PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SONY α7S, ZEISS Batis 2.8/135, Photo by K

忘れ得ぬ名機たち Vo.2
SONY α7S

どうも琴線に触れて仕方なかった、SONY α7S。予約開始直後に予約、発売日に手に入れました。今回この機種を振り返るのにHDDに記録している写真をひっくり返してみました。すると、フォトキナ取材時のカットが過去2回分出てくるのです。フォトキナはドイツ・ケルンで2年に一度行われる世界的なカメラ見本市。ちょうど今年開催される予定ですが、この機種を手にしてもう6年も経つのだと月日の流れを感じた次第です。取材等々の撮影仕事でよく持ち出されるカメラであり、プライベートでもよく握るカメラです。このあたりの理由について、写真とともにご紹介したいと思います。

( Photography : K, TA / Text : K )

PHOTO YODOBASHI

35mmフルサイズに、有効1220万画素。独自のアプローチに惹き付けられる。

申しあげるまでもないのですが、カメラやレンズ(くくって「機材」)が大好きです。おおよそどんな機材でも好きです。機材そのものも好きなのですが、撮ることも同じぐらいに好きです。似た話で車も大好きなのですが、4つタイヤがついてる乗り物なら、おおよそなんでも好きです。さらに、走ることも同じぐらいに好きです。なにが申しあげたいかというと、カメラならα7Sのようなものは、必ず試したくなります。車ならば、どちらかというと古い車が好みであっても、テスラのようなものにも乗ってみたい。ソニーの特集でありながら、他社製カメラの話をするのもなんですが、たとえばシグマのFoveonセンサー搭載機などは使ってみたくて仕方がありません。

なんとなく、伝わりますか? つまり・・そういうことです(なんのこっちゃ)
35mmフルサイズで、わざわざ有効1220万画素。もう、これだけで手にしたくて仕方がありません。高画素であればあるほど見えてくる世界もあろうかと思いますが、その反対はダメなんだろうか。ひとつハッキリしていることは、まだこの世界は発展途上であるということ。目的を絞り込んで、あえて設定するスペック。試してみたいじゃないですか。もちろん、Nikon D3や、もっと遡ればCanon EOS-1DS(初代)やEOS-1Dあたりの体験から来る「こうじゃないかな」という想像はありましたが。

いつだって見たいのは、メーカーが「こうしたい」というもの。とりわけ独自のアプローチのものには目がないのです。そんなわけで手に入れたα7S。上の写真は実際に私が使用しているものです。このやたらとポップなストラップは2代目。あまりに使い込んで痛んでしまったのです。SONYの文字が塗りつぶされてるって? わりと、あらゆるカメラにこうしてしまうのです。ど派手にメーカー名が入ってないとダメですか? と実際にメーカーの皆さんに聞いたことがありますが、ドン!と入ってる方が嬉しいという人も多いそうです。そりゃそうですよね、人それぞれだ。話が脱線しましたが、「こうじゃないかな」という想像通り、ある種想像を超えて、このカメラは自分の相棒となってくれました。α7R II , α7R IIIと手に入れましたが、今でもα7シリーズを使うときには、このα7Sが第一選択となります。


SONY α7S, ZEISS Batis 1.8/85, Photo by K

いろんな「白」が写るカメラ

一昔前に比べれば、どのカメラも階調再現が豊かになりました。しかしα7Sの階調再現は別格のものを感じます。特に露出を開け気味にしたときの描写は、ネガフィルムのような包容力とポジフィルムの透明感が同居したような描写です。このカメラを手にして、自分の基準露出が一時的に1EV程度開け気味になりました。特にデジタル時代になってから、ポジでバーンと飛ばすような露出は禁忌というか、知らずそんなクセがついてしまっていたのですが。いや、開けるのが実に気持ちいいのです。

SONY α7S, SEL55F18Z FE 55mm F1.8 ZA, Photo by K

SONY α7S, SEL55F18Z FE 55mm F1.8 ZA, Photo by K

いいでしょ? 55mm F1.8の描写もまた素晴らしい。

SONY α7S, SEL55F18Z FE 55mm F1.8 ZA, Photo by K

バックの玉ボケの階調的な厚み、ヌケのよさ、そして、窓ガラス越しの撮影であることも伝わります。可愛らしい一輪挿しの花弁の表情も実に豊かに再現されています。

SONY α7S, SEL55F18Z FE 55mm F1.8 ZA, Photo by K

一緒に遊びたくなりますね、こりゃ。それにしても、55mm F1.8は素晴らしいレンズです。Eマウント機をご検討の皆さんは自動同時購入をおすすめいたします。こんなレンズを手にすると撮影が楽しくなります。


SONY α7S, SEL55F18Z FE 55mm F1.8 ZA, Photo by K

コンパクトなボディ、静音シャッター。

市井の光景を捉えるのには、ボディはできる限り小さいほうが好都合。とりあえずカメラを持ち歩かないことには写真は撮れませんから、小さく軽い方が何かと好都合です。

SONY α7S, ZEISS Batis 2.8/135, Photo by K

築地本願寺。次から次へと訪れる参拝者。海外の人たちも多いのですが、しんと静まりかえっています。135mmで少し距離のある所から、そもそもは立ち上がる煙を撮っていたのですが、女性がフレームに入ってきました。シャッターの音が困るシーンは結構あり、静音モードが搭載されていることも購入のきっかけとなりました。


SONY α7S, SEL55F18Z FE 55mm F1.8 ZA, Photo by K

少々のシーンは捉えられる、そんな安心感を与えてくれる高感度の強さ。

そもそもそう暗がりの中で撮影をすることはないのですが、それでも手持ち限界が上がる高感度の強いカメラはありがたい。フィルム時代の経験が長く、ISO 400程度でしか感度の選択ができないと頭にこびりついていると、ISO 3200あたりでも普通に撮れてしまう最近のカメラには驚くばかり。そもそもこれ程の感度になると脳内露出計は露出値をはじき出せません。α7Sに至っては、使うか使わないかはともかく、何十万というところまで感度を上げられるわけです。それはともかく「少々は撮れる」と思えること。相棒としてこれほど心強いことはありません。

SONY α7S, ZEISS Batis 1.8/85, Photo by K

ISO 2000で撮影。α7Sで驚くのは、ライブビューで撮影するカメラであるため、ただでさえセンサーには厳しいと思うのです。もちろん大きなセンサーに、画素あたりの面積の大きさというのは効くと思います。ただし、それだけではない画を感じます。設計思想自体が「これまで写せなかった領域を写せるように」といったところにあるのだと思われます。


SONY α7S, Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8 G, Photo by K

厚みのある階調再現が、リアルさを感じさせる

少々反則技ですが、マウントアダプターを介して他社製レンズの作例を。その昔、CONTAXにAFを搭載したレンジファインダーカメラがありました。CONTAX G1/G2というモデルです。そのマウントにBiogon 28mm F2.8というレンズがありますが、自分が好きなレンズの中で3本の指に入るレンズ。画面の中にびっしり濃密に再現される階調と、色乗りの良さ、コントラストの高さで見せる往年のZEISSを思わせます。また中央に比べて周辺が若干緩いあたりもトンネル効果を助長して面白い。このレンズをライカMマウント用に改造してM型ライカで使用していたのですが、デジタルで用いてもなかなかこのレンズのよさが出ませんでした。α7SにM型用レンズのマウントアダプターを取り付け、本レンズをマウント。使ってみると、あのポジフィルムのコテっとした色乗りとヌケそしてキレが蘇りました。しばらくこの組み合わせにドはまりとなりました。写真はポルシェ912。911は水平対向6気筒ですが、912は4気筒。911の廉価モデルという位置づけでしたが、リヤエンドにエンジンが搭載されるレイアウトのため、重量バランスから912を崇めるマニアもいるそうです。カラーリングは、古いドイツ車に多い原色のような赤で、これが薄っぺらく写るか上のカットのように写るか。なかなかこうは写らないのです。

SONY α7S, Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8 G, Photo by K

いや、いいなあ。簡単には使いたくない言葉ですが、空気が写るような。

SONY α7S, Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8 G, Photo by K

男子(オッサン)ですから、とりあえずポルシェやフェラーリは撮るでしょう! 暗がりの倉庫の中に佇むフェラーリF355。個人的にわかりやすく最も均整の取れた美しいフェラーリだと思います。蛍光灯が一灯だけといった大変暗い中での撮影でした。面倒くさいシチュエーションで、なかなか思った通りには写りませんが、まず露出は出た目からマイナス3段近くにセットして撮影を行います。そこから、現像ソフトで暗部を持ち上げるわけですが、画として成立するかはカメラの特性次第。

SONY α7S, SEL55F18Z FE 55mm F1.8 ZA, Photo by K

ガラッとシーンは変わって、スナップへ。ガツンとコントラストが付くシーンでも、、

SONY α7S, Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8 G, Photo by K

潮が舞い、光が拡散するシーンでも、、

SONY α7S, ZEISS Batis 1.8/85, Photo by K

船体に回る込む光、落ち込んでいく影、なかなかこうは再現されない。

SONY α7S, ZEISS Batis 1.8/85, Photo by K

ど派手な夕焼けに、アングル的にどうしても人と海面が被り、諦めそうなシーンでも撮ろうという気になります。


SONY α7S, ZEISS Batis 2.8/135, Photo by K

カメラ・写真に対しての原理的な希求を感じさせる1台

1人の機材好き、写真好きとして、メーカーにはこうであって欲しい。そんな膝を叩きたくなる1台です。カメラの発展の歴史は、これまで撮れなかったものを撮れるように、より誰にでも易しく、といったところだと思います。他にも似たようなコンセプトのカメラがなかったわけではありませんが、α7シリーズはミラーを廃してリアルタイムのスルー画を見ながらシャッターを切る、そもそもが易しくコンパクトで持ち運びやすいカメラシステムを実現しています。その上で、当時の標準モデル「α7」、そして高解像度を追った「α7R」、高ダイナミックレンジ・高感度の強い「α7S」と3機種をリリースしてきたわけです。どのモデルもこれまでにない世界を実現していると思いますが、とりわけてα7Sについては、真っ直ぐにカメラそして写真を見つめなければ出てこないモデルだと感じるのです。もちろん勢いも必要なのだと思いますが。1ユーザとしては、こんなカメラが出てくることに胸打たれますが、狙ったポイントできっちり力を発揮できているカメラだと思いますし、こちらも想像通りの手応えを感じさせてくれるカメラを手にできて、撮影が楽しくなりました。このα7SもII型が登場していますが、正直なところ買い換えの必要性を感じません。使えばII型ももちろんよいのです。あちらは手ブレ補正機構が実装されていますので、感度を上げずに、画の厚みをより享受できると思います。初期型もII型もどちらもよい。目的に合わせて選ぶことができるこの事実が、カメラとしての力とそこに込められたものを感じます。

今回編集部2名の写真でお届けしました。理由はかんたん。「え?持ってないの?」と編集部でウイルスをまき散らした結果です。よくある光景です。名機を振り返るというこの企画も今回で終了。実は3回を予定していました。4000万画素オーバーのあのセンサー搭載機を括ってお届けするつもりでしたが、まだ振り返るには早いカメラ達で、、α7Sでさえいまだに併売されています。また、何処かの機会でお届けしたいなと考えています。

さて、締めましょう。ありとあらゆる機種が存在しますが、α7Sを手にしてみてください。実は我々の写真生活で、特定の目的が無い限り1220万画素もあれば十分だったりします。ヨドバシカメラとしては大変申しあげにくいことではありますが、このカメラを手にすると口座残高がそれ以上減ることはないかも。モニターで画を見て「いいな〜」という毎日となるでしょう。その分レンズが増えるか・・。なんにせよ、この画の厚みはぜひ体験して頂きたい。そう思うのです。

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( 2018.05.25 )

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近い将来出るであろう「α7S III」から見ると2世代前。しかし、立派に現行商品であります。お手頃になって新品でもお求めやすくなりました。この写り、手にしてみしたいと思いませんか?

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フルサイズEマウントユーザーの必須アイテム55mm F1.8。F1.8と半段欲張らなかったことで、この写りをこのサイズに入れることができたのでしょう。まさに珠玉というべき1本です。

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