に銀塩時代の設計であるのに対して、本レンズはデジタルネイティブの現代っ子。より高度な要求に応える初のリミテッドレンズということで期待も甚大です。また、意図的に収差を残しているとのことですが、シリーズ共通の豊かな表現力を受け継いでいるのかも気になるところですよね。他のトピックとしては、シリーズ初となるレンズ内AFモーターの搭載が挙げられます。これが撮影のリズムにどのような恩恵を与えてくれるのかも含め、じっくりと確かめたいところです。早速ご覧ください。

( Photography & Text : TAK )

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

ペンタックスサイトの商品ページを覗いてみると、冒頭に「“海辺の貝殻とはじける白波、そして水平線までの自然なボケ味”を描き出す」とあります。ただならぬパッションを感じますが、これが実写においてどのような結果をもたらすのか。海には行けなかったので琵琶湖で試してみましたが、合点がいきました。右手前のせせらぎが琵琶湖に注ぎ込んでいるシーンですが、ピント面は中央右下の石です。そこからのボケの遷移が前後共に実になだらかですね。水平線や遠景も存在を感じさせながらも、なんとも穏やかな描き方です。ピント近辺の太陽光の反射をご覧ください。光の滲みや漏れの柔らかさには、もはや慈しみさえ感じます。あえて残した球面収差のマジックでしょうか。画像をクリックして等倍でご覧ください。ご飯3杯はいけます。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

新そばが美味しい季節になってきました。前ボケの柔らかさが際立っていて、これが超広角なのかと疑いたくなるようなピントの薄さです。ピント部は実にシャープですが、ボケの量もあいまって一層鋭く浮き上がって見えます。背景が複雑だと後ボケは多少ざわつくものの、これもまた好ましい味わいです。


PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

水滴に確実にピントを合わせるため、マニュアルでフォーカスしてみました。「クイックシフト・フォーカス・システム」を採用しているので、合焦後にフォーカスリングを回せばそのままマニュアルフォーカスに移行できます。超広角でも意外とピントはシビアですから、ここぞという時にサッと微調整ができるのは心強いですよね。中央から下に伸びるフレームの直線に歪曲が見られますが、様々なレンズを試してきた身としては、久しぶりに「佳い」と思える味わいです。これについては後ほどお話しします。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

背景も何となく想像のつく程度にボケているのですが、それにしてもF2.4とは思えないボケの量で、硬さもありません。玉ボケもこれまた美しく、輪郭の柔らかな処理も見事というほかありません。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

21mmの画角は92度。引きの取れないスペースでも全体の造形を捉えるには十分ワイドです。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

21mmはストリートの定番でもあります。写り込む範囲が広いということは、その瞬間に被写体が存在する「舞台」や「コンテクスト」を伝えやすいということでもあり、前後方向で通時性を表現する望遠とは対極をなす世界です。こちらも開放ですが、周辺の流れも認められません。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

倍率色収差はゼロではありませんが、高い次元で抑制されています。というよりも、あまりにも少なく、補正の有無で大きな差は感じられません。こちらは補正ありですが、1枚目は補正無しです。戻ってご覧になってみてください。


PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

少し絞ればさらに鮮鋭度を増します。スナップはもちろん、風景もしっかりとこなせる性能も持ち合せた万能レンズです。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

最短撮影距離は18cm。フードが被写体に触れそうになるまで近づくことができます。この近距離ですと開放ではあまりにもピントが薄く背景が溶けてしまうため、F4まで絞りました。円形絞りを採用したことで絞っても玉ボケの円さが保たれており、優しい印象に仕上げることができます。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

大地に根を張る木、共生する植物のたくましさが、ググッと寄ることで強烈に伝わってきます。二線ボケはまさに球面収差を残した証とも言えますが、この辺りは好み次第かもしれません。私はほくそ笑んでいますが。ちなみに渦巻きになったり、周辺が引っ張られたりすることはないようです。人間に例えれば、優等生でありながら憎めないキャラを持つタイプでしょうか。

PENTAX K-1 Mark II, HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR, Photo by TAK

再び琵琶湖ですが、広い現場を広く撮るのも超広角のアプローチです。この湖、実は曇天無風が狙い時で、コントラストが落ちグラデーションが前面に出てくると、凪いだ湖面と空との境目すら無くなりそうな不思議な光景に出会うことができます。ピントは水平線上の多数の棒(伝統漁法「魞漁(えりりょう)」で使用される仕掛け)ですが、こんな条件でもシャープに解像しています。ただ、硬すぎないことがプラスに作用し、このシーン独特の曖昧さや静けさがより伝わってくるように感じます。実は周囲に他の色んな要素があり、それを何とか避けただけのフレーミングになってしまったことを記しておきます。写り込む範囲の広いレンズならではの悩みですが、おそらくズームではまた違った味わいになるでしょうか。


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補正(歪曲、周辺光量)の有り、無しの比較です(絞り開放)。今回はレンズの旨味を骨の髄まで味わうために全カット補正オフで撮影し、補正はこのカットのみ、カメラ内で行なっています。歪曲は確かに認められるのですが、これは相当頑張っています。だって、一眼レフですよ。カメラでデジタル補正をかけても、光学ファインダー上ではそうはいきません。いくらファインダーが良くても樽型が酷ければ気持ちが萎えるものですが、このレベルであれば問題はないでしょう。


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残した収差の妙。珠玉の超広角。

デジタルネイティブのリミテッドということで、あの味が薄まるのでは?と心配もしていましたが、シャッターを数回押しただけで杞憂であったことがわかりました。色はもとよりボケの描き方まで濃厚で、何気ない光景も心に訴えかけるようなシーンに変換してくれる、正真正銘のリミテッドレンズです。今の技術なら収差は何とでもなりますし、補正に助けられることも多いのはご存知の通りです。しかし、最新型にふさわしいアップデートを施しながらも、球面収差を積極的に活用することで深い味わいを獲得したことが本レンズのアイデンティティーです。ボケもスペックからは信じられないほど薄く豊潤そのもので、光の滲み方にしても補正に慣れてしまった目を優しく癒してくれます。「不純物ゼロ」よりも少しノイズが載っていた方が心に残るように、収差もただ消し去りさえすれば良いというものではないということをペンタックスは熟知しているのですね。数値で測れぬ官能性能を実現することは決して簡単なことではなく、試行錯誤を重ね尽くしたであろうことは素人の私でも想像がつきます。もちろん最新型ならではのメリットもしっかり押さえてあります。AFは高速静粛化され、テンポよく撮影が可能です。また、円形絞りによる柔らかいボケも表現に花を添えてくれます。他の3本とは違って絞りリングこそ備えていませんが、描写の方向性は共通しているので違和感なく併用できるでしょう。湖面のカットを家族に見せると「写真に撮ると違うね〜」とのコメントをもらいました。写真と現実は違って当然なのですが、どう違うのかを決めるのがレンズであり、だからこそ交換する楽しみがあり、防湿庫は赤色巨星のごとく膨張を続けるのです。そんな中でも本レンズのポジションは不動。他のリミテッドがそうであったように、時が経っても陳腐化することはないでしょう。確信をもって、カートをロックオンしてください。

( 2021.11.02 )

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技術が成熟してくると、過去のマイナス要素もプラスに変える余裕も生まれるのですね。この特別な味わいを、存分にお愉しみください。

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初代リミテッド(43mm)の発売当時はシルバーのみでした。いい色ですよ。

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前玉は凸形状です。しっかり守ってあげましょう。

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この際、リミテッド専用の防湿庫をしつらえてみてはいかがでしょうか。

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