PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Carl Zeiss Otus 1.4/100

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

「Otus」は、何にも妥協せず優れた性能と画質を徹底的に追及して作られた、ツァイスが最高の性能を謳うレンズシリーズです。今回発売となるのは100mm。通常「中望遠」と呼ばれる焦点距離域ですが、ツァイスのメーカーウェブサイトでは「望遠焦点距離レンズ」と記載されています。55mm、85mm、28mmとリリースしてきたOtusシリーズも、これが最後の一本になるのか……?という匂いも感じませんか。100mmという焦点距離付近はパースがほぼかからないためにマクロレンズが比較的多くラインナップされています。ポートレートや花などの撮影では被写体との距離が取りやすく、やや長めの焦点距離ですから被写界深度も浅くなり、美しいボケを楽しむことができるのです。また、中望遠域に入ってくる100mmでは圧縮効果も得られ、 風景撮影でも奥行き方向が圧縮されギュっと詰まった独特の表現をすることが可能になってきます。本レンズは、中望遠域の大口径レンズに広く使われることの多いゾナータイプ。しかもアポクロマート仕様の「Apo Sonnar」です。11群14枚のレンズ構成のうち、異常部分分散ガラスを9枚採用。軸上色収差を抑え、カラーフリンジは“存在しない”とツァイスは記しています。さらに非球面レンズが組み合わされることで球面収差を除去し、各光学収差の軽減にも貢献しているとのこと。一切の妥協をせずに作った結果、レンズは決して小さくはありません。その重量は1405g。しかもマニュアルフォーカスですから、じっくりと被写体に向き合うという撮り方しかできないのも事実。ですが、Otusでしか撮れない画が間違いなくあります。今回レビューをお届けするのはキヤノンEFマウント用。作例を見ていただき、その実力と、世界観を感じてください。

( Photography : Z II / Text : Z II & Rica )

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Otusシリーズの100mmと聞くだけで、まず気になるのは、一体どれほどのサイズなのか? ということでした。ある程度は想定していましたが、いざ手渡されるとズシリと感じる金属の塊感と立派な鏡筒と前玉、まさに王者の風格にニヤリ。Otusが軽くて小さかったら逆に拍子抜けでしょう。半光沢のスベスベとした質感も心地よく、手になじむゴム製のピントリングを回すと程よいトルクで回転はとても滑らか。まずは人を撮るとどう写るかを見たいと思い、なじみのお店のシェフに登場していただきました。シェフの力強い存在感とOtus 1.4/100 ZEとが、どんな化学反応を起こすのかと、ワクワクしながらシャッターを切ると、まず驚いたのは肌の質感描写がものすごいこと。緻密な色情報が凝縮され、みっしりと写っている印象です。ピントピークは極薄で合致させるのに非常に神経を使いますが、それもマニュアルフォーカスレンズの醍醐味というもの。完璧に合致した時の破壊力は絶大です。描写はしっかりとした力強い線を描いているように感じ、まさに今回のシェフとマッチしていました。ボケは前後とも上質で申し分なく、特に前ボケがきれいな印象を受けました。何をどう撮っても質感、ボケ、ヌケともに非常によく、その描写に気持ちが高揚するレンズです。


Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

最短撮影距離は1mと、静物に寄って撮るというよりは、静物の背景を含めたシーンを写すという感じでしょうか。最短で撮影するとボケは非常に大きくなりますが、クセがなく前後ともに滑らかでとても美しいです。Otus 1.4/100の鮮烈なピントピークは撮影者の意図した通りに見せたいところを際立たせてくれます。この特別な写りにただただ驚くばかりでした。


Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Nikon D850, ZEISS Otus 1.4/100, Photo by Z II

Otus 1.4/100 ZEの写りを最大限に引き出すため、キヤノンの一眼レフで最も高画素機のEOS 5Ds Rを使用して撮影しました。5000万画素を超えるセンサーに対しても一切の甘さを感じさせない描写は、まさに唯一無二という言葉がふさわしいでしょう。逆光に対してもハレーションや、ゴーストなどは全く発生せず、悪条件をむしろ楽しんでいるかのようです。良いレンズはその場の空気感まで描写するといいますが、その言葉通り、温度、湿度、匂いまで、まるで視覚情報から脳が嗅覚や触覚までを感じてしまうほどの写りです。そんな、ある意味トリックアートとも言うべきリアルな描写に、Otusの真髄を垣間見ました。


  • PHOTO YODOBASHI冒頭のポートレートカットでは、このレンズの“すごみ”を伝えたいために、あえて強面な表情をしていただいたのですが、実はとても明るくお茶目なシェフ。目尻のシワが人柄の良さを物語っていますね。
  • PHOTO YODOBASHIあえて絞ってF5.6で最短の1mで撮影。立体感と質感、色や模様を細部まで描写しています。そこにあるものを見ているかのような錯覚を起こすほどの写りです。

PHOTO YODOBASHI

八面玲瓏を絵に描いたような写りに心が洗われる

何を持って「最高の性能」というのか。漠然とした疑問は、一点の曇りもないその描写を見れば自ずと解決します。考えうるすべての収差を極限まで抑え込んだアポクロマート仕様のOtus 1.4/100 ZE。このレンズで切り取る世界には、一瞬の時を、音や温度や匂いまで感じられるかのようなリアリティを伴って閉じ込める力があるのです。写真は機材だけが撮るものではない。そうは分かっていても、自分の腕を磨くよりも先にこのレンズが欲しくなる。その気持ちは正解です。ピントをしかるべき場所にしっかりと合わせ、シャッターボタンを押すだけで、この描写が手に入るのですから。開放からピントピークのキレにため息をつき、絞れば撮り手にはよく見えていなかったものまでもが白日のもとにさらされてしまいます(笑)。ポートレートはもちろん、モノから風景までありとあらゆるシーンをOtusの世界にしてしまう一本。自身が写真に込める思いにブレがあれば、驚異的な写りにその思いをのっとられてしまうでしょう。撮り手がレンズを選ぶのではなく、もしかすると、Otusが撮り手を呼ぶのかもしれません。この描写が新たな伝説を作る。間違いなく、世界最高峰のレンズです。


( 2019.05.17 )

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一切の妥協を排し、このクラスのベストともいえる仕上がりのレンズは、中判システムに匹敵する画質があなたに大きな驚きをもたらすでしょう。

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