CP+2016で発表され、7月に発売となった「sd Quattro」に続き、年内の発売がアナウンスされていた「sd Quattro H」がいよいよ発売となりました。モデル名に「H」がついたことで、sd Quattroと一体どれほどの違いがあるのか気になるところです。sd Quattroとの主な違いはセンサーサイズですが、モデル名の「H」の通り、APS-Cよりも約1.3倍の面積を持つAPS-HサイズのFoveon X3 Quattroセンサーを搭載し、sd Quattroの3900万画素相当から、面積同様1.3倍となる5100万画素相当へと性能をアップ。これまでのFoveonセンサーでは最も大きいなものとなっています。その他にも連写速度やビューファインダーの倍率など向上していますが、このカメラは何よりも弩級の写りに特化したカメラと言っていいでしょう。圧倒的な写りのFoveon X3 センサー Quattroの画質特性を生かし、さらに解像感も高まっています。Quattroから、サイズにしてわずか縦2.4mm・横3.3mm大きくなったセンサーが何をもたらしてくれるのか。メーカーが謳う『クラス最高画質の写り』を体験するべくまずは海辺から狙ってみました。今回のレビューではすべての作例カットで等倍画像を用意しました(画像のクリックで等倍画像を表示します)。どうぞ隅々までご覧ください。
( 写真 : Z II / 文 : SLK )
写りに関しては当然のことながらsd Quattroをかなり上回ってきている印象です。使い勝手においてはデータの書き込みに多少時間がかかったりAFで迷ったりするところはあります。しかしですよ、他社では真似できない圧倒的な解像感や豊かな階調の美しさは、ずっと前にポジフィルムを初めて使って、その発色や描写のあまりの美しさに受けた感動に近いものがあります。その感動をデジタルであらためて手に入れられるのですから、些細なことはなんてことはありません。そもそもフィルム時代のことを思えばカメラはずいぶんと手軽になったのですから。
雨上がり、冬の乾いた風がさわさわと揺らすただの原っぱです。乾いた部分とまだ濡れている部分の忠実な質感の再現性は、まるで今そこにあるかのように感じさせてくれます。この圧倒的なまでにリアリティのある描写はFoveonセンサーでなくては描き出せないものでしょう。レンズの粗さえも克明に写し撮ってしまうセンサーだけに、レンズ性能も高いレベルを求められますが、今回使用した35mm F1.4と20mm F1.4の2本のArtラインのレンズは、その要求に見事に応えてくれた気がします。
一般的なベイヤー配列のセンサーが大型化を進めてきたようにFoveonセンサーも今後は大型化に向かうのでしょうか。これまでsd/dpシリーズではAPS-Cサイズを守ってきましたが、sd Quattro Hでは初めて約1.3倍の大きさとなるAPS-Hサイズとなりました。これは、同じセンサーサイズのまま画素ピッチを小さくして高密度化をしたのと異なり、画素ピッチは同じままセンサーサイズを物理的に大きくすることでより高画素になっているわけです。そのため、同じレンズをつけて同じ撮影距離から写したときの解像感は同じですが、より広い範囲を捉えられるだけでなく、ダイナミックレンジを維持したまま、同じ観賞サイズにした時により多くの情報量を手にすることができました。その情報量はまさに圧倒的。撮り手が被写体を前にして、肉眼で捉えた情報を遙かに超える緻密な情報量とでもいうのでしょうか。大判のポジフィルムを初めてルーペで覗いた時ような、圧倒的な情報量と鮮烈さを感じるのです。それがこの大きさのカメラで写し撮ることができるということに感動せずにはいられません。
35mm F1.4 DG HSM Art使用。絞りをF8まで絞って撮影しましたが、猛烈にキレッキレです。硬い石の質感や雲の表情、奥のキラキラした水平線をシャープかつ忠実に再現しています。
変わってこちらは同レンズF1.4開放での撮影です。柔らかい布の感じや、うす曇りより少し晴れているくらいの繊細な光と影をとても美しく再現してくれました。
日没まであと1時間ほど。強い西陽と曇った背景でまるで船が黄金色に輝いているかのようなシーンも見た色にかなり近い色で再現できました。これはRAWデータをSPPで現像する際にホワイトバランスとカラーモードをさまざまに組み合わせてみることでたどり着けた色。今回は「昼光」と「FOVイエロー」の組み合わせにすることで、見た色に近づけることができました。こういった撮ったあとの楽しみ方ができるのも嬉しいですね。
漁師町の軒先に何げなく干してあった唐辛子ですが、この写りがわかるでしょうか。この赤の艶感と凹凸が手に取るように再現できていますね。普通の中にすごいことが凝縮されていることってときどきありますが、Foveonセンサーというのはまさにそういうこと。色補完のない「Foveonセンサー」ではこれほど艶のある「赤」を見せてくれるのです。
35mm F1.4 DG HSM Art使用。こちらは絞り開放です。手前のボケからピントピークまでが自然かつ立体的な描写で視点は自然にピントピークに吸い寄せられていきます。背景の空の感じもグラデーションが美しく、冬の空を再現できています。
同レンズで少しだけ絞り、座面にピントを置いて生地の質感を追ってみました。窓から射し込んだ雪が照り返す柔らかい光がなんとも心地よく、椅子の色と質感をより一層際立たせる効果をもたらしてくれました。降りしきる雪をしばらく眺めていました。
ついに出揃ったsd Quattroシリーズ。このレビューをご覧になる多くの方が気になるところは「無印なのか、Hなのか」ではないかと思います。APS-Hのセンサーサイズで得られる画は、画素数が増えたことや画像処理エンジンの刷新(TRUE III)によりさらに一段階上がった階調の豊かさに加え、RAWデータから追い込んで画を作り上げる楽しさも増したように感じました。
ここでシグマはどうしてこの2モデルを発表したかについて考えてみたのですが、シグマはレンズを「資産」としてしっかりと考えているためだと思われます。シグマはもともとフルサイズ用のDGレンズとAPS-Cサイズ用のDCレンズを数多く出しており、これらのレンズを活かすために2つのセンサーサイズが必要だったのではないでしょうか。またsd Quattro Hでは「DCクロップ」という機能が搭載されており、APS-Cサイズ用のレンズも使用できますから、お手持ちのレンズ資産は全て利用可能となっています。sd Quattroをすでに使っているという方も多くいらっしゃるでしょう。買い換えるべきなのか悩むところだと思いますが、sd Quattro Hを持つことで、sd Quattro 1台で撮影を続けるよりも幸せになれるかどうかは使い手次第。撮影目的に合わせて使い分けていただくのが最も幸せであるでしょう。ただ、どうしてもいずれかを選択しなければならない場合、またさらなる高画質を追求するならば買い替えをお勧めします。もちろんsd Quattroでも十分によく写ることは実証済みですし、価格もお手頃というメリットだってあります。sd Quattroの方が書き込み速度が若干速いため、スナップ撮影にはむしろ向いているでしょう。ただ、ダイナミックな風景を撮るとなると、ワイドレンズを使用したくなりますよね。そんなときにはセンサーサイズの大きいsd Quattro Hの方がより解像感が得られます。シグマが誇るDGアートラインレンズとsd Quattro Hのセットならレンズの隅々までを活かした、まさに世界で唯一の写りを叩き出してくれるのは間違いないのです。わたしの好きな言葉に、「困ってから困ればいい」というものがあります。困る前からあれこれ考えず、両方とも所有するという選択が男を上げるというものではないでしょうか。
( 2016.12.27 )
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APS-Hサイズのセンサーを搭載した「sd Quattro H」、Foveon X3センサーがもたらす5100万画素相当のキレのある画をどうぞお楽しみください!
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専用のバッテリーグリップは、スペアバッテリーを2個収納し、本体のバッテリーと合わせて3倍撮影いただけます。Artラインなど大きなレンズとの重量バランスも良好です。
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今回のロケで使用しました20mm F1.4。大きくなったAPS-Hサイズのセンサーにおいても、その高い性能を隅々まで発揮しています。
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こちらもロケに使用しました35mm F1.4。シグマArtラインの高いクオリティを世に知らしめた傑作レンズです。
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消費電力の大きなセンサー・エンジンを載せたカメラですから、バッテリーのもちがよくなったといっても、スペアバッテリーは大いなる安心材料です。
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「スペアも1個じゃ足らんよ」という方のために。
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