Nikon NIKKOR Z 20mm f/1.8 S

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

ニコンZマウント用レンズに新たな超広角レンズ「NIKKOR Z 20mm f/1.8 S」がラインナップされました。本レンズは、その名の通りニッコールZレンズのなかでも非常に高い水準で描写力と品質をバランスさせた「S-Line」のシリーズとなっています。おさらいしておきますと、S-Lineの「S」には「Superior」「Special」「Sophisticated」の3つの意味が込められており、「優れた、特別の、精緻な製品」ということ。これまでリリースされてきたS-Lineの各レンズの非常に緻密で繊細な描写、美しいボケは、本レンズでも健在なのでしょうか。S-Lineの超広角単焦点レンズといえば、「NIKKOR Z 24mm f/1.8 S」がリリースされたのも記憶に新しいと思いますが、わずか4mmがもたらす超広角の世界の変化は一体どのようなものなのか。さっそく作例をご覧ください。

( Photography : KIMURAX / Text : Rica )

極上のボケ味に魅せられる

広角レンズといえば真っ先に、広々とした風景撮影が思い浮かぶのではないでしょうか。その視野の広さから対象物が小さく写りがちで、そして周りのいろいろなものが写り込んでくることに。ま、広大な範囲を写し込める超が付くほどの広角レンズですから、そうあってしかるべきですが。いろいろな要素が写り込んでしまうが故に、少々使いこなしが難しいなというイメージを持ってしまう面もあります。そんなジレンマを少しでも和らげてくれるのが開放F1.8を有する本レンズ。被写体との距離を程よく詰めていくことで、背景にボケ味を添えることができるのです。おかげで周りにある余計だなと感じる要素を、さりげなく後退させてくれます。単にボケるのではなく、自然な風合いで馴染んでいくのですからたまりません。大変キレのある描写を見せてくれるレンズなだけに、極上のボケ味が画の世界観をさらに拡げてくれます。

輝度差があり画面中央の縦がコーナー部分なのでズドンと暗く、というかほぼ真っ黒に潰れて見えます。ところでデータ的にはどうなっているのかと、RAWデータのシャドーを現像ソフトで持ちあげてみると、闇からすっと細部が浮かび上がってくるではありませんか。光の情報はデータとしてちゃんと刻まれているのです。撮影時の見た目の印象さながらの、JPEG撮って出しの仕上がりで十分も十分。手間いらずなシステムとも言えるでしょう。

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左右のシャドーエリアがいい塩梅に描き込まれており、水面に落ちた像の諧調表現もかなりよいと思います。麗らかな陽気と、そこはかとなく漂う湿度がちゃんと感じられる。絞り開放から画面全体に渡ってよく描き込んでくれるものです。

超広角レンズ特有のパースペクティブを活かすべく、少々奇をてらった視点からのフレーム。思いがけない画が面白いように量産できるので、ぜひいろいろと試してみるといいでしょう。それにしてもボケの連なりが実に自然なものですから、グイグイ寄りたくなるのですよね。

絞り開放からとにかく解像しまくりで呆れます。しかもハイライト部分の光の捉え方がいい。広角系レンズを振り回すとなると視線はついつい上へ向かいがちですが、高いところから見下ろしてみると、いいアングルが見つかるかもしれませんよ。

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太陽光が透ける花弁。背景に広がる玉ボケ。単焦点レンズらしい雑味のない澄んだ像は、ファインダーを覗く撮り手の心を弾ませます。

前ボケ、後ボケ、いずれも柔らかく溶けて行きます。この表現力を活かすには、出た目の露出からプラスしてあげるとグッといい雰囲気に仕上がる印象です。ピント面の描写にキレがあり発色もいいレンズですから、きちんとフィニッシュしてくれるのですよね。

シャドーをしっかり粘ってくれるので、ついつい露出を切り詰めてしまうことも。そこらへんはお好み次第ですけどね。いずれにしても、様々なシチュエーションで期待にしっかりと応えてくれるレンズは、楽しくそして頼もしい存在です。

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AF、近接、ボケ、キレ、どれもが期待を超えてくる

これこれ！ これがニッコールZマウントレンズ！ と思わず唸ってしまう、繊細で精細な描写。すーっと背景になじんでいく開放F1.8のボケは20mmの超広角レンズとは思えぬボリューム感です。これだけのボリュームがあれば超広角レンズでも撮像面から0.2mという最短撮影距離を積極的に使いたくなります。本レンズに採用されている「マルチフォーカス」は、複数のAF用駆動ユニットが連携し、複数のフォーカス群の位置を高精度で制御するというもので、AF速度と精度の向上だけでなく、近距離の被写体であっても軸上色収差を抑え、高い結像性能を実現。最短撮影距離でも高い解像力を発揮できるよう貢献しています。超広角と遠慮せず、被写体にググっと迫ってボケを生かす表現にぜひトライしてみてください。20mmとは思えぬ予想外の画が得られるはずです。さらに、9枚羽根による円形絞りも美しくボケ味に彩りを添えてくれます。もちろん、超広角レンズらしいパンフォーカスでのスケール感ある画でも、その描写力をいかんなく発揮してくれます。スカっとヌケのいい画が本レンズの真骨頂であることは間違いありません。レンズ構成は11群14枚。EDレンズ3枚、非球面レンズを3枚採用し、ナノクリスタルコートも施されています。逆光に強く、ゴーストやフレアも皆無。開放F1.8からキレのある描写を見せてくれますが、そのキレはF5.6からF8あたりがピークで点や線を非常にシャープに捉えてくれます。画像の周辺部で目立ちやすいサジタルコマフレアも非常に高いレベルで抑え込まれており、F1.8という開放値を生かした低感度での撮影も可能ですから、星景を撮るユーザーにはぜひオススメしたい一本です。正直言って、弱点らしきものは見当たらず、驚くほどよく写るレンズです。あまりによく写りすぎて可愛げのかけらも無いように感じるかもしれませんが、これぞニコンのクラフトマンシップ。誰がどんな風に使っても、しっかりと安定した性能を発揮してくれる、いぶし銀の一本です。

( 2020.04.02 )