PHOTO YODOBASHI

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※写真右上のルーペはES-2には付属しておりません

Nikon フィルムデジタイズアダプター ES-2 (ネガフィルム編)

お待たせいたしました。ES-2でデジタイズ、ネガフィルム編です。ポジができるのはわかるけど、ネガフィルムはどうするのか。特にカラーネガ。私もそこが一番知りたい。カラー、モノクロとも試してみましたが、結論をお先に申しますと大丈夫!早速ご紹介いたしましょう。そして今回も長いです。

» ポジフィルム編はこちら

( Photography & Text : TAK )

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1)カラーネガフィルムのデジタイズ

ネガフィルムのデジタイズは、銀塩での現像と同様、カラーの方がモノクロよりも少し手間がかかります。ポジフィルムと同じように機材をセットしてまずは一枚やってみましょう。ご覧の通り、ライブビュー上の画像もネガの色になります。カメラはD850、レンズはAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8Gです。画質モードはRAWにします。絞りはF8、ホワイトバランスは晴天に固定されていることを確認し、いざデジタイズ。この時点ではネガ出力のRAWデータが保存されます。

ここで背面液晶右側、下の方の「i」ボタンを押します。すると、画面右側にメニューが表示されますので、「CL」という項目を選びます。次にカラーかモノクロか聞かれますので、そこでカラーを選択します。

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するとアラ不思議!ネガがポジ表示に切り替わりました。画面右側に「-3」と表示されていますが、これは明るさの調整値です。調整値を決定したら「OK 明るさ」を選択。ただこの時点ではまだポジとしての画像データは保存されていません。再びレリーズして初めて保存されます。画面左下の電池マーク、気になります?ライブビューを多用するのでD850といえども電池の消耗は速くなります。予備の電池を用意して置いたほうが賢明です。

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こちらがそのオリジナルのJPEGポジ出力です。なかなか自然な色合いで、通常の用途ではこれで十分ではないでしょうか。ただし、このカラーネガデジタイズ、JPEG出力のみとなっています。つまり、この設定で保存できるデータはネガ出力のRAWデータとポジ出力のJPEGということになります。ネガはポジのように「見本」がないのですが、逆にそこが魅力で、好きなようにいじれる楽しさがありますよね。いじるとなると、やっぱりポジ出力のRAWデータが欲しくなりますよね。というわけで、ネガ出力のRAWデータを反転させたらポジ出力のRAWデータが手に入るのでは?とやって見たのが以下の画像です。

PHOTO YODOBASHIご覧の通り、かなり青みがかかってしまいます。コマ枠の部分(白く見える囲み)も入っていますから、それが全体の色味に影響していると思われるかもしれませんね。が、先ほどご覧いただいたD850によるカラーネガデジタイズはどうでしょうか。自然な色味を実現していますよね。この辺りは流石といいますか、フィルムスキャナーで培ったノウハウを生かし、枠の部分の影響も考慮した補正がなされているのでは?と推察します。でもこの「ネガデジタイズ」、現在のところD850のみの機能となっております。それ以外のカメラではどうなるの?できないの?って思いますよね。Don’t be negative. 一つ方法がありました。実にあっけなくて申し訳ありませんが、「枠の部分をトリミングして取り除いた後、ソフトウェアでトーンとカラーを自動補正」が一番手っ取り早い。以下がその結果です。

PHOTO YODOBASHIいかがでしょうか。技術の進歩に感謝です(ここではAdobe Photoshopを使用)。これでD850のJPEGとも比べられるレベルになったでしょうか。これならレタッチで仕上げられそうです。他にもブルー系のフィルターを使ってネガのオレンジベースを緩和する方法など色々試しましたが、結局ソフトウェアの自動補正が一番手軽で確実性が高いようです。繰り返しますが、コマ枠の部分は必ずトリミングで除去しておいてください。そうしないと、自動補正がうまく働かなくなる可能性があります。

Leica M2, Summaron 35mm/F2.8, Kodak Portra 160NC (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

こちらがソフトウェアでRAWから仕上げたJPEGです。クリックで等倍表示します。十分ですね。同じカットばかりですみません。他もご覧ください。

Leica M2, Voigtlander COLOR-SKOPAR 21mm F4, FUJICOLOR PRO 160S (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Leica M2, Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical, FUJICOLOR SUPERIA X-TRA400 (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Leica M2, Summaron 35mm/F2.8, Kodak Portra 160VC (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Leica M2, Summaron 35mm/F2.8, Kodak Portra 160NC (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Leica M2, Voigtlander COLOR-SKOPAR 21mm F4, Kodak Portra 160NC (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Minolta α9, AF ZOOM 24-85mm F3.5-4.5 New, FUJICOLOR PRO 160S (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Konica HEXAR, HEXAR 35mm F2, FUJICOLOR REALA 100 (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

いかがでしょう。RAWからでもちゃんと仕上げられるので、D850以外のカメラでも全く問題ないことをご理解いただければ幸いです。全体的に北米の光や空気を反映させて仕上げてみましたが、好き勝手にいじったカットもあります。ネガフィルムの面白さは「こう見えた」だけではなく、「こう見えてほしい」「こんな風に見えたらどうだろう?」を実現しやすいところにもありますが、そこはバッチリ堪能していただけますよ。ただ、被写体によってはいじりすぎるとカラーノイズが顕著に出てくるので、悩みどころではあります。ちなみに最後の縦構図はマンハッタンでの一枚ですが、奥に見えるのは初代のWTCです。


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2)モノクロフィルムのデジタイズ

次に、モノクロフィルムをデジタイズしてみましょう。これはカラーに比べてずっと楽です(奥の深さは果てしないですが)。上の画像のようなRAWデータが得られるので、それをソフトウェアで反転させるだけで大方完成です。もちろんD850であれば、「i」ボタン、「CL」の項目でモノクロを選べば、同じことがカメラ内で完結できてしまいます。

Nikon FE, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

こちらがD850内で生成したJPEGです。なかなか良い塩梅でしょ?モノクロ化すればどんな写真でも腕が上がったように見えることを差し引いても、良い雰囲気です。このレベルがカメラ内で得られるのですから、D850をお使いの方は是非ご活用ください。もちろん、それ以外のカメラでもRAWデータをソフトウェアで反転させて立派なモノクロ画像が得られます。しかもカラーネガのような色被りもありませんし、カラーノイズは「粒状感」というポジティヴな要素に化けますから、あとはトーンなどお好みで調整していけば良いのです。

トーンといえば、モノクロフィルムの醍醐味に豊かなハイライト表現があります。ES-2を使って、デジタルで撮ったものと比べてみたい。実は今回これを一番にやってみたかったのです。

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前回に続き、今回も素敵なゲストをお招きしております。1978年発売、「シンプルニコン」の愛称で親しまれたMF一眼レフ、「Nikon FE」です。機械式の「Nikon FM」に対して、FEは絞り優先AEと電子シャッターを備えた姉妹機で、Dfと同様、跳ね上げ式の露出計連動レバーを搭載。非Aiのレンズも装着できる懐の広い、非常に使いやすいカメラなのです。今回はモノクロフィルムを詰めたFEとDfで同じシーンを同じ露出、同じレンズ(AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S)で撮影してみました。モノクロフィルムのデジタイズには、D850とAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8Gを使っています。クリックで等倍表示します。

  • Nikon FE, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK
    フィルムをデジタイズ
  • Nikon Df, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, 1/250, F8, ISO 100, Photo by TAK
    デジタルで撮影

予想通り、解像具合、ヌケともにデジタルが上回っている印象です。が、一番驚いたのはエスカレーター中央部の光の反射具合の違いです。デジタルが狭い範囲だけ急激に明るくなっていき白トビも起きているのに対して、フィルムではもっと広い範囲でふんわりと輝いており白トビも見られません。両側のタイルの表情もずいぶん違いますね。予想はしていましたが、ここまで違うとは。ちなみにデジタルの方はソフトウェアでハイライトをゼロにしても白トビは消えませんでした。

続いて白い木綿のシャツを撮り比べてみます。クリックで等倍表示します。

  • Nikon FE, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK
    フィルムをデジタイズ
  • Nikon Df, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, 1/8, F11, ISO 100, Photo by TAK
    デジタルで撮影

こちらもデジタルをソフトで編集してもフィルムと同じ調子にはなりませんでした。デジタルは硬い感じで、フィルムには柔らかさを感じます。乾燥機をかけすぎてバキバキになったシャツと、太陽でふんわり乾いたシャツ。デジタルはとにかく刻む、フィルムは絵画のスパッタリングのように描く。そんな印象さえあります。肌に触れる衣服としてどちらを着たいかと言われれば、フィルムの方を選ぶでしょうか。とはいえ、このあたりは目的次第ですね。

違いがわかったところで、作例を並べてみましょう。カラーネガフィルム同様、ポジほどの「正解」はなく自由度の高いモノクロフィルム。どんな絵にしたいのか方向性を決めたら、時にはバーを振り切るくらいの気持ちで大胆にレタッチしてみるのもよいでしょう。マイクロニッコール、もうキレッキレです。なお、ガチャガチャ、草履、木目のカットの3枚は、D850のネガフィルムデジタイズ機能で生成したJPEGです。

Nikon FE, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Nikon FE, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Nikon FE, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Nikon FE, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Leica M6, Leitz ELMAR 5cm f/3.5, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Leica M6, Leitz ELMAR 5cm f/3.5, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

Leica M6, Leitz ELMAR 5cm f/3.5, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

個人的に、最後のアーケードのカットが特に印象に残っています。画像クリックで等倍表示します。レンズはライカ「Elmar 5cm F3.5」(赤エルマー)です。50年以上も前のレンズですが、立体感、空気感を強く感じます。天井部分のトーンも美しく、大したカットでもないのに見入ってしまいました。こうした発見があるのもES-2ならでは。デジタルになってレンズの比較がしやすくなったと言われます。確かにその通りなのですが、一方で、フィルムでも顕著にレンズの特徴が出ることを久しぶりに体感しまして、デジタル漬けになっていることを猛省したのでした。それにしてもモノクロフィルムのグラデーション、言葉になりません。これがある限り、使い続けるでしょう。デジカメの「モノクロ風」とはやはり違いますね。写真展で印象に残るものって銀塩モノクロプリントが多かったりするのですが、皆さんはいかがですか?無論、液晶表示に最適化されたデジタルとプリントを目的としたフィルムは単純比較するものではありませんが。

以上、カラーとモノクロのネガフィルムをデジタイズしてみました。楽しく遊べるカラー、デジタル化してもなお奥の深いモノクロ。今また、どちらにもハマりそうです。ポジとネガの違いも興味深いですね。それ自体が発色しているポジと紙の上で色を出すためのネガ。ポジの方には湿り気を感じ、ネガの方は少し乾いた印象もあります。そういったキャラクターの違いがデジタルでもちゃんと出るんですね。そもそも克明さが身上のデジタルですから、フィルムらしささえも、正直に捉えてくれるのでしょう。


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これはただのアクセサリーではない。
時代を繋ぐ光学通りのタイムトンネルである。

JR横須賀線・湘南新宿ラインの西大井駅。Nikon Fをはじめとする数々の名機を生み出した大井製作所を、延長1kmを超える一本の道が貫いています。その名も「光学通り」。ニコン自身が名付けたわけでもなく、誰彼となくそう呼ぶようになったといいます。そこに立ってみると、マスターピースを生み出した大勢の社員で溢れかえっていた光景が目に浮かんできます。今回ES-2でデジタイズしながら思いました。光学通りは続いている。これは西大井から品川インターシティ、そして35mm判が焼き付けてきた時代をつなぐタイムトンネルなのだと。

Nikon FE, AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S, FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS (Digitized with Nikon ES-2, D850, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G), Photo by TAK

実は今回のレポートで一番苦労したのは、機材の設置法でも露出でもピントでもありません。むしろピントはライブビューでとことん追い込めるので、フィルムスキャナーでボツとしていたカットが実はしっかりとピントが来ていて汚名を返上した、なんてこともありました。大変だったのはネガでのコマ選びと撮影データを思い出すことです(笑)。特にネガのセレクトなんて、もう目がもたない(笑)。正直どの機材で撮ったかでさえ、挙げ句の果てには何故撮ったのか覚えていないものも多々ありました。ただ、そうしたプロセスを経て大昔に撮ったカットに再び出会い、当時を思い出すことができました。みなさんもきっと同じ経験をされるでしょう。それぞれの年代や世界で35mm判が写してきた、そしてこれから写していく思い出の数々。箱の中に入ったままでもよかったのかもしれない。しかし、写真というものは見るために存在します。ES-2は忘れかけていた思い出にデジタルの道を通してくれる、そしてメーカーを問わず使える、他とはちょっと違う志の高いアクセサリーなのです。

( 2018.05.16 )

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たった2万円で、押入れの奥に眠る、あのフィルムたちが再び日の目を見るのです。しかもその魅力を損なうことなく、好きなだけ。そう考えたら、めちゃくちゃ安くないですか?

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