Nikon NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

フルサイズフォーマットに対応したミラーレスカメラのエントリーモデルとして、この夏発売された「ニコンZ 5」。今回ご紹介する「Nikon NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」は、そのZ 5のキットレンズとして一緒に登場したものとなります。話は逸れますが、先に発売となったDXフォーマットのエントリーモデル「ニコンZ 50」の実写レビューはご覧になりましたでしょうか。そのZ 50のキットレンズが「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3」というもので、これが手頃なキットレンズとしては驚くほど光学性能が高く、『Zのズームレンズは侮れないぞ』という印象を強く持つことになりました。本レンズもZ 5のレビューでご紹介したとおり、その“侮れない”性能をしっかりと踏襲した1本となっていますから、今回はそのレンズを主役にして、Z 5とNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3の組み合わせで改めてレビューをお届けすることになりました。

ざっと「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」の特長について触れておきましょう。ニコンによれば、ミラーレスカメラ用フルサイズフォーマット対応ズームレンズとしては本稿執筆時点において最薄・最軽量とのことで、沈胴時の全長はマウント面から51mm、重量はわずか195gと、その見た目は往年の標準レンズ50mm f/1.4を思い浮かべるほどコンパクトにまとめられています。ニコンがZシステムのズームレンズで沈胴機構を積極的に採用できるのは、55mmという大口径のマウントを採用し、鏡胴内部に沈胴機構を内蔵できるスペース的な余裕があるからだそうです。ミラーボックスのないミラーレスカメラは一眼レフカメラに比べるとボディの小型化が進んではいるものの、更なる高画質化を求めたレンズはむしろ大型化してしまうこともあります。本レンズでは高画質を維持しながら沈胴機構により携行性をも高めるなど、欲張った仕様になっています。それでは、レビューをじっくりとお楽しみください。

( Photography : KIMURAX / Text : Naz )

広角端の開放です。本レンズではボディ側のレンズ補正機能により、歪曲補正や色収差補正、周辺減光について電子的に補正を行っていますが、ご覧の通りビルの直線は気持ちよく真っ直ぐに、そして壁面のタイルなど細かなものも余さずしっかりと描き込まれています。開放でも一切の緩さを感じませんね。

レンズ構成は10群11枚と、沈胴時の短い全長からすると枚数が多く感じましたが、1枚1枚のレンズは薄いため、結果として軽量となり、またヌケもよい印象です。レンズの軽量化は、インナーフォーカスの高速化にも寄与しています。ご覧の通り、高性能な単焦点レンズで同じF値まで絞ったものと比べても遜色ない描写に感じます。

サンルーム内の観葉植物をガラス越しに撮ってみました、差し込んだ光を上手に捉え、見栄えのいいコントラストで気持ちのよい描写に仕上げてくれました。

レンズには厳しい条件。小さなゴーストも見えますが、画を破綻させるようなものではありません。またフレアについては、むしろこのくらいであれば眩しさの演出として活用できるのではないでしょうか。気になるようならば、シャドウを少し締めてあげればほとんど目立たなくなると思います。

最短撮影距離は全域で35cm。一般的な50mmレンズでは45cm前後はありますから、それより寄れるということになります。開放値からするとさほどボケないかと思ったりもしますが、そこはフルサイズのFXフォーマットだけあって寄れば相応にボケも大きくなります。また絞り羽根は7枚の円形絞りを採用しているため、丸みのあるボケ味を楽しめます。

奥の竹林の葉にピントを合わせて手前の植物をボカしてみました。癖のないナチュラルなボケで、前後の立体感もよく演出されていると思います。

水面のキラキラした光が美しいですね。こうした被写体では広角レンズで被写体へ迫りながら大胆な構図で撮りたいものですが、24mmスタートでテレ端は50mmと扱いやすい画角をカバーしてくれているため、余計なものが写り込まないよう気を配りながら、最適化した構図へと追い込みやすいのはズームレンズならではですね。

「5」の数字が印象的なコンクリートの壁面を捉えてみました。原寸のデータも見てみましたが、中心部の解像感の高さは見事のひと言。周辺部も中心部に比べると少し甘く見えますが、実際に「甘い」というようなことはなく、どちらかというと中心部がとにかく素晴らしいといった印象が正解だと感じました。

割れたガラスの破片。雨に濡れ硬質な雰囲気を演出しようと、少し暗めに仕上げてみました。硬いものの質感描写はキレのよさも相まって文句なく素晴らしいものです。

コート表面の光の濃淡、1本1本の毛までシャープに描いています。やや硬い描写傾向はあるかもしれません。スナップ撮影にはむしろこのくらいがちょうどいいでしょう。

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Z 5ユーザーだけが楽しんでいるのはもったいない1本です

いかがでしょうか。Zシステムの光学性能の高さは、既にお使いのユーザーの方ならよくご存知でしょう。それを踏まえたとしても、本レンズの写りに驚いたのではないでしょうか。想像以上、期待以上の写りは、このレンズに与えられた役割からするとオーバースペックではないかと思ってしまうほど。プラスチックマウントの採用など、軽量化と同時にコストダウンの意図も見え隠れしますが、普段重量級の大口径レンズを使うことが多い上級者や中級者の方にこそ、一度本レンズを手にしていただければと思います。

f/4-6.3という開放F値は標準ズームレンズとしてみても明るいものではありませんが、カメラ側の高感度性能が著しく向上した昨今においては、さほど気にすることはなく、むしろこの軽快感だからこそ得られる撮影テンポのよさを感じ取っていただけたらと思います。ズーム倍率を約2倍にとどめ、11枚のレンズにはEDレンズが2枚、非球面レンズを3枚採用と非常に贅沢なレンズ構成となっています。これはもう、小口径・低倍率の贅沢レンズといって間違いないでしょう。

( 2020.11.05 )