PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
FUJIFILM X-H2S / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2
富士フイルムXマウントの新たなフラッグシップボディ "X-H2S"の実写レビューをお届けします。外観プレビューでも触れたとおり、センサーと映像エンジンが刷新されたことにより、処理速度が大幅に向上したことがこのカメラの「肝」であります。処理速度が上がることで電子シャッター時に最速40コマ/秒もの超高速連写の実現や、その際に起きるローリングシャッター現象を抑制できるとのこと。さらには富士フイルムで初の動物や乗り物の被写体検知AFが追加されたことや、最大7.0段と強力なボディ内手ブレ補正に、動画性能では最高画質6.2K/30p 4:2:2 10bitの内部記録が可能になるなど、あらゆる面で性能がアップしています。現時点でAPS-C機最高レベルと謳われるX-H2Sがどんな性能なのか検証してみました。
( Photography & Text : Z II )
さらに進化したAF性能
まずは被写体検出AFを鳥に合わせて水辺にて。鮮やかな色彩で野鳥観察の方に人気のカワセミはとても小さく、実際に探すのはとても大変です。X-H2Sならフレームに入りさえすれば、画面上で小さかろうが、カメラを振ろうがAFポイントが食いついてくれて狙い続けることができます。また、この日は曇天で暗く撮影条件はよいとはいえませんでしたが、ISO感度に頼りすぎることなく遅いシャッタースピードでも手ブレせずに撮影できたのは強力なボディ内手ブレ補正があってこそ。それにより口ばしや羽毛など、様々な部位の色と質感を克明に描写できています。
車検出AFを使ってAFの追従性を見てみました。車のどの部分を検知して認識する仕組みなのかはわかりませんが、ミニカーでもしっかり認識しています。動きの速い車を撮影する際のあらゆるシーンで重宝することでしょう。この他にバイク、自転車、飛行機、電車と乗り物を検出しますが、設定を飛行機に合わせた際、鳥には全く反応せず、形は似ていてもほぼ完璧に区別しているのには驚きました。また、瞳検出AFでも追従性は良好で人物がフレームインした際のフォーカシングが滑らかで、これだけでも動画のクオリティがグッと上がる印象です。
電子シャッターによる高速連写のテストです。動きの速い被写体のベストショットを逃さないためには最速40コマ/秒の高速連写が大いに役立ちました。瞬時に変化する表情とポーズを全て収めているので気に入ったカットを後でじっくり選べます。超高速連写により撮影は一発OK。暑い中、撮影に協力してくれた娘に感謝です。
走行中の電車の窓からのカットです。これまで電子シャッター撮影時における問題としてローリングシャッター現象がありました。簡単にいうと高速で動く被写体を撮影した際に、センサーから読み出す時間がかかるので、読み出し始めと終わりにタイムラグが生まれ、動く像に歪みが発生する現象です。X-H2Sは新開発のセンサーと最新の映像エンジンにより、データを読み出す速度が速くなり、ローリングシャッター現象が起きにくい仕組みになっています。
瞳検出AFを使用し高速連写にて撮影しています。ポートレートなど人物撮影にもX-H2Sは最適です。例えばですが、これまではモデルの瞬きや表情、瞳へのピント送りを気にするあまり構図全体への気配りが疎かになることや、その逆もありました。X-H2Sならピント合わせはカメラに任せて、撮影者は表情と構図だけに集中して連写撮影ができます。その結果、撮影の精度が格段に上がるというわけです。
強烈な逆光はカメラにとって厳しい条件ですが、空の青、サルスベリの白い花、そしてギラつく夏の太陽まで平然と再現できています。JEPG撮って出しでここまで撮れるのはさすがです。
新型の映像エンジンによりハイライトやシャドウ部分の情報をしっかりと描き、全体的に描写がシャープさが増している印象です。横断歩道や柵、歩いている人物などを高精細で立体的に描写しています。
高感度性能をテストするためISO 8000での撮影です。ここまで感度を上げるとさすがに暗部ではノイズが見えてきますが人物のシルエットはキリッとした像を結んでいます。強力な手ブレ補正と合わせればISO感度を上げすぎることなく夜スナップにも持ち出せますね。
高速化がもたらした新世代カメラ
富士フイルムXシステムが登場してちょうど10年です。この節目に登場したX-H2Sは期待以上に完成度の高いボディでした。世代が一つ上がった映像エンジンと新設の積層型のセンサーによって処理速度の高速化が大きく進み、それによってもたらされる恩恵がこんなにあるとは正直思っていませんでした。被写体検出AFの精度と速さ、最大40コマ/秒の連写性能、さらに強力なボディ内手ブレ補正、ローリングシャッター現象の軽減など多くの面で性能を上げ、それによって画質までも上がっているように感じました。追尾AFや連写等、カメラの性能に任せられる部分とフレーミング等の撮影者が主体的に作り出していく部分の分業がしっかりと噛み合うことで、結果として撮影がうまくなったように感じられる程、よい上がりが得られるのです。これは撮影が楽しくなりますよ。そしてそれは静止画だけではなく、6K画質の動画撮影の場でも有効ですから、さらに撮影の幅が広がります。高速化により撮影そのものの質を上げてくれる機能が充実し、そのうえで従来通りのサイズ感を維持しているのはさすがXシリーズのフラッグシップボディです。もちろん、動画撮影時や高速連写の際にはバッテリーグリップや、冷却ファンなど必要不可欠になってくる付属品があります。でもこれらを一体型にせず素のミニマルなサイズにしながらも用途に応じて付属品を選べる仕様にしたのはXシリーズに共通するコンパクトなボディサイズにこだわったからだと想像します。
富士フイルムXシステムの強みは何といっても「記憶色」と称される富士フイルム独自の色再現です。特にJPEGの画作りにおいて定評があり、エンジンが刷新されたことでさらに画質が洗練された印象。Xシリーズユーザーの方はご存知でしょうが、フルサイズ機にはないコンパクトなシステムとしながらも、気になる画質については全く不足を感じることはありません。まさに磨きをかけ熟成したカメラに仕上がっています。X-H2Sはコンパクトな上に撮影者が「こうなるといいな」がぎっしり詰まった次世代のオールラウンダーといっていいでしょう。
( 2022.09.28 )
いずれステップアップするなら最初からAPS-C最上位機種で始めるのもアリです。
大きなレンズを付ける本気の撮影の際には操作感、安定感が抜群です。
動画撮影時に熱対策は必須です。
高速連写や動画を撮るなら予備のバッテリーがあると安心です。2〜3個あってもよいでしょう。
動画撮影時にはCFexpress Type Bが必要です。もちろん静止画の際にも使えます。とにかく読み込み、書き出しスピードに驚愕します。
CFexpress Type B専用読み込みリーダーも揃えておきましょう。