PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

TAMRON 18-400mm F3.5-6.3 Di II VC HLD Model B028

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

デジタル時代になって飛躍的に高められた設計技術により、大きさや重さなどを犠牲にしても極限まで光学性能を追求した単焦点レンズが最近賑やかだなあと感じています。その漬け物石のような重量感に「標準レンズでこの重さか!」と思ったりもするわけですが、今回レビューをお届けする「TAMRON 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD」は、まさにその対極ともいえる1本。ズーム倍率を極限まで高めながら、705g・Φ79×121.4mmと軽量かつコンパクト。フルサイズに換算すると、標準ズーム域の広角端にあたる27mm相当から、超望遠域の600mm相当までカバー。しかも大きさは70-300mmあたりの望遠ズームと比べても遜色ありません。

ではこのレンズ、その“性能”を実現させるために何を犠牲にしているのか? 写真を長く楽しまれている方なら「そりゃ写りだろう」と思われる方が多いかと思います。「テレ端400mmはいくらなんでもやり過ぎだろう」と思っていた私もそのひとり。今回のレビューで上がってきた編集部員2人の写真を見て、「普通に使う上で何ら不都合が見つからないな」と感じた次第。では早速その写真をご覧いただきましょう。


はかなく消えるかたち

TAMRONなら止まる。

タムロンレンズの手ブレ補正機構の強力さを、ことあるごとに体感してきました。TAMRON 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD Model B028も例外ではなく、しっかりとVC機構を搭載しています。タムロンの手ブレ補正の能力を信じ、ひたすら日陰や薄暗い場所を選んで撮影しました。脇をしめて、両足は肩幅くらいに開くというカメラ初心者が教わるセオリー通りにカメラを構え、息を止めます。シャッターボタンを半押しし、合焦した段階でファインダー像はピタリと止まっています。たとえそれが600mmにズームしているときでさえも。本レンズは35mm版換算で27-600mmという幅広い焦点距離域を持っていますから、広角から超望遠まで被写体はなんでもござれ。遠く手の届かない場所にある被写体でも、ズームリングを回して、フレーミングを整えれば、まるで目の前にあるかのような立体感を伴って捕捉できます。フラミンゴの羽、形を自在に変える水の質感や、湿度の感じられる葉や花びら。それぞれの描き分けもとても素直で好感が持てました。また、最短撮影距離がズーム全域で0.45mと短いのでテレマクロ的な使い方ができるのも大きな魅力ではないでしょうか。これだけの焦点距離域がありながらもレンズはとてもコンパクト。とにかく歩くことが多いロケでは、とても助かりました。レンズ交換をすることなく、この1本で広角から超望遠までを手軽に楽しみながら撮影できますから、身軽に旅を楽しみたいとき、またいつも荷物が多くなりがちなママさん、パパさんにも強い味方となってくれると思います。(Rica)


KUMAGAYA HOT 40

22倍ズーム。鬼に金棒。または如意棒。

PHOTO YODOBASHIあー、あついあつい。毎日ホントにあつい。あついよ〜。こういう暑い日のロケはつらい。修行以外の何ものでもない。できれば北海道にでも行って、涼しい風を受けながらのんびりラベンダー畑でも撮っていたい。もちろんそんなことが許されるはずもなく、ならばいっそのこと、すごく暑いところに行って撮影してみたらどうなるか?と向かったのが埼玉県の熊谷市。知っている人は知っているように、ここは「暑い」ので有名なところ。ちょっとデータ的なことを書くと、2007年8月16日に40.9度という気温を観測、1933年に山形市で記録された40.8度を上回って74年ぶりに国内最高気温の記録を塗り替えた街なのだ(ちなみに同じ日、岐阜県の多治見市でも同気温を記録)。残念ながらこの記録は2013年に高知県の四万十市に抜かれて(41.0度)しまうのだが、その他にも「6月の国内最高気温(39.8度)」「9月の国内最高気温(39.7度)」「年間猛暑日数国内最多(41日)」は未だにレコードホルダー(タイ記録含む)であり、ホッテストなタイトルを総なめにしてきた、暑き街なのである。

「なのである」なんて、熊谷の栄光を語っていたら口調まで力強くなってしまいました。というわけで熊谷ロケです。試みに日が当たるベンチの上に温度計を置いてみたら、ぐんぐん上昇して40.0度達成!・・・と言いたいところですが、これはいわゆる「気温」の測り方ではありません。この日の熊谷の最高気温は36.2度。それでもものすごい暑さです。これが40度を超えるって、ちょっと想像がつきません。実は熊谷に来たのは初めて。それに加えて「暑さを感じさせる写真」という漠なお題ですから名所旧跡や絵になる場所に行けばいいというわけでもなく、どこで何を撮ればいいやら。さて困った。いや、本当は困ってない。なぜなら、私の手には18-400mmという、ものすごい高倍率ズームがあるから。

35mm版換算で27-600mm。完全に無敵です。撮れないものはない。かつて、私は単焦点レンズ信奉者でした。「ズームねぇ、うふふふ」と思っていました。ところが、今ではズーム万能論者です。ズーム最高です。それは、各メーカーが出すズームレンズの性能が全体的に底上げされ、かつてのような「ズーム=便利だけど描写性能はイマイチ」という感じでは明らかになくなってきたことが大きいです。そしてもう一つ、焦点距離が「無段階に」変化するということ。このことの偉大さに、ある日、気づいてしまったのです。それでいてこのレンズは22倍ものズーム域を持っているんですから、もう望むことなんてないです。なにしろ、世界中探してもこの倍率はこのレンズだけ。ズームレンズの一つの到達点であり、オンリーワンの存在なのです。「まぁそうは言ってもさ、これだけ高倍率になると画質はそこそこでしょ?」なんて思っている人もいるかもしれませんが、先入観というのは恐ろしいですね。(NB)


  • PHOTO YODOBASHI出かけた先で偶然出くわした花火。三脚もレリーズも持っていなかったので手持ちで撮影しました。通常は三脚にレリーズ、手ブレ補正はOFFで撮影するのがセオリーですが、手持ちですから当然手ブレ補正をON、シャッターはバルブに設定し、ドーンと音が聞こえてから花火が開くまでの間、シャッターを開き、撮影しました。露出時間は2.9秒。タムロンなら花火も手持ちで撮れます。ギリギリだけど。
  • PHOTO YODOBASHI暑い夏には、涼しい場所へ行きたくなるものです。タムロンの手ブレ補正の力を信じ、思い切って本当に暗い鍾乳洞へ行ってみました。高倍率ズームながらもコンパクトで軽量ですから、狭くてアップダウンの多い鍾乳洞でも問題なく携行可能です。そしてもちろん手ブレ補正の効果をてきめんに感じることができ、肉眼ではよく見えていなかった壁面の大きな岩の質感がしっかりと写っていました。
  • PHOTO YODOBASHIテレ端400mmです。ふと目をやると、はるか遠くにこの女性が見えました。ワタシ、ズームリングを思いっきり回しました。止まるまで回しました。すぐに構えて、慌ててシャッターを切りました。かなり乱暴な撮り方だったのですが、強力な手ブレ補正のおかげで写し止めることができました。暑い、熊谷の午後でした。
  • PHOTO YODOBASHIこちらはワイド端18mm。熊谷駅の北口にも、南口にも、このミスト散布装置がたくさん設置されていました。まだ日が高いうちからこれを狙っていたのですが、どうもうまく撮れない。太陽がだいぶ傾いた頃に再チャレンジして、まぁなんとか。しかしこの装置、それなりに効果があるんでしょうが、この日に関していえば焼け石に水(個人の感想です)。シャワーみたいに、水がそのまま出て来たほうが喜ばれるような気もしました。

※橋の上から撮影したため、映像に揺れがあります


PHOTO YODOBASHI

タムロンのプライドを感じる、頼もしい1本

いやぁ、困りました。私、広角から標準、望遠レンズまでお小遣いを貯めては(家族に白い目で見られながらも)何本もレンズを買い集めてきました。もちろんそれは趣味として楽しいものでしが、それらのレンズでカバーできたのは、このレンズのわずか数分の1。この18-400mmなら手首をくいっと捻るだけで、更に望遠域がぐんぐんと伸びるのです。撮影の度に「今日はどのレンズを持ち出そうか?」と悩み(時には日が暮れ)、持ち出したレンズでは撮れない被写体をいくつも諦めていたのがバカバカしくさえなってきました(苦笑)。

高倍率ズームといっても、カメラにマウントしてみると、常用するのはやはり標準域。このレンズで感心したのは、その標準域での安定した描写。大きくはないもののボケ味に嫌な癖はなく、落ち着いた質感描写はなかなかのもの。直線の多い被写体では周辺の歪曲が少し気になるかもしれません。その時は現像で調整しましょう。ズームリングの回転角にしてわずか15°ほどのテレ端域(200〜400mm)は、いつでも出番があるものではないかもしれません。しかし、このレンズが持つその“余裕”は、飛行場やサーキットに野球場、もちろんお子さんの運動会でも、遠くの被写体をぐいっと引き寄せる力でこれまでにない1枚を生み出してくれることでしょう。

カメラメーカーに先駆けてレンズメーカーが作り出した「高倍率ズームレンズ」というカテゴリー。そのカテゴリーのリーダーであるタムロンの並々ならぬ意気込みとプライドを感じさせてくれた本レンズ。樹脂製ながらも鏡胴の質感は高く、手にする喜びもしっかりと感じられます。ズーム比22.2倍を実現する3段繰り出し式の鏡胴は、複雑かつ精緻な造り。試用したものは新品だったのもあるでしょうが、幅広のズームリングには適度な重さがあり、スイッチ類を含め操作性も良好でした。金属製のマウント部にはシーリングゴムも備えられ、簡易的な防滴構造も採用するなど抜かりはありません。加えてタムロン自慢の手ブレ補正は、手ブレに神経を使う超望遠域でも実に頼もしいものでした。

今回ニコンFマウント版では、より精密で安定した駆動を実現する電磁絞りを採用。タムロンが25年の歳月を積み重ね、光学技術の粋を集めて生み出した高倍率ズームの“究極の1本”。ちょっと手を伸ばせば届きそうなプライスです。ぜひ手にしてみてください。

( 2017.07.20 )

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APS-C用としては世界初の18-400mmという幅広い焦点距離域を持つ、超望遠高倍率ズームレンズです。35mm版換算で600mm相当の超望遠撮影が可能な1本でありながら、小型軽量でさまざまなフィールドに持ち出すことができます。

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ニコンから登場した描写にこだわるフォトグラファーのための保護フィルター。NIKKORレンズにも採用している高品質な光学ガラスが採用され、撥水・撥油コートがガラス両面に施されています。

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