SIGMA sd Quattro | SHOOTING REPORT Vol.01

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2月に開催されたCP+2016で発表され、話題騒然となったSIGMA sd Quattroがついに発売となりました。このカメラが唯一無二と言われるのは、「Foveon（フォビオン）センサー」というシグマ独自のセンサーによるものです。このFoveonセンサーについて少しおさらいしますと、一般的なベイヤー型センサーは1画素ごとに光の中の赤・青・緑いずれかの明度だけを読むため、その画素の中で読めない他の色の情報はその周辺の画素から補うという手法で画を作り出します。対してFoveonセンサーは、1画素の中に光を読み取る3つの層があり、赤・青・緑すべての情報を取り込める仕組みなのです。つまり補完処理がない分、1画素1画素が情報を取りこぼさずに読み取っているので、曖昧さのないキレのある画を再現するのです（Quattro世代ではもう少し複雑な処理をしています）。その画の素晴らしさはdp Quattroシリーズでもご存知の通り。このセンサーにSAマウントレンズを組み合わせることで、いったいどんな写りになるのか、ワクワクせざるを得ません。このレビューではその凄まじい写りをより感じてもらえるよう、高周波な風景写真で構成しました。1枚目をはじめすべての作例画像で等倍サイズを用意しましたので、是非とも画面に顔を近づけてじっくりとご覧ください（画像をクリックすると等倍画像を表示します）。

( 写真 / 文 : Z II )

 

どんなに拡大してもキテる！

超高画素なFoveonセンサーを持つsd Quattroを手にして、まず撮ってみたくなったのはスケールの大きいダイナミックな光景。思いついたのは山。早速、火山を目指し撮ってきました。山肌から感じる圧倒的なリアリティは、この緻密な情報から生まれてくるものです。山頂でお鉢まわりをしている人をご覧ください。等倍でよおく見ると知り合いなら誰だかわかりそうなレベルです。

 

続いて森へ。花を撮るとき、いつもなら開放でふわっと撮るのですが、少し絞って撮ってみました。中央の花の部分の細部まで解像してます。額の部分の質感、色彩、陰影ともに申しぶんない写りです。

開放F2の画もさすがのキレを見せてくれました。緑の発色や艶の再現も素晴らしいですね。おかしな話ですが、Foveonセンサーで撮るとボケ味すらも緻密な印象です。ピントがきていないところも忠実に光や色を再現しているのだなぁと感心しました。ただ、1画素1画素に曖昧さがないセンサーゆえ、レンズの収差すら克明に捉えてしてしまうため、少し絞ってあげるとよいようです。

 

 

乾いた木肌の描写はまさに目が痛いほどシャープ。こうして肉眼で見たよりも多くの情報を目にすると、言葉を失ってしまいますね。

 

高原の早朝、霧に包まれとても幻想的な雰囲気です。このような強い逆光でのシチュエーションでも、シルエットになった手前にある木だけでなく、背景の霞む木々や朝露で光る草までも見事に描き出しています。

さて、海まで降りてきました。展望台から眺める人たちにフォーカスしていますが、手すりの質感や奥の肉眼では見えないような波のディテールまでしっかり解像していますね。

ソリッドでありながら他のどのカメラにも似ていない個性あるデザイン。グリップ部の独特な形状は、手の大きさや握り方の好み、操作の自由度などをよく考えられた造りになっています。ボディ下部にパワーグリップを装着すればホールド感はさらに安定し、電池の容量も3倍に増えるため、長時間の撮影にも不安なく臨めます。撮影後のプレビュー表示の速度も先代のSD1に比べ格段に速くなっているのはもちろん、映し出される画がきれいで驚きました。ライブビュー撮影でもピントの山がつかみやすくタイムラグも少ないため、スナップ撮影はもちろん、ピントの追い込みが必要なモデル撮影や雄大な風景撮影でも、じっくりと画作りができます。

ありがとう、SD1
こんにちは、sd Quattro！

これまでのSDシリーズはAPS-Cフォーマットの一眼レフカメラでした。先代のSD1/SD1 Merrillは「4600万画素相当」というその数字からもわかるように、シグマが総力をあげて徹底的に画質を追求したモデルです。その最高画質と引き替えにカメラの動作がのんびりしていたりと、多少犠牲になるものもありましたが、凄まじい写りに魅了されたユーザーは少なくないでしょう。その後、Foveonセンサーは「Foveon X3 センサー Quattro」へと進化。レンズ固定式のdp Quattroシリーズを経て、いま「sd」の名を継ぐカメラが完成したのです。そのスタイルは時代の流れをくみとりオーソドックスな一眼レフからミラーレスへ。シグマの技術者たちが究極の写りを追い求めて研究を重ね、さらなる進化を遂げています。Quattro世代のFoveonセンサーとArtラインレンズから生み出される圧倒的な描写は、「3900万画素相当」という数値すら上回るのではないかと感じました。このカメラが生み出す豊富という言葉では足りないほどの情報量は、肉眼で見る以上にその光景を緻密に捉え、リアリティをも超えて、見る者から言葉を奪ってしまうほどの力を感じます。今回このカメラで撮影をしてみて、その圧倒的な画質で独自路線を突き進みながらも、驚くほどリーズナブルな価格で新たなカメラを誕生させたシグマを心から応援したい思いました。ひとつの役目を終えたSD1に「ありがとう」を、そして「こんにちは、sd Quattro！」と言いたいです。

( 2016.07.07 )