PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
FUJIFILM GFX100 / SHOOTING REPORT
1億画素という驚異のスペックで登場した富士フイルムのラージフォーマットデジタル一眼「GFX 100」を、いよいよ実写レビューできる運びとなりました。発売時、ちょうど「富士フイルム X&Gマウントレンズ 完全レビューブック」を制作する過程で使わせていただいているのですが、その驚異的な写りに編集部一同ため息が漏れたものです。現在はファームウェアのバージョンアップにより更に性能を増し、目玉となるピクセルシフトマルチショット機能は4億画素という超高精細の画像を生成できるとのこと。手の届きそうなところにある超弩級のカメラがいかなる画を生み出してくれるのか、改めて確認していきましょう。
( Photography : A.Inden, NB / Text : Serow )
LOOK & FEEL
従来のコンセンサスを払拭するようにデザインを一新したGFX 100の外観。初見では正直驚きましたが、改めて見ると素直に「格好いい」と思います。ダイヤル類を大胆に排したことでスッキリとモダンなフォルムを実現。GFX 50S/50Rをお使いの方であれば少し慣れが必要でしょうか。ボディ右肩のサブモニターはカスタマイズが可能で、お好みの情報を表示したり、ヒストグラムやダイヤルを表示することができます。縦位置グリップ一体型の構造となって一見大きく見えますが、実際に触れてみればデジタル一眼レフと比べて大きい印象はありません。実際にレンズをマウントすればバランスも良く、フラッグシップモデルらしい頼もしさを感じますね。
背面のメインモニターは3.2型・約236万ドットの3方向チルト式タッチパネルタイプ。この下にモノクロ有機ELのサブモニターが付き、やはりカスタマイズが可能です。撮影者の使い方に合わせて情報表示を切り替えるというのは現代的なアプローチでしょう。右手位置には各種ボタンがありますが、縦位置でも横位置でも使えるように配置されたもので、ボタン類は比較的シンプルです。
OVERVIEW
もちろん1億画素のセンサーが目玉になるのですが、手ブレ補正機構やBluetoothの搭載、ファインダーの高精細化、動画性能の進化が光ります。本体の大型化に伴うサブモニターの追加や、バッテリー2個を搭載することによる撮影枚数の向上もフラッグシップモデルらしいと思います。
GFX 100 | GFX 50S | GFX 50R | |
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発売時期 | 2019年6月 | 2017年2月 | 2018年11月 |
有効画素数 | 約1億200万画素 | 約5140万画素 | |
連写 | 最大約5.0コマ/秒 | 最大約3.0コマ/秒 | |
ファインダー |
0.5型有機ELファインダー 約576万ドット |
0.5型有機ELファインダー 約369万ドット |
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液晶モニター |
3.2型 4:3 アスペクト 3方向チルト式タッチパネル付き TFTカラー液晶モニター 約236万ドット |
3.2型 4:3 アスペクト 2方向チルト式タッチパネル付き TFTカラー液晶モニター 約236万ドット |
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サブ液晶モニター |
1.80型 4:3 アスペクト 303x230ドット モノクロメモリー液晶モニター |
1.28型 1:1アスペクト 128x128 ドット モノクロメモリー液晶モニター |
― |
リアサブモニター |
2.05型 4:1アスペクト 256x64ドット モノクロ有機ELモニター |
― | |
AF方式 | TTLコントラストAF/位相差AF | TTLコントラストAF | |
手ブレ補正 | センサーシフト方式5軸補正(5.5段) | ― | |
動画性能 |
DCI4K(4096×2160) 400Mbps 60分まで |
Full HD(1920×1080)36Mbps 30分まで |
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Bluetooth | Bluetooth Ver. 4.2 | ― | |
入出力端子 |
USB Type-C HDMIマイクロ端子(Type D) φ3.5mmマイク端子 φ3.5mmヘッドホン端子 φ2.5mmリモートレリーズ端子 DC IN 15V端子 ホットシュー シンクロターミナル |
USB3.0(High-Speed) HDMIマイクロ端子(Type D) φ3.5mmマイク端子 φ3.5mmヘッドホン端子 φ2.5mmリモートレリ ーズ端子 DC IN 15V端子 ホットシュー シンクロターミナル |
USB Type-C HDMIマイクロ端子(Type D) φ2.5mm マイク/リモートレリーズ端子 DC IN 15V端子 ホットシュー シンクロターミナル |
電源 |
充電式バッテリー NP-T125 2個付属 静止画撮影可能枚数:約800枚 実撮影電池寿命:[4K]約100分 |
充電式バッテリー NP-T125 1個付属 静止画撮影可能枚数:約400枚 実撮影電池寿命:[Full HD]約70分 |
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本体外形寸法 |
(幅)156.2mm (高さ)144.0mm (奥行き)75.1mm ※EVF非装着時 |
(幅)147.5mm (高さ)94.2mm (奥行き)91.4mm ※EVF非装着時 |
(幅)160.7mm (高さ)96.5mm (奥行き)66.4mm |
質量 | 約1,320g(付属バッテリー2個、 メモリーカード含む) | 約825g(付属バッテリー、 メモリーカード含む) | 約775g(付属バッテリー、 メモリーカード含む) |
PHOTO GALLERY
世界をキャプチャーする喜び
なにはともあれ1億画素。本機の魅力はここに尽きますし、見てもらえれば問答無用なのです。クリックで原寸画像が開きますので、メモリと通信量に注意してアクセスいただき、穴のあくまでご覧ください。苔の一本一本まで認識できる解像力はまさに圧巻ですよね。それとともに被写界深度の薄さもお分かりになるでしょう。一枚撮って眺めてみればラージフォーマットならではの写りを体感でき、そしてまた襟を正す必要性にも気付かされると思います。これだけ写るのだからキチンと撮らなくちゃ、と。状況が許すなら三脚に据えてじっくりと一枚に取り組みたいですし、画面をどう構成するか、ピント位置をどこに置くか等々、写真の基本に立ち返ることになるはずです。
日の差し込まぬ場所で朽ちてゆく木々と、それを内包して営みをつづける森のすがた。まるで手で触れられるような、その場の匂いや音を感じられるような錯覚を覚えてしまいます。えも言われぬ生々しさは画像に含まれる情報量の多さゆえ。それは緻密な描写ばかりでなく、豊富なトーンにもつながっていきます。完全レビューブックのギャラリーでは見開きページに印刷して掲載しておりますので、どうぞ見比べてみてください。
ラージフォーマットならではのリッチな描写はマクロ撮影でも活きてきます。こちらの写真、小さな葉っぱの表面にある産毛のようなものが1本1本しっかりと描かれているのです。パソコンで開いて拡大すればそれはまるでルーペで覗く世界のよう。豊かなボケも相まってピント面の被写体が際立ちます。
超高画素機ということで撮影には神経を使いますが、ボディ内手ブレ補正機構の搭載もあって手持ち撮影も積極的に使えます。光量の乏しいシーンでの接写でしたが、ISO感度を少し上げるだけで対応できました。レンズを通して苔の合間にダイブすれば、そこはまるで別の星です。
日常をラージフォーマットで捉えてみる
GFX 50Sや50Rに比べれば大柄なボディですが、一眼レフの延長のようなサイズ感ですから気楽な撮り歩きにも活躍できます。富士フイルムお得意のフィルムシミュレーションも使えて、臆せず使えばこの上なく贅沢なスナップカメラに。凄まじい解像度とそれに裏打ちされた豊かなトーンが何気ない1カットを驚きの作品に変えてくれることでしょう。写真を撮る目的が記憶や記録であるなら、確かな表現力を持つGFX 100であれば頼もしいことこの上ありません。
こういう写真に1億画素が必要かどうか。GFX 100を手にする紳士ならそのような問いに囚われることなく、ただ愛しい被写体にレンズを向ければいいのです。片付いていない部屋も背景にさらりと溶かしてしまいましょう。
決してコンディションのいい状況ではなかったのですが、日の落ちる時間帯の山並みを階調豊かに描いてくれました。こうしたカットひとつとっても、遠くの山を拡大していけば葉っぱが識別できるという描写力なのです。
高感度もなかなかのもので、ISO6400は十分に使えるクオリティ。夜もイケます。中判カメラで高感度耐性が高いというのは技術革新の賜物と言いましょうか、シンプルにうれしいことですね。シャッタースピードに余裕ができることで撮影可能な場面も増え、歩留まりも間違いなく上がります。
さてピクセルシフトマルチショット機能です。2020年11月に公開されたファームウェア Ver.3.00 に搭載された機能で、センサーの位置を0.5画素ずつずらしながら16枚のRAWファイル撮影を行い、撮影後に専用ソフトウエア「Pixel Shift Combiner」で合成処理をする事で約4億画素の超高精細な画像を生成するというもの。上記写真の中央付近、足跡のなかに小さな白い貝殻があるのですが、このあたりを拡大して比べてみます。
左が通常撮影による1億画素の写真、右がピクセルシフトマルチショットによる4億画素の写真です。砂粒ひとつひとつが明瞭に、より精細に描かれているのがお分かりになるでしょうか。いやはや凄まじい描写力です。
ただし注意点もあります。まずデータ量が膨大になること。専用ソフトで合成したRAWファイルは1ファイルで2GB近くとなり、少々古いコンピュータでは現像のためにRAWファイルを開くことすらできませんでした。また16枚のショットを後合成するという方法であるため、動いてしまう被写体は対象として使えません。静物、屋内の撮影で用いるのが妥当であり、やはり主な用途はアーカイブということになるでしょう。条件をクリアできれば見たことのない世界が得られますから、ぜひお試しいただきたいと思います。
撮れる世界が確かに変わる
得られた写真を見ればぐうの音もなく受け入れるしかありません。1億画素の大型センサーが描く世界は精細でリッチ。このカメラがなければ得られないものが確かにあり、このカメラがあれば撮れてしまう画があるわけです。道具だけで写真の良し悪しが決まることはありませんが、道具によって決まる限界値のようなものはありますし、GFX 100がそれを押し上げてしまうことも確か。四の五の言わずに手にしてしまえば、撮影結果は一段も二段も次元の上がったクオリティとなるでしょう。フィルム時代、35mm判から中判へとステップアップするときには多少なりとも機動性が犠牲になったものですが、ボディ内手ブレ補正の搭載や高感度耐性の向上もあってあまり神経質にならずに使えるのが嬉しいところ。丁寧に撮るに越したことはないのですが、気負わずにチャレンジしてみていただきたいと思います。
GFX 50S / 50Rでラージフォーマットを手の届く存在にしたかと思えば、GFX 100では1億画素という世界を見せてしまう。知ってしまえば後戻りができなくなるのだから感覚とは厄介なものですね。どうか覚悟を決めて飛び込んでください。このカメラでなければ撮れない世界というものを、間違いなく感じさせてくれる一台です。
( 2021.01.19 )
100メガ(ピクセル)ショック!と言わずにはいられない。拡大して眺めるほどに背筋が震える驚きを、どうぞお楽しみください。
作例でも利用している広角単焦点レンズ。文句なしに写ります。
豊かなボケと表現を得たいなら大口径のこちらを。
マクロ撮影が楽しめる単焦点レンズ。GFX 100なら顕微鏡レベル!?
使いやすいズームレンズならこちらでしょう。この1本だけでスナップというのもいいですね。
望遠で世界を切り抜くにはこちら。結局レンズも色々欲しくなりますね・・・。
紙に印刷されたGFX 100のギャラリーほか、各種レンズの作例がずらり。在庫があるうちに是非お求めを!
電子書籍のみのバージョンもございます。GFX 100発売当初の開発者インタビューも併せてご覧ください。