PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SORI2 - 新宿光學總合研究所

第3話
フィルターの構造についてちょっと
ガラス板と枠しかないけど、でもそこにはいろいろある

ガラスのひみつ

いちばんシンプルなフィルターを例に説明しようと思うけど、それは何だと思う?

オヤカタ関
3号

それはやはり「何も足さない、何も引かない」のプロテクトフィルターでござろう。

そうだね。でも「何も足さない、何も引かない」って、実は簡単なことではないんだよ。

オヤカタ関
1号

えー? そうなんですか? 何も効果を与えないってことは、要するに何もしなくていいってことでしょう? ただの素通しのガラスを嵌めれば、それだけで解決するように思うけど。

ほら、その程度の理解だ。こりゃ教え甲斐があるなあ。「あたかも何も無いかのように」がプロテクトフィルターに求められる要件だけど、でも実際には「ある」んだよね?

オヤカタ関
2号

そうですね。そこにはガラス板が存在しています。でも、それは何の効果も与えない無色透明のガラスだから・・・

そこにガラス板が存在しているということは、光の反射が起きる。反射というのはつまり、光のロスだ。反射によって、そこを通り抜ける光の量が減ってしまう。運良く通り抜けた光だって、今度はレンズの前玉との間で反射を繰り返し、ゴーストを発生させる原因となる。

オヤカタ関
3号

おお、そういうことでござるか。

光がガラス板を通り抜ける際に、光の屈折も起きます。

カイハツ北村
4号

シーズン1の最初の方でやったなあ。

ガラスの表面が完全な平面ではなかったら、あるいはガラス自体の組成に問題があったら、像が歪んだり、本来そのレンズが持っているはずの解像力に影響を与えてしまう。

オヤカタ関
1号

そりゃそうだ。

波長によって光の通り方に違いがあったとしたら、色味の偏りが起きたり、色収差を発生させてしまいます。

カイハツ北村
2号

そうかあ。そこにたった1枚のガラス板があるだけで、実際にはいろんな「好まざる影響」が発生してしまうんですね。

それらをきちんと解決しない限り、「何も足さない、何も引かない」は実現できない。だって考えてもごらんよ。レンズの設計者が苦労して完成させたレンズに、あろうことか、もう1枚ガラスを追加してしまうんだよ?

オヤカタ関
4号

勝手に。断りもなく。

よく考えたらとんでもないことなんだよ。

オヤカタ関
2号

レンズ設計者にしたら、内心は頼むからやめてくれ、という感じなのかな?

もしかしたらそうかもしれないね。だからこそ、そのレンズが本来持っている性能や味わいを損ねないフィルターを作る必要があるってわけ。

オヤカタ関
4号

マルミフィルターガイドブック」を見ると、プロテクト目的のフィルターはフィルム時代からありましたが、当時と今で違いはありますか?

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(画像のクリックで「フィルターガイドブック」をご覧いただけます)

違いがあるかって? 違いしかないよ。

オヤカタ関
1号

なるほど。もう完全に別物なんですね。どんなふうに違うのですか?

ひとことで言えば、デジタルになってレンズの性能が飛躍的に向上したぶん、フィルターもそれに合わせて大幅に性能を上げる必要があった、ってことです。

カイハツ北村
2号

デジタルになってレンズの性能が急に上がった話はシーズン1でも出てきたわね。フィルムとデジタルを机の上に喩えて。

3号

散らかった机(フィルム)ではちょっとぐらいゴミ(収差)があっても目立たないけど、きれいな机(デジタル)では、ほんの少し埃があるだけでも目立つ、という話でござったな。

フィルムは完全な平面ではないけど、デジタルカメラの撮像センサーは完全な平面を保っている。それだけでも大変な違いで、そりゃあレンズの性能はアップするよ。まぁそんな感じで、フィルターもデジタルに対応することが求められたってわけ。

オヤカタ関

ちなみに世界で初めて「デジタル対応」を謳ったプロテクトフィルターを作ったのって、実はマルミなんですよ(DHGシリーズ/2003年)。

藤原室長
4号

え、そうなんですか!

3号

具体的にはどのへんが「デジタル対応」なんでござるか?

精度の高い研磨によって、ガラス表面の平滑性を極限まで高めたこと。そして効果的なコーティングを何層も重ねて、光の反射率を極限まで下げたこと。まずはこの二つが基本。その上で、汚れをつきにくくする防汚性を高めたり、ゴミがつく原因となる静電気の発生を抑える、撥水性を高めるといった要素が加わっています。いずれもレンズと、高画素化が進んだセンサーの性能を生かすためのもの。

カイハツ北村
2号

そういう配慮は、プロテクトフィルター以外のフィルターにも同じことが言えますよね?

その通り。何らかの効果を与えるためのフィルターだって、その効果以外は「何も足さない。何も引かない」が大原則。フィルターの種類によって細かい違いはあるけど、上の話はすべてのフィルターに等しく当てはまるね。

オヤカタ関
1号

プロテクトフィルターについてはだいたい分かりましたが、それ以外のフィルターではどんなガラス板が使われているんですか?

フィルターの種類によって多少の違いはあれど、面研磨とコーティングが施されている点はどのフィルターも同じ。それ以外で言うと、大きく3つに分けられます。

  • 何かを混ぜ込んだガラス
  • 何かを貼り合わせたガラス
  • 形状に何か細工をしたガラス

カイハツ北村
1号

その「何か」が問題なんですけどね。

そこは企業秘密だったり、秘密じゃなかったり。まあ、ここであんまり詳しく説明し過ぎてもアレなんで、いずれ。

カイハツ北村

PHOTO YODOBASHI

さて、お次はフィルター枠について。

オヤカタ関