PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
PENTAX K-S1 / SHOOTING REPORT
APS-Cフォーマットセンサーを擁する本格一眼レフカメラにして、斬新なボディデザインを身にまとった「K-S1」。グリップ部をはじめ、電源レバーやモードダイヤルには、LEDによる「ボディライト」を備えるというギミックもあるという、まったく新しい一眼レフスタイルの登場に正直驚きました。特に、デザイン性に富んだコンデジやミラーレスカメラに親しんできた方々にとっては、ステップアップモデルの選択肢としてかなり気になる存在なのではないでしょうか。新規採用のCMOSセンサーは有効画素数約2012万画素。その解像感を最大限に引き出すべく、ローパスフィルターを非搭載にしています。加えて、上位機と同様のコーティングを施した明るいファインダーは視野率約100%。コンパクトなボディながら、しっかりとした基本性能を凝縮してきたあたり、作り手のただならぬ思いみたいなものを、勝手に想像してしまうのです。そのいでたちは自信の表れか？論より証拠、本機による作例カットをとくとご覧頂きましょう。
( Photography : T.Nakanishi / Text : KIMURAX )
フレーミングは3.0型背面液晶モニター（92万ドット）と光学ファインダーの両方で行えます。面白いアングルを探ったり、縦横のラインをしっかりと出したい時には背面液晶モニターが比較的便利だったりするのですが、一般的な撮影ならば、やはり光学ファインダーを活用したいところ。被写体への没入感が高まりますし、脇を締めてしっかりとした姿勢で撮影することができますしね。さて、ローパスフィルターレスとした解像感はいかに？ということで、絞り込み、高周波な被写体を収めたカット。細かい枝から葉先まで、みっちりと描き込んでいるのがわかります。キリリとした描写は、撮影現場のぴんと張り詰めた冷たい空気までも表現しているかのようです。
緑→黄→赤という微妙な色合いの変化。それぞれの葉のエッジが甘くなると、途端に絵画的なタッチに見えてしまってもおかしくはない光景ですが、1枚1枚を実に丁寧にすくい上げています。
なんだかローパスレスの解像感たっぷりの描写に味をしめてしまい、絞り込んだ画ばかりが続いてしまいスミマセン！でもほら、すごいでしょ？しんと冷えた朝の散歩道で出会った、薄っすら霜化粧の落葉たち。細やかな結晶ですから、もっさりしていたらやっぱり雰囲気が出ませんよね。高精細にしてこの切れ味。ゾクゾクしてきます。本機には、絞り込みによる画質低下を軽減する回折補正機能も完備。つまりは、どんどん絞って撮影してみてくださいね、とメーカーさんはおっしゃっているわけです（笑）。
一転して開放での撮影ですが、シルエットと化した枝葉をきっちりとトレースしているのがわかります。ドラマティックな朝焼けの階調表現も良好です。
慣れない着物姿でちょっと歩きにくそうでしたが、ちょこちょこと可愛らしく歩みを進めるお嬢さん。AFは絶えず追従し、カメラボディ内の手ブレ補正機構も働くので、じっとしていてくれない被写体でも安心です。ローパスフィルターレスでは、布地や細やかな格子などを撮影するとモアレが出やすいと言われておりますが、こちらの着物では見受けられませんね。ちなみに「K-S1」には、光学ローパスフィルターと同様のモアレ軽減効果が得られる「ローパスセレクター」なる機能が備えられています。予め、モアレが心配されるシチュエーションではONに。しかも強弱の選択までできるようになっているので、いろいろと試してみてはいかがでしょうか。
縄の細かな毛羽立ちまでしっかりと丁寧に描き込んでいます。木の質感描写も言うこと無しですね。
自然の風景に限らず、全般的に立体感あふれる撮像。高コントラストなシーンにも臆することなく切り込んでいけるポテンシャルが十分に感じられます。こういった逆光のシチュエーションでは、どうしてもレンズの性能に左右されるもの。長くカメラボディを使っていく上では、よりよいレンズが欲しくなることもあるでしょう。もちろんそういった楽しみが出てくるのも基本性能が高ければこそ。いいカメラだと思います。
最高感度はISO51200まで対応。こちらのカットはISO6400での撮影ですが、ほっそりとした月の灯りだけでも1/15秒でシャッターを切ることができました。それなりにノイズも出てはいますが、ISO感度からすればなかなかな大人しめな印象。シチュエーションによっては、ISO3200あたりでもガシガシ使っていけそうです。
斬新なデザインとイルミネーションで、本格一眼レフに新風を吹き込む
本体ボディは水平基調としながらも、緩やかな曲線を巧みに取り入れた斬新なフォルム。PENTAXロゴが刻まれたペンタプリズムを備えているのですが、そのコンパクトなシルエットやデザインが故に、一眼レフカメラというよりもむしろミラーレスカメラっぽいなあと感じました。フルサイズセンサーはもちろんのこと、APS-Cセンサー搭載ともなれば本格一眼レフカメラとしての風格とでも言いましょうか、一眼レフ然としたフォルムであってしかるべき、という思い込みが強かったのでしょうね、失礼千万。いい意味で「K-S1」に、ガツンとやられました（笑）。しかも上がってくる画は、すこぶる良好なものばかり。同社のローパスフィルターレス機にして「ローパスセレクター」を初めて備えたのは、フラグシップモデルの「K-3」。加えて、視野率約100％の光学ファインダーといった上位機種と同様の機能を惜しみ無く盛り込んでいるのですから、使い勝手にも磨きがかけられているわけです。冒頭では、一眼レフへのステップアップユーザーに歓迎されそうなデザインと申し上げましたが機能面からみても、こだわりのカメラ好きの方々にもぜひ手にとって見てもらいたいカメラです。メイン機になりうる資質を持ち併せながら、ちょっとした普段使いにまでと重宝することでしょうから。今回の撮影ではダブルズームキットレンズの「DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL」と「DA L 55-300mm F4-5.8 ED」を使用しましたが、単焦点レンズあたりを付けて撮ってみたら…と想像するとちょっとなんだか楽しくなってきてしまいました。まずはぜひ、このボディを一度手にしてみてください。一眼レフカメラのイメージが変わるかもしれませんよ。
( 2014.11.18 )
Kシリーズのアイデンティティを継承しながらも、まったく新しいデザインへモデルチェンジ。ペンタックス一眼レフが持つ高い性能はそのままに、未来を先取りしたK-S1の登場です。
ボディーカラーは全12色。そのうち、ブラック・ホワイト・ブルーの基本3色を除くモデルはお取り寄せとなります。またレンズキットやダブルレンズキットも同じカラー展開です。