PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

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ニコンの最新ボディと最新レンズで、改めてニコンの実力を実証する本企画。「え?それなら前にPYの新製品レビューでやってるじゃん」って?まあまあ。そう言わずに。ニコンの最新レンズと最新ボディで写真を撮ると「ここがすごいんだぜ」というのを、改めて念入りに、そして熱くご説明しております。しかし、そこはPYのレビュワー陣でございますから、物言いが若干個性的なのはお許しくださいませ。これはもう、持って生まれた性(さが)、逃れようのない運命みたいなもので、こうしか出来ないのがPY編集部なのでございます。

とは言え、それだけだったら「いつものPYレビューと変わらない」という誹りは免れますまい。そこで、わたしたちは考えました。「作例が“表”だとしたら、“裏”からもニコンのすごさを実証できないものか」と。それが工場見学記です。「この写り」を裏付けている生産現場って、いったいどんなところなのか。ボディを作っている仙台ニコン、レンズを作っている栃木ニコンにご協力いただいた見学記は、2018年1月下旬〜2月上旬の公開予定。気長にお待ちください。

作例撮影と工場見学記   かくしてこの「画」は作られる
第1回

Starring: 

Nikon D5
&
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G

Got Nikon?

ちょっと前、北米のCMで「Got Milk?」という、牛乳の販売促進を狙ったフレーズがありました。牛乳と同様、我々にとってのNikonとは必需品のようなものですから、「写真撮ってる?」「ガチャガチャしてる?」と意訳していただいて、なんなら「Do You Nikon?」(京都議定書由来の「Do You Kyoto」的な)と言い換えて下さってもステキです。いろんなメーカーの機材を使う日々ですが、当然ながら彼らの努力、それぞれの良さに感じ入り、気がついたら購入していることもザラです。とりわけニコンに関しては写真を始めて以来「ニコン熱」が続いておりまして、もはや平熱化している。なんででしょうね。まずは最新ボディとレンズの実力を検証してみようという次第ですが、手元に届いたのがD5AF-S NIKKOR 85mm f/1.4GAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDというドリームチーム。その夢のような世界をじっくりと(以下省略)。早速AF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gをば。モノは撮れて当たり前。写ってるのはオーラです。「最新レンズは優等生的で云々」なんて常套句を鼻で笑う画力(えぢから)です。車のデザインを大きく左右するパーツの分かれ目のライン。そこだけにフォーカスしてやれば後は見る側のイマジネーションが補完してくれるんじゃなかろうか。こんな期待、超高性能+雰囲気さえも物語るパワーがなければ、抱きようがないんです。ピントを探る最中に見えるD5のファインダー像がこれまた扇情的で、バシバシ撮りたい衝動を抑えるのが大変。でもどんな風に撮ってもブレる気が全くしないんですね。

( Photography & Text : TAK )

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Nikon D5 & AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G

85mmのF1.4と聞けば、開放でのボケが見たくなるのが人の常です。ほぼ最短(0.85m)で、何も考えず撮ってみました。何でもない光景がかくも素敵な世界になっちゃっていいんでしょうか。片目だけで同じように見てもこんな風には見えません。写真用レンズが生み出すボケとは収差がもたらすファンタジーであり、肉眼による視覚とは違うのです。見たことすらないものを創り出すのですから、そこにメーカーのクリエイティビティが現れ、色んな個性を持ったレンズが生まれるわけですね。AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G、ストンとボケるというよりは、じわりじわりと滋味を感じさせつつボケていく感覚です。ボケの中にも被写界深度の層を感じられるような。水で言えば純水ではなく鉱水。ミネラルあってこその味わい。しかも良い意味で「引っかかり」のある味なんです。背景の葉までの距離も近いのですが、少し渦巻き状になっているのもドリーミーで「しみじみ佳い」。「いよっ、中村屋」じゃなくて「いよっ、ガウス屋!球面屋!」と掛け声が聞こえてくるようです。といっても、これ、相当良好に補正されていますからね、天晴れですよ。ハイライト部に少しだけフリンジが出ていたので試しにソフトで修正してみたのですが、ほとんど変わらなかったので修正なし!合焦部の解像力についても、まさに肉眼で見た時のようにナチュラル。ヌケ、光の捉え方も、レリーズの瞬間がただただ愛おしくなるような、、、気のせいでしょうか、景色が霞んで見えてきました。ギター的には「泣き」が入ってます。そう、そのあたり、ゲイリー・ムーアあたりです。

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85mmという中望遠の焦点域がもたらす画角は約28度(FXフォーマット)。被写体を少し離れた位置から菩薩様のように見守るアプローチを可能にし、程よい圧縮効果で被写体の形を忠実に再現できます。撮影者が被写体に抱いた気持ちを鮮度直送便で伝えてくれるサイズで写せる、とも言えるでしょう。そりゃポートレート撮りたくなるってもんですが、ストリートで用いるとこれがまた面白いんです。クリスマスのショーウィンドウに見入る男の子。距離は2〜3メートル。時間帯は薄暮です。すっと手を上げた瞬間にフレーミング、測距に移りましたが、ボディとの連携によるAFも爆速で構えた瞬間に無音で正確にインフォーカス!気持ちいいですねえこれは。ピントが来ないと描写力なんて語れませんから。撮影しながら、自分もプレゼントを心待ちにしていた頃を懐かしく思い出し、手が震えそうになりました。本レンズに手ブレ補正機構「VR」はついておりませんが、容易にシャッター速度が稼げるF1.4ですから必要ありませんし、ニコンのことですから画質最優先で敢えて入れなかったのでしょう。絞った絵?もちろん撮りましたけど、お見せするまでもないです。一つだけ。レンズが言っていました。「サンタさん、もっと画素ください」と。

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Nikon D5 & AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

続いてAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDです。こちらは奈良県橿原市にある丸山古墳。県下最大規模の前方後円墳で、車窓から段々になった地形が見えた瞬間、「This is 奈良!」と叫び駐車場に入りました。前方に見えるこんもりした丘のようなものが文字通り「前方」。そこから「後円」のところまで歩いて振り返ってのショットですが確かに広い。古墳時代らしいスケール感を出そうと広角端にズームアウトし、絞り込みました。ファインダーには主役のみならず、現代の街並みや周りの山々まで見えてきて、古墳がどういう位置にあったかも見て取れます。周辺の情報量の多さは主役に舞台を与え、なお一層引き立てる。これぞ超広角の醍醐味!喜びで虫くんも飛んできましたよ〜。おまけにお日様も入って来まして、「古墳の向きって太陽とも関係があるのかな?」(諸説あるようです)なんて柄にもなくロマンを抱きながらレリーズしましたが、斜め上からの光に対しても相当高い耐性を持つことが分かりますね。ヌケの良さも単焦点と変わらない。いっぱいレンズが入ってて(11群14枚)間も空いてるのに、ナノクリスタルコートやってくれるじゃないですか。絞ってパンフォーカスにしていますが、どこまでもシャープで、かつわざとらしさも皆無。つまり「ズーム臭さ」が一切無い。というか、いい匂いがしますよ。ニコンようかん食べてるからかなあ。

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平城京跡にある大極殿を24mm端で捉えてみました。少し上を向けて撮っていますが、直線の歪みは感じられません。広角端では樽型が出るようですが簡単に補正出来る範囲で、このカバー域のズームでは見事と言う他なし!しかし相変わらずニッコールらしいシャキッとした撮像です。反射面の輝き方もキリッとしてます。こちらも絞っていますが平坦になることはなく、パースが効いていながらも立体感や奥行きさえも感じられますが、これ本当にズームですよね?芝生の微細なコントラストも端正に再現されていて、一本一本が緻密に浮き立って見えるんですが、やっぱりズームのテレ端とは思えない色気、空気感です。あと感心したのが、D5の「3D-RGBマルチパターン測光III」の正確さ。光線状態に関わらず、ほとんどの場合で露出補正要らずでした。「チャンスに集中しろ。あとは全部任せろ。」最近カメラからいろんな声が聞こえます。

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開放、14mm端。単焦点と間違うほど、前後ともに変な癖のない、好感の持てるボケ味です。ちなみに四隅はボケているだけで、破綻はしてませんからね。財布もレンズも破綻がないのが一番!なにせこれだけの超広角ズームレンズですから、我々もっと寛容なんですよ。なのにこの水準の高さ!通りで巷の評価も高いわけですね。もう一つ忘れちゃいけないのが「ニッコールの色」。ずっと昔、AI NIKKOR 50mm F1.8SをNikon FMにつけて同じような写真を撮ったことがあるのですが、このカットもそれと同じ色でもう感動ですよ。この色再現、自社開発のFXフォーマットCMOSセンサーと画像処理エンジン「EXPEED5」によることは明白です。でもそれだけじゃない。レンズそのものの色再現性もちゃんと受け継がれている気がするんです。私、ニコンの単眼鏡も使っているのですが(写真撮影や野鳥観察はもちろん、旅行時に遠くの表示を見るのにも便利)、それを覗くとやっぱり同じ色なんですよ!「おかえり」と言ってくれているようで、こたつのように居心地が良い。健康優良児的な悩みのない色ではない。フィルムで撮るならポール・サイモンのようにコダクロームで撮りたくなるような、自分の思いが全てのピクセルに伝わったような色で、官能的でもあるような。言葉で表現するのは難しいのですが。もう何が写ってるかなんてどうでもよろしい。ただこの色を愛でるためだけに、シャッターを切りたい。でもそんな一回のレリーズのためであっても、D5は常に全力で働いてくれるんです。シャッターを押した時の感触、レリーズ時の振動がボディへ伝わる時の感触、ダンピングの具合、、、もう許してください。とにかく要素という要素、部品という部品が高次元の連携のもとに命をかけてくれる感覚です。なんて贅沢なカメラなんでしょう。

ぼくらのニコン。人類のニコン。

ニコンほど、「ぼくらの」が似合うメーカー名はない。理由はもうお分かりかと。でもニコンは「人類みんなのニコン」でもあるのです。筆者が北米に住んでいた頃、アメリカ人の写真仲間ともよくスライドショーをやって写真談義をしていました。もちろんアナログのプロジェクター2台でディゾルブ映写でね!向こうではNikonは「ナイコン」と発音されていて、彼らも何本もの「ナイコール」を愛用、自慢していました。日本人が作ったものが海外でも大人気なのが嬉しかったですね。「やっぱりF3だよ」「FE2もいいぞ」「AI NIKKOR 28mm F2.8Sの寄りはすごい」「マイクロナイコールはカミソリ」などと盛り上がり、「very sharp」とか「creamy bokeh」などと言っておりました。「ボケ」なんて海外の人に分かるのか(失礼!)と当時は思ったものですが、彼らも日本人とまったく同じようにニッコールを楽しんでいました。良いものには、人類はみな心を動かされるんです。ニコンの製品はその好例で、その素晴らしさがワールドワイドに伝わっているのです。今回使った最新のニコン機材ですが、最新技術を取り入れつつも、写真好きが思わず笑顔になるツボもしっかりと抑えていました。次の100年も、「ニコン熱」患者が増えることは間違いありません。

I got a Nikon camera.
I love to take a photograph.
So Mama don’t take my Nikon away.

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( 2017.12.13 )