PHOTO YODOBASHI

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1996年、Nikon F5 登場
現在に繋がる礎的モデルがここに誕生

編集部で歴代モデルをこねくり回してるいると「デジカメじゃん、、」と呟く。あらゆる意味で、現在のニコンの礎となったモデルといって過言でないでしょう。このスタイルをご覧じくだされ! 後ろに液晶画面があっても違和感ゼロであります! ちょっと機構を振り返ってみましょう。色情報と被写体までの距離情報を加味して測光する3D-RGBマルチパターン測光をはじめて採用したのが、このF5です。コマンドダイヤルを採用したのもF5が初めて。AF多点測距(5点!)を採用したのもF5が初めて。さらにバッテリーパックを一体化したのも新鮮でした。実際にモノコック的なボディがデジタルカメラで後に発売されますが、まさにチューブラーフレームにボディを架装していたクルマが、モノコックでフルモデルチェンジしたようなインパクトでしたね。なんにせよ、このボディ形状でモーター配置が自由になったのか、なにも後付けすることなく秒間8コマを実現しています。Fから始まり、さまざまなニーズと機能を取り込んで一体化、それが結実したモデルがF5でしょう。憧れたなー、本当に憧れた。量販店でシャッターを切り(お約束Cモード)ミラーのキレ、シャッター音。もう存在そのものが偉大で。そして恋い焦がれる、うなされるというのが適当か。そうそう、F5では非Aiレンズは標準状態で装着できませんでしたが、Ai爪可倒の改造をニコンで受け付けていました。このときのアイデアが、Dfにそっくりそのまま来てるわけです。振り返ってみるといろいろと面白いですね。そして21世紀到来直前の1999年にNikon D1が登場。F5は急速に過去へと追いやられていきます。これからのニコンを支える礎を残して。


  • このアングルで見ると、念のために設けられているリワインドクランクを除けば、まんまD一桁台。そうそう、電源スイッチにロックボタンがあるんですよねえ。電源入れっぱなしでも容量的に不安のないフィルムカメラならではかもしれません。

  • 背面。こう見ると、感材がフィルムからセンサーに置き換わっただけ。そう言い切ってしまうと語弊はあるかもしれませんが。リワインドは「1」「2」を押すことで実行。現在のFormatボタン2個押しに繋がってるのでしょうか。そこかしこに、今の姿が見え隠れします。


「より写り、より写せるカメラを」
ひたむきなエンジニアリング、それがFの血統

いかがでしたか?歴代のモデルを振り返ると、それまでの資産を大事に、できる限り時代のニーズに応えようと小さなボディにアッセンブルしてきた。そんなひたむきさが伺えたと思います。最初はボディに機能を実現するパーツをアタッチするだけですが、時を重ねるにつれて統合化が進み、1つ1つの次元を駆け上がっていったのが歴代の各モデルの姿に現れています。なにごともそうですが、物事は時の経過とともに複雑化の一途を辿ります。次元が1つ上がるということは、それ以前に比べてさまざまな要素が密接に関与するが故です。しかし人の想いや欲求は、得てしてエンジニアリングの枠を一気に飛び越えていくものです。それに追従するために、新たに盛り込む要件を複数のモジュールを掛け合わせ、時に新たに産み出し付け加え、叶えていく。そうして生まれたプロダクトを手にすると、物作りに関わる全ての人々に心から尊敬の念を抱くと同時に、プロダクトに宿る”考え方”に触れる喜びを感じます。

面白いと感じるのは、ニコンのカメラに変わらないものがあります。それはFからずっと変わらないものです。あくまで個人的な主観に過ぎないのですが、撮影しているとニコンのカメラは「小さくなる」。自分自身の身体の一部のように感じられるということです。なにがそうさせるのか、パラメータ的なもので解釈できるようなものなのか、それはわかりません。しかし歴代のモデルにあらためて触れてみて、やはりそう感じるのです。そうそう、最近もD850で同じことを感じました。手にした瞬間「あ、こりゃいいカメラだな」。そんな風に感じられるカメラはなかなかない。あくまで主観ですよ。私が古くからのニコンファンだということも差し引かなきゃいけないかもしれません。

一時のデジタルカメラ旋風も落ち着きを感じる‥なんて、とんでもない。歴代モデルを振り返れば、ずっとずっとオーバーラップしながら続いているのです。デジタルカメラの登場、そして隆盛はカメラ史のなかでも劇的に映るかもしれない。しかし「より写り、より写せるカメラを」。その流れの中の1ページなのです。そして今日も続いています。そして今日に始まったことじゃない。この流れの「継承」、そして言語化されるまでもなくずっと「伝わっているもの」。これが血統というものであり、ニコンという会社が100年という時を刻んできた原動力なのかもしれません。

(追伸)
上の写真は、私が最も使い込んできたモデル、Nikon F100。当時「F5ジュニア」との謳い文句でした。その言葉のとおり、決してF5の廉価版ではありませんでした。ボディそのものの質感、動作の質感、F5が大きく高くて買えなかった自分にも、その世界を味合わせてくれたカメラでした。レンズは懐かしの28-105mm。思い入れのあるレンズです。マクロ切り替えボタンがあり、近接もそこそこにこなせました。街中のおおよその撮影はこの組み合わせでこなせたし、数限りないほどのポジを通してきました。ちなみにレポートの仕事で、D1桁以外のカメラもよく触れます。あいかわらず、そのカメラ達は廉価版じゃない。ニコンっていいな、毎度そう思わされます。100周年おめでとうございます!

「デジタルカメラや、F6はどうした?」‥はい、ごもっともなのですが、デジタルカメラはまたの機会に。そしてF6はD2系がベースになったほど新しいフィルムカメラです。そして未だ現行で購入できます。そんなわけでもしよければ買えるうちに買って、ぜひお確かめください。

余談ですが、本ページの機材撮影はすべて、Nikon Df & Macro Nikkor-P Auto 1:3.5 f=55mmで撮影しました。ファインダーでピントの山は掴みやすく、レンズはともかくよく写る! Mr.ニコン・後藤フェローにインタビューし、いろいろなお話を伺ってきましたが、つくづく後藤フェローは、写真ファンそしてカメラファンのニーズを1台に注ぎ込んできた方だなと、撮影しながら感じました。あらためて、Df、いいですよ! インタビュー記事などがこれから更新されていきます。ぜひお楽しみに。

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( 2017.11.29 )