PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SAMYANG AF 35mm F1.4 FE
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
他社に先駆けてソニーEマウント向けフルサイズ対応の高性能レンズを精力的に投入している韓国・サムヤンから、2018年1月に発売となりました「AF 35mm F1.4 FE」の実写レビューをお届けしたいと思います。フルサイズ対応の35mmレンズとしては、先にF2.8の非常にコンパクトなモデルが登場していましたが、今回ご紹介するモデルはF1.4の大口径。全長115mm、質量645gの立派な鏡胴は、見るからに携行性よりも光学性能へ振ったと感じさせる出で立ちだけに期待も膨らみます。フルサイズEマウントの35mm F1.4といえば、純正品となる「SONY SEL35F14Z Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA」を思い浮かべる方も多いでしょう。ZEISSのエンブレムを冠した言わずと知れた超高性能レンズですが、そのプライスも相当気合いの入ったもの。実際に「手が出ない」という方も多いのではないかと思います。実は私もそのひとり。お財布の事情により憧れという存在からなかなか先へは進めていません(苦笑)。一方で本レンズは、そのDistagonの約1/3という非常に現実的かつ魅力的なプライス。各社力の入ったモデルの多い同スペックのレンズではありますが、その中でこのレンズの実力はいかがなものか。探っていきたいと思います。
( Photography & Text : Naz )
Blue, Green and Street
歪曲収差はJPEGでは良好に補正されていますが、RAWでは少々目立つタル型に。ボディの電子補正をONにして使う前提のようです。ボディの手ブレ補正を使用する場合は、焦点距離情報の設定が必要でした(非連動)。
シャープで解像力の高いレンズではありますが、非球面レンズの影響でしょうか。こちらのカットのように撮影条件によっては背景がざわつくこともありましたが、昔の大口径レンズのような二線ボケになることはなく、むしろよく粘っているように感じます。ピントの合った枝と葉の繊細な描写は美しいですね。
広角レンズとはいえ、ピントを一点に置くということができるのは、大口径レンズだからこそ。
少しシャドウを強調してみました。光を捉えるのがとても上手いレンズに感じます。
富津岬の展望台より。東京湾の海も光が注ぐとこれほどの透明感を感じられる海になります。干潮時には沖合に白砂の浜が浮かんできます。
右下の水面あたりにピントを置きました。フルサイズフォーマットらしく、開放での遠景は被写界深度の外へ。カメラの性能もありますが、ハイライトのトーンがよく残っています。
レザースニーカーの質感描写、階段の立体感も申し分ありません。
強い光源が入る条件では、ご覧の通り右下にゴーストが現れています。しかし、撮影を通して「逆光に弱い」という印象はありませんでした。
高性能なレンズらしい、“世界”を持っている1本。
いかがでしょうか。9群11枚の現代的かつ贅沢なレンズ構成。非球面レンズを2枚、高屈折ガラスも2枚採用したその光学性能は、ご覧の通り目を見張るものがあります。開放でこそ、四隅の描写にやや甘く見えるところもありましたが、1〜2段絞れば解像力の高さは中心部だけではなく、画面全域へ行き渡り、すっきりとクリアな描写と相まってとても好感が持てるものです。ボケも上質で美しいです。様々なレンズを使ってみて、しみじみよいレンズだなと感じるのは、素通しのガラスのようにただクリアに写るだけではなく、造り手の哲学を感じるような世界を持っているレンズ。本レンズもその1本であると感じました。
使用感についても触れておきましょう。純正レンズにも似たシンプルなデザインはα7/α9のボディともよく合う印象です。純正レンズにあるようなAF/MF切り替えスイッチやフォーカスホールドボタン、絞りリング等は省略されていますが、大きなピントリングの操作性もよく外装の質感も高級感のあるもの。フィルター径67mmと大口径かつ重量感のあるレンズですから、少々レンズ側に重心があるものの、一眼レフのシステムから考えれば十分に軽量かつコンパクトと言えるでしょう。そしてはAFは、超音波リニアモーターを採用し俊敏かつ静粛。狙ったところへすっと合うフォーカスはとても気持ちのよいものでした。ただし、動画撮影ではモーターの駆動音をカメラ本体のマイクが拾ってしまうようで、外部マイクをレンズから離して使用するなど対策が必要です。またフォーカスリングは素早く回すと大きく、ゆっくり回すと小さくフォーカスが移動するため、大口径レンズのシビアなピント合わせでストレスを感じない扱いやすさにも配慮されていました。
高感度性能が飛躍的に高まった昨今のデジタルカメラでは、大口径広角レンズは暗所撮影のものとしてではなくなり、ポートレート撮影などボケ量がほしいシーンのために存在するものとなりました。携行性など実用を踏まえればここまでの大口径レンズはそれほど出番がないかもしれません。とはいえ、高性能なレンズは撮影意欲をブーストしてくれる手っ取り早い手段であるのもご存じの通り。それをこのプライスで手に入れられるのですから、「35mm F1.4」を憧れるだけではなく、実際に手にして試してみる価値があるのではないかと思います。少々大きくて重いことが気になる方には、兄弟レンズである「AF 35mm F2.8 FE」とセットで購入してみるのも悪くないでしょう(笑)。35mmの2本とも純正品(しかもZEISS仕様)とスペック合わせてくるあたり、製品に自信があるということなのかもしれません。ぜひ本レンズもフルサイズEマウント広角レンズの有力な選択肢に加えてみていただければと思います。
電柱など輝度差の大きな輪郭に色収差が見えますが、拡大しないとなかなかわからないレベル。後処理で十分対応できるでしょう。
クリックで原寸画像を表示します。開放から2段絞ったF2.8。釣り人の網まで写っています。α9は24MPのセンサーですから、42MPのα7R IIIならより高い解像感が得られるでしょう。
近接ではピントピークの前後は溶けるように大きくボケます。レンズ全長がそれなりにあっての最短は0.3mですから、相当寄れる印象を持ちました。
身の回りにあるこんなものにでも“世界”を作ってくれる力があります。それが35mm F1.4の世界であり、高性能なレンズが持つ世界ではないでしょうか。
(サムネイル画像のクリックで大きな画像をご覧いただけます)
( 2018.11.06 )
少々大きく重くとも、それを受け入れてしまう写りがあります。その“世界”へ足を踏み入れてみる最初の1本にいかがでしょうか。
ケンコーのプロテクトフィルター。強化ガラスを採用し、ZRコートにより汚れに強く、透過率の高いハイエンドモデルです。そう、こちらが純正品。