Carl Zeiss Milvus 2/50M

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

フルサイズ・キヤノンEFマウント向けの「ZEISS Milvus 2/50M」をご紹介します。ツァイスの写真用レンズには鳥の名前を由来とするシリーズ名がつけられており、こちらのフルサイズ一眼レフ向けのMilvusシリーズでは、ラテン語でトビの名前が用いられているそうです。モダンなデザインとなった鏡胴には「Makro Planar 2/50」と刻印されており、これは旧製品であるClassicシリーズのMakro-Planar T* 2/50と同じ。レンズ構成も同一とのことですが、フィルム時代の設計をベースにデジタルに最適化させることで光学性能も向上しているそうです。

本レンズの特徴についても紹介しておきましょう。標準域のマクロレンズとしては最も明るいF2の開放値を持ち、常用の標準レンズとしても遜色ない明るさを誇ります。しかも"寄れるレンズ"として旧モデルから高い人気のレンズでした。最短撮影距離は0.24m。一般的な50mmレンズが0.45m前後ですから、約半分の距離まで被写体に迫ることができるのは常用レンズとして使いでがありますね。撮影倍率は1:2。被写体にいっぱいまで寄って、名刺より小さな48×72mmの範囲を写し取れるということになります。使い方にもよりますが、小さな昆虫や植物を画面いっぱいに撮影するようなマクロ撮影でなければ、多くの場合必要にして十分なレベルではないでしょうか。

( Photography : KIMURAX / Text : KIMURAX & Naz )

まずは最短24㎝でのカットから。ピント面の蝶との距離はフード先からだと大体10cmくらいでしたから、息を潜めながらハラハラドキドキ。よく逃げずにじっとしていてくれたものです。一般的な50㎜レンズでは寄りきれないマクロレンズならではの世界感ですよね。詳細に捉えたフワフワとした毛の質感、そしてとろけるような前後のボケ味は、ファインダーを覗いているそばから撮影者の心を躍らせます。

みずみずしさがたっぷりと伝わってきます。色乗り艶感、申し分ありませんね。

本レンズを編集部で手にしてすぐに、素振りのつもりで撮っていた一枚。棚に置いてあったままのところをパチリとやったものですから、結構ホコリが…。PCで確認してびっくり（笑）。図らずもそんな細部まで容赦なく描き切ってしまうリアル。これは気が抜けない描写力です。

風防ガラスやステンレス製のバンドの硬い質感、その冷たさまでも伝わってきそうです。グイっと拡大して見ていけばさすがに色収差も出てはいますが、さほど目くじらを立てるレベルではないでしょう。色収差はないに越したことはないでしょうが、ゼロである必要もないと個人的には思います。そのためにびっくりするような価格になっては、そのレンズを手にすることさえも叶わないわけですからね。赤の発色も実際の色合いを忠実に再現しており好感が持てます。

単焦点レンズらしいヌケのよい描写。ガラスへの写り込み、ガラス越しに見える構造体まで忠実にトレースしています。

なんの変哲もない立体駐車場ですが、光に満ちたダイナミックな雲の表情おかげでより一層印象的なカットに仕上がりました。マクロレンズの緻密な描写力は、遠景撮影にも威力を発揮することがお判りいただけるでしょう。フォーカスした車はビシッとシャープな像を結んでおり、フェンス越しながらその存在感はなかなかなものです。

少々絞り込んでも深度が浅いですね。画面の隅までしっかり結像しています。

う〜むこの立体感、たまりません。

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守備範囲の広さに驚く標準レンズです。

いかがでしょうか。ツァイスらしい濃厚な色乗り、しっかりとした密度を感じる描写に惚れ惚れします。遠景はもちろんのこと、近接でも隅々まで描写は安定しており、この守備範囲の広さは並の標準レンズでは得られないものです。信頼感ある総金属製の鏡胴は造りもよく、ヘリコイドの滑らかさや絶妙なトルク感はマニュアルフォーカスレンズならではのもの。実用性だけではなく趣味性も高いレンズですから、じっくりとピントを追い込んでいくような撮影プロセスもしっかり楽しみましょう。たっぷりと取られたヘリコイドの回転角ゆえ動きものだけ少し苦手ではありますが、ピントのキレがよいため、明るいファインダーでも想像以上にスムーズに追い込むことができます。ツァイス製の特殊レンズでこの写り、この造りとなれば少々値が張るのも仕方がありません。手にしてみれば『なるほどなあ』と撮り手を唸らせてくれる1本。利用頻度を高められる標準レンズですから、きっと想像以上の活躍を見せて、いや魅せてくれるのではないでしょうか。

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( 2019.07.11 )