PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

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Behind the scene of GAPPURI ZEISS
Vol.06

Hologon と Biogon

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・・・どっちも悪い奴です。

なんせ高いです。Biogonはまあ中堅どころの一眼レフぐらいのお値段。こちらは歯を食いしばればなんとかなりそうです。Hologonに至っては下手したらハイブリッドカーが新車で買えてしまいます。こんな湯船で・・(自粛)のようなレンズがですよ? この常軌を逸したレンズについて家族に上手い言い訳ができるのであれば、それはもう本当に天晴れです。

なんせ愛らしいです。レンズキャップのような出で立ちのHologon。飴玉ともいえる舐めたくなるような前玉(湯船のヤツは・・)もういい、写らなくてもいい。中判カメラとしては異様なほどにコンパクトで手のひらサイズのHASSELBLAD SWC。それに載っかるBiogon。ズッシリ重くて削りだしの一品物のようなオーラを纏う。もういい、居てくれるだけで。

なんせ御しきれません。2本ともまともに扱えたためしがありません。しかし写りはとにかく猛烈。これは自分にイラつきます。まずHologon。指は写るわ、手持ちでいくら水平垂直を出したつもりでも微妙に傾いてしまうわ、ど真ん中に被写体置いたつもりもビミョ〜にズレてて気持ち悪いわ、たまにもの凄いのが撮れた!と思えば、単に周辺減光が強烈なだけという。次にBiogon。Hologonも目測ですが、あちらはまあ135です。こちらは中判、目測はキツイですよ。外付けファインダーは覗くと歪みで目眩がしそうだし、それらを嫌う方々向けになんとフィルムバックを取り外してピントグラスを付け、挙げ句の果てに90度のファインダーを取り付けろというオプションが存在します。このコンパクトさを完全スポイルですから笑ってしまいます。当然手持ちで撮影したくなりますよね、この風体ですから。外付けファインダーをご覧ください。なんだか横方向へボコっと飛び出ていますよね。ボディに水準器が仕込んであり、それをプリズムで拾って覗き見るという寸法。ファインダーを覗きつつチラっと視線をプリズムに移し、気泡が円の中に収まるように、ボクサーのように身体を小刻みに振るのです。毎度シャッターが下りるまで息を止めてしまうのがおかしくて、そのうち唇が紫になるんじゃないかと。写りですか?? はいサイコーです。本当にイライラします。いいんですよ、ダメって言ってくれるだけで。

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「触覚」 CARL ZEISS HOLOGON 1:8/15

このレンズには被写体に手で触れられるような感覚があります。15mmという超広角なこともあり、ほんの少しアングルが変わっただけでガラッと画は変わるため、レンズを通した像を見ずに撮るのは本当に難しい。F値も固定で、しかも暗い。レンズの向け先も必然的に限られてきます。しかし毎度毎度ネガを見てとにかく唸らされます。手に入れるのも大変、そこからモノにするのはさらに大変。自分にとっては面白いレンズです。手に入れる前も手にした後も、相変わらずその存在にうなされ、惑わされているのですから。

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「命」 Carl Zeiss Biogon 1:4.5 f=38mm

Biogonの語源ともいえる、生命感のようなものを本当に感じさせられるレンズです。地元の人達が通う教会で、そう人が集まるわけではありませんが、長い間人々の祈りが積み重なった厳かな空気に包まれていました。なんといえばよいか、密に重みのある空間ですが、その場に足を踏み入れた者をそっと包み込むかのようです。私が経験してきた限りでは、こんなシーンを捉えるのにはこのレンズが一番相応しいのではないかと思います。もう少しカットを掲載したいところですが、Hologon以上に扱いづらい印象で、ともかく上手く撮れません。探してみましたが、本当にロクなカットがない。いつか使いこなせるようになりたいと思いつつ、早15年以上。。書籍にはいくつか掲載していますので、よければご覧ください。


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まったく思い通りにならない、だからこその魅力。

2本に共通するのは、特長的で素晴らしい写りを実現する構成と引き替えに、いわゆる一眼レフのような形で用いることができないということ。しかもそれがかなりの広角レンズだということ。この2本だけを使っていれば多少なりとも扱いは上手くなる気もしますが、画角を考えたらなかなかそうもいかない。写りが素晴らしいだけに、撮る度に半ば嫌になってしまいます。いまのレンズにしても、カメラにしても、撮り手がさほど苦労させられることはなく実に至れり尽くせり。使いこなせないほどの機能が詰めこまれています。それ自体は本当に写真を自由にしてくれるものだと思いますが、もう少し「こうしたい!」という想いだけが先行する物が出てきてもよい気もします。この2本のレンズが出てきた頃に比べれば、時は流れ、そう簡単でないことは百も承知しています。ありきたりなステレオタイプな話かもしれません。ただそれはそれとして、この2本が放つ魅力に疑いの余地はないでしょう。大変な想いをして手に入れた経緯も手伝って、本当に思い入れのある2本です。(K)


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( 2019.05.17 )

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決してコピーを作らず、コツコツと真面目に光学製品を作り出してきたツァイス。お作法はあれど、一度その写りに魅了されてしまったら、二度とツァイスレンズを手放せなくなります。そんな魅力を一冊で見渡すことのできる『GAPPURI ZEISS』。ページをめくるごとに新しい発見がある……かもしれません。

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印刷された写真を見るのとは趣きが違うものの、いつでもどこでも好きな時間に見る、読むことができる電子書籍は、ある意味ではいまや物理的な本よりも身近で本らしい存在なのかもしれません。気軽に携行できるというよさもありますから、まずは電子書籍版でツァイスの扉を開けてみるのもいいのでは?

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