Nikon AF-S NIKKOR 120-300mm f/2.8E FL ED SR VR

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

プロフェッショナルのスポーツフォトグラファーが使うことを想定してリリースされた「AF-S NIKKOR 120-300mm f/2.8E FL ED SR VR」のレビューをお届けします。120mmから300mmまでの全焦点距離域をF2.8の明るい開放値で撮影できる大口径望遠ズームレンズは特に、屋内競技での光量の少ないシーンで威力を発揮してくれそうです。レンズ構成は19群25枚。光学系にはEDレンズ1枚、蛍石2枚、さらに新開発のSRレンズ1枚を採用しており、色収差はしっかりと抑えられているとのこと。このSRレンズは「Short-wavelength Refractive」の頭文字をとったもので、短い波長の光を大きく屈折させ、色収差補正の手助けとなる特殊高分散ガラスです。短波長の青色光の結像位置を赤色、緑色と近くすることで色のにじみが抑えやすくなるというSRレンズは、特殊ガラスでありながら他の光学ガラスと同じように使うことができ、レンズ構成の自由度が高められるため本体の小型化にも貢献しています。手ブレ補正効果は4段。このVR機構にはSPORTモードが搭載されており、モーターのアルゴリズムも強化。突然に速度変化のある被写体でもブレずに追従してくれるのか期待がふくらみます。望遠単焦点レンズに匹敵すると謳われている本レンズをどう料理するか……本レンズを携えて撮影して参りましたので、まずは作例をご覧ください。

( Photography : Z II / Text : Rica )

被写体までおよそ40mほどの距離、いわゆる中間域ですが、画のすみずみまで一切の滲みがないことがわかります。キレのある描写というのはまさにこういうことでしょう。ズーム域全体で、それもあらゆる焦点距離において高いレベルの描写を維持できることこそプロフェッショナルユースに耐えうる機材である証です。

ピンポン玉ほどの大きさのメジロはテレ端300mmでは少し短いかなと思うところですが、まぁ見てください。「よく写る」を大きく超え「恐ろしく写る」と言ってよいほどではないでしょうか。キレや立体感、背景のボケを含め、全方位に凄味を感じる写りです（クリックで原寸画像をご覧いただけます）。

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抜群の描写性能と素速いAFは鉄道撮影にも威力を発揮します。鉄道撮影の現場で被写体までの距離が限られている際にも120−300mmのズーム域は大きなメリットになります。ズームレンズでありながら開放値F2.8の望遠単焦点レンズに匹敵する描写力ですから、携行機材を減らすことができるだけでなく、多彩な焦点距離で被写体を捉えることができる大きな信頼感も得られます。

隣のホームを走り抜ける車両の鼻先を狙ってみると、手ブレ補正がしっかり効いたことで上下ブレがしっかりと抑えられ、素晴らしい艶感を見せてくれました。120mmのワイド端での撮影で画面いっぱいとなりますが、斬新な切り取りができました。

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乗馬シーンを撮影する際に意識したことは、疾走感と躍動感。乗馬の流し撮りでは横移動と同時に縦の揺れもあるため、スローシャッターでの撮影は騎手と馬体のどちらか、もしくはどちらともブレてしまいがちです。まずは騎手を止めることに集中し、馬体はあえてブラすことで動きのある画になりました。

こちらはシャッタースピードを上げ、馬体の躍動感を意識しての撮影です。筋肉が盛り上がる瞬間と前脚と蹴り足のバランスが重要です。本レンズならフレームに収めさえすれば間違いなく結果を出してくれるという高い信頼を感じます。

手ぶれ補正は素晴らしく優秀で、ご覧の通り、手持ち撮影の1/15秒でバッチリと止めることができました。普段流し撮りをする機会の多くない筆者でも、かなりの精度で止めることができたのは驚きでした。重さは3250gと決して軽くはありませんが、レンズの焦点距離域、そして性能からすれば、驚くほどの軽量化を実現していることは間違いありません。手持ち撮影も可能ですが、いいシーンを待って構え続ける時間は重さがじわりと効いてきますので、一脚もしくは三脚の携行をお勧めします。

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ズームレンズの頂点とも言うべき凄味ある一本

これが本当にズームレンズなのか……と息を飲む写りです。「単焦点レンズに匹敵する」という言葉は決して大げさではなく、特にテレ端300mmでは、超望遠レンズの看板とも言うべきAF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR II、通称サンニッパよりもキレがあるのではないかと思わせるほどです。120-300mmという焦点距離域はスポーツの撮影において非常に汎用性の高いもので、体操競技やバスケットボール、スケートなどの屋内競技、かつ被写体との距離が常に変化するスポーツでは、たとえ描写力が高くとも単焦点レンズを複数持ち変えているとシャッターチャンスを逃してしまうでしょう。本レンズは70-200mm、そして300mm単焦点の2本の焦点距離を120mmから300mmまでカバーしますから、レンズ交換の必要のあったシーンをこの1本でまかなうことができ、撮影の自由度は格段に上がります。今回のレビューではすべてのカットを手持ちで撮影しました。120-300mm F2.8というスペックから考えればコンパクトではありますが、レンズ重量は3250g。今回使用したNikon D850とあわせると4kgを超える重量級ですから、なかなか体力のいる機材ではありますが「このレンズでなければならない」という強い意志を、このレンズから感じることができます。「AF-S NIKKOR 120-300mm f/2.8E FL ED SR VR」のすごさを言葉で表すためにものすごく悩みましたが、レース車両がレース用のタイヤを履くように、プロフェッショナルのフォトグラファーがスポーツを撮るためのレンズである以上、このクオリティは必然なのだと思います。価格からいっても高嶺の花かもしれませんが、確実に、そしてド級のアウトプットを約束してくれる信頼感を得ることができる一本。頂点に立つならこれは安い買い物だ、と麻痺、いやいや陶酔してしまいます。

( 2020.03.30 )