PHOTO YODOBASHI
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Nikon D780 / SHOOTING REPORT
ミラーレスのデジタルカメラが主流となるなか、きちんとデジタル「一眼レフ」がアップデートされるというのは嬉しいニュースです。今回発売されたD780は、2,450万画素のフルサイズセンサーを搭載するデジタル一眼レフ。先代モデルD750はミドルクラスという立ち位置で生まれましたが結果的には長くベストセラーモデルとなりました。それはひとえにフルサイズセンサーを使いたい人にとって「バランスの良い選択肢」であったということ。5年の歳月を経て本モデルがどう生まれ変わったのか。まずは外観と機能から確認していきましょう。
( Photography : Z II / Text : Serow )
LOOK & FEEL
ニコンの一眼レフは安心感のある定番スタイル。内蔵ストロボが搭載されないことでペンタプリズム部分がスッキリしたデザインになり、少しイケメンになったでしょうか。ボタン類の配置に微妙な変化があるものの大きな違和感を感じることはなく、ホールディングも良好です。重量自体はD750と同じで、このクラスとしては軽量。少し残念なのはオプションの縦位置グリップが用意されなくなったことですが、バッテリーの持ちがいいので十分ということでしょう。フルサイズ一眼レフとしては軽快な印象を受けるボディだと思います。
背面ボタンはレイアウト変更があり、スチルと動画のスイッチ、ライブビューボタンが上部に移動。D750ではOKボタンの下に配置されていたものが、より操作しやすい位置に変更されました。動画撮影、ライブビューを「より積極的に使う」ことが意図されているのでしょう。実際D750に比べてライブビューのレスポンスは格段に上がり、パワーアップを顕著に感じます。瞳AFなどが活用できることを考えると、一眼レフとはいえライブビューの利用頻度は増えるはずです。
インターフェースはUSBがType-Cになり若干レイアウトが変わりました。背面液晶モニターはチルト式タッチパネル。どんどんライブビューの使い勝手が良くなる一方で、光学ファインダーを覗けば「やっぱり一眼レフっていいなあ」と感じてしまいます。光学ファインダーも改良が加えられているとのことですが、数値には表れない世界ですからこればかりは体験していただくしかありません。その光学ファインダーの見え味を基本にしつつ、ライブビューの切り替えと活用が本機の面白みかもしれません。
OVERVIEW
細かなことは色々あれど、センサーと画像処理エンジンの刷新が大きなポイントです。画像処理エンジンはカメラ内のコンピューターですから「5年前のパソコンと最新のパソコンで、どれだけパフォーマンスが違うか」と考えてみてください。ざっくり「基本性能が全般的に向上した」と思って間違いありません。具体的にはAFのパワーアップ、連写性能や連続撮影枚数の向上、画質向上があり、動画撮影も4K UHDに対応しました。シャッタースピードや高感度耐性も進化しているばかりでなく、1本のバッテリーで2,000コマ超の撮影が可能という低消費電力設計。タフに使い倒せる1台になっています。
製品名 | D780 | D750 |
---|---|---|
発売日 | 2020年01月24日 | 2014年09月25日 |
センサー | 2450万画素 裏面照射型 CMOS | 2432万画素 CMOS |
画像処理エンジン | EXPEED 6 | EXPEED 4 |
ISO感度 | ISO 100~51200 | ISO 100~12800 |
シャッタースピード | 1/8000~30秒、Bulb、Time、X200 | 1/4000~30秒、Bulb、Time、X200 |
動画撮影 |
・3840×2160:30p 〜 24p ・1920×1080:120p 〜 24p ・1920×1080スロー:30p(x4) 〜 24p(x5) |
・1920×1080:60p 〜 24p ・1280×720:60p 〜 50p |
内蔵フラッシュ | なし | あり(ガイドナンバー:約12) |
モニター |
約236万ドット タッチパネル |
約123万ドット |
撮影可能コマ数 | 約2260コマ | 約1230コマ |
記録媒体 | SD/SDHC/SDXC × 2スロット (UHS-II規格対応) |
SD/SDHC/SDXC × 2スロット (UHS-I規格対応) |
測光範囲 |
マルチパターン測光、中央部重点測光:-3~20EV ハイライト重点測光:0~20EV スポット測光:2〜20EV |
マルチパターン測光、中央部重点測光:0~20EV ハイライト重点測光:0~20EV スポット測光:2〜20EV |
多重露出 | 加算、加算平均、比較明合成、比較暗合成 | ― |
PHOTO GALLERY
解像度は大きく増しているわけではありませんが、裏面照射型のセンサーになりました。実際このぐらいの解像度が使いやすいのであって「D800台のような解像度は要らない」という人がD750を手にしたのではないでしょうか。豊富なトーンで表現されています。
正当進化を果たしたボディということで、何かが突出するようなことはなく、トータルバランスに優れた使いやすい仕上がりです。澱みなく、スムースに扱える。AFをはじめとするパフォーマンス向上がこのような感覚に寄与しているのだと思います。
AF性能の強化が本モデルのポイントですが、ライブビューで使える「瞳AF」も魅力的な機能のひとつ。ポートレート撮影等で大活躍してくれると思います。嬉しいことにセンサーは高感度に強くなり、ISO 3200〜6400あたりが積極的に使えるクオリティになりました。
ISO 12800に上げてもこの立体感。ディテールが失われることなく、スムースな画を生み出してくれます。D750に比べて明らかにイイですね・・・。
画像処理エンジンは2世代更新。その恩恵はAF性能ばかりでなく、一皮剥けたような画質の向上があります。先代モデルを持つ身としては、これだけでボディを更新したくなってしまうのは正直なところ。
ヌケのいい色味といいましょうか、大変モダンな画になったと思います。撮って出しのJPEGで、これだけ仕上がっていますからね。
信頼を裏切らない。完熟の一眼レフがここにある。
ニコンというメーカーがどうして世界のカメラを牽引してきたのか。プロフェッショナルが仕事の道具として選んできたのはなぜなのか。今この最新のデジタル一眼レフカメラ「D780」に触れると、熟成を極めた一眼レフの安心感に改めて感動を覚えます。光学ファインダーの見え、ホールディングの良さ、シャッターのキレ味、心地よいレスポンス。堅牢性はもとより、いつ手にしても確かに動いてくれるという信頼感がある。スペックには見えない部分ですが、体感した方ならばお分かりになることでしょう。
膨大なレンズ資産、バッテリーの持ち、タイムラグのない光学ファインダーなどを考えると、やはりFマウントはニコンの本領という感があります。そこにライブビューの利便性をフィードバックして、さらに道具としての完成度を高めている。派手な製品ではないかもしれませんが、写真を撮る道具として質実剛健、高いバランスでまとめられた1台です。ひとつのシャッターに責任を伴う方にこそ、おすすめいたします。
( 2020.01.31 )
光学ファインダーとライブビューの良さを堪能できる、完成度の高い一眼レフ。確かな相棒が欲しい貴方におすすめいたします。
本レビューのボディ外観写真についているのが本レンズ。バランスもいいでしょう? 大口径単焦点レンズは楽しいのです。
D780にこの1本があれば仕事ができる。迷ったときはまずここから。
ニコンで広角を撮るなら忘れてはいけない1本。
ここまで揃えば怖いものはありません。さっさと現場に出かけましょう。