SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

シグマがEOS Mシステムに討ち入りです。送り込んだのは3本の刺客たち。いずれもF1.4の大口径単焦点レンズ（16mm、30mm、56mm）ですが、こちらでご紹介する「SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary」は、その中核をなす標準レンズに相当します。以前PYでは同レンズを別マウントにて試写しておりますが、Artラインに匹敵する描写性能に唸ったことを鮮明に覚えています。また、高屈折率高分散ガラスや非球面レンズといった高性能ガラスやインナーフォーカスを採用することで、高画質、小型化、取り回しの良さを実現。このあたりはContemporaryラインの真骨頂とも言えるでしょう。さらにEOS Mシステムでは35mm判換算で48mm相当という絶妙な画角が得られますから、あれこれと使いみちを考えるのが楽しくなりそうですよ。早速いってみましょう。

( Photography : KIMURAX / Text : TAK )

絞り開放、最短撮影距離付近での撮影ですが、ピントピークのシャープさも十分に感じられ、アウトフォーカスエリアの描写も雰囲気があっていいですね。フルサイズ換算でいうとF2ぐらいのボケ量になるでしょうか。ただ、あまりボケすぎると色と化してしまいますが、周辺の様子をわからせつつ整理してあげるならこのぐらいがいい塩梅なのかも知れません。

フォーカスした葉までの距離は50cm前後でしたが、素晴らしい解像力で捉えています。木漏れ日とはいえ、真昼間の強い日差しを入れたものですから薄いパープルフリンジが出ていますね。画像処理でも十分対応できるレベルですが、これはこれでその瞬間の眩しさがリアルに伝わるのではないでしょうか。そして、まるで鱗のように幾重にも連なる玉ボケも印象的な画作りに一役買ってくれました。

絞った画もご覧いただきましょう。光源を画面の中央に据えたり、アングルを工夫すればゴーストを画面から追い出すこともできますが、あえて入れることで臨場感が出ることもあります。フレアやゴーストを徹底的に抑え込んだ高級レンズもそれはそれで素晴らしいものですが、秋晴れの太陽をダイレクトに感じられる写真ならではの表現ではないでしょうか。

開放からしっかりシャープな印象のレンズですが、少し絞り込むことでそのキレはさらに増します。アイコニックな造形を引き立てる解像力とボケの絶妙なバランス。手が触れるくらいまで近づかないと見えないような細かい傷までもが、容赦なく徹底的に描き込まれているあたりはさすがです。

やはり被写界深度は浅いのですがボケの発生はなめらか。その自然なボケ味と量感により、ふと中央の一体を見つめているかのような仕上がりです。

ハッとさせられるような素晴らしいキレのある描写は説得力があります。強烈な日差しだったので上腕のハイライトが飛んでいますが、肘のあたりはきりっとクリアに描き切っていますね。光に溶け込んでしまいそうなビルの雰囲気もいいと思います。

見ための印象に合わせ、露出はアンダー目での撮影。シャドーエリアのトーンの連なりがよいですね。さりげなく、それでいて主要被写体の存在感もちゃんと感じられるのですから。

ボディ側の性能に負うところもありますが、これだけのハイコントラストなシーンでもかなり粘ってくれます。レンズのポテンシャルは、こういったところにも感じるのですよね。

EOS Mシステムの層を厚くする、シグマの標準レンズ。

既に他のマウントでも高評価を得ている本レンズは、ご覧の通り、EOS Mシステムとの相性もバッチリ。素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。シグマらしいキリッとした解像力と量感豊かなボケのコンビネーションは破壊力抜群。また、濃厚な色再現や豊かな階調表現で、これ一本で撮り切りたくなるほどの深みのある表現力を持っています。もちろんキットズームとコンビで使っても、表現の幅がグンと広がること間違いなし。カメラ側によるレンズ光学補正（今回使用したEOS M5は、周辺光量補正、色収差補正、回折補正をサポート）もしっかりと効いてくれるのも心強いですし、歪曲収差もソフトウェアでサクッと補正可能です。サイズもお値段もコンパクトですから、もはや導入しない理由が見つかりません。浅い被写界深度や、ズームできないが故の撮影の奥深さを存分に味わえるのが大口径単焦点レンズの醍醐味。本レンズで、気軽に、どっぷりと浸っていただきたいと思います。

( 2019.11.13 )