PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

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Behind the scene of GAPPURI ZEISS
Vol.02

ツァイスレンズで撮る「ポートレート的」物撮り写真

何回目かの編集会議。「外観写真どうしようか」「かっこよくいきたいね」「普通じゃ面白くないし」「やっぱりZEISSで撮影」などなど、好き勝手に話が出たところで「とりあえずやってよ」と私にお鉢が回ってきました。さてどうしたものか……。そのとき「レンズってカメラの目だからポートレートっぽく撮ったら」と天使のささやきが。そのアイデアいただきます。ポートレートといえばHasselblad+Planar 80mm F2.8ということで(勝手な思い込みかもしれませんが)GAPPURI ZEISSの外観写真は全てPlanar 80mm F2.8で撮影に決定。機材が決まったところでどう撮るか……。


ライティングの様子

ライティング講座で紹介しましたが、物を撮るライティングは大きく分けてふたつあります。アングルを決めてからライティングをする方法と、好きな“らしい光”を作ってから撮影物を置く方法です。プロのように十分に機材が揃っていれば撮影物に対してライティングする方法もありかと思いますが、ふんだんに機材を持っていない方は(普通はそうですね)好きな“らしい”光を作る方法をお勧めします。

まずZEISSらしい光を考えてみました。ZEISSの描写は解像感ではなく立体感で画を作り上げていきます。そのため力のない弱い光でも細部までクリアーに再現し被写体に見事な存在感を与えてくれます。この弱い光での描写をZEISSは最も得意としているように感じます。弱い光ではなかなかエッジが立たないのでレンズのような硬質なものを撮ってうまくいくのかなとも思いましたが、ZEISSの世界観を表現するにはいちばん“らしい光”ではないかと考えました。

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上の写真が“らしい光”を作り出すライティングの様子です。西側の窓にロールカーテンを下ろし、さらにアートレ(片面が無反射になっているプラスティック製のトレーシングペーパー)を前に垂らし弱い光を作り出しています。撮影時間も西側に陽が当たらない午前中を選びディフューズされた光が強くなるのを避けています。左右においてある黒いボードは部屋の中がレンズに写り込むのを避けるためです。白ではなく黒を選んだ理由は、レンズのサイドに黒を写しこませることで、レンズをシャープに見せるためです。ポートレートを撮るときに周りを黒で囲むとスマートに見えることの応用ですね。

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ピントを考える。

光が決まったところでどう撮るか。ポートレート写真で一番印象に残っているのが、浅いピントでふたつの瞳にだけピントが合っているロバート・メープルソープのセルフポートレート。顔の輪郭のボケの雰囲気がいかにもPlanarらしく、ZEISSの美しいボケ味が見事に表現されています。メーカーのカタログ写真は、ピントががっちり合っているものがほとんどですが、ポートレートのようなGAPPURIのレンズ写真は Planarのボケ味を見て欲しいと思い、絞りを開けてレンズ名だけにピントが来るように撮影しました。さらっと言ってしまいましたが、撮影ノート「ピントの話」をご覧になった方は、表紙のBiogon 38mm F4.5の写真を見て「あれっ」と思われたのではないでしょうか。そうです、ピントは面でくるので斜めから見るとレンズの周囲にぐるっと書いてある文字全てにピントを合わせるのは不可能になります(絞って被写界深度を深くすれば可能ですが)。

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簡単な図を作ってみました。図1を見ていただくとピントは赤い線で合ってきます。そのため緑のラインのように置かれた文字は赤と交わる一点しかピントがこないのです。

ではどうすればいいのか。蛇腹のカメラやティルトレンズを使ったことがある方はお分かりですね。レンズ面かセンサー面をティルト(垂直方向に傾ける)することでピントを合わせることができるのです。これはシャインプルーフの原理『センサー平面と写真レンズの主面とがあるひとつの直線で交わるとき、ピントが合う物面もまた同じ直線で交わるというものである。』を応用したものです(図2)。作例の撮影データの見慣れないカメラHasselblad FlexBodyを使用したのは、このカメラがセンサー面をティルトすることができるからです。

さて、いろいろ考えたところで最後に全体の空気感を決めるレンズの選択です。レンズ沼を覗き込んで「6枚玉はボケすぎるな。少しでもクリアーに濁りなく撮りたいからT*だな」とPlanar 80mm F2.8 T*を拾い上げ準備完了。予想通り写るかなと思いながらピントを慎重に送りシャッターを。この瞬間のワクワクドキドキがいいなといつも思います。

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ZEISSらしさとレンズが持っている個性を少しでも感じていただきたくポートレートのように撮ったレンズ写真。Planarの描写で長年の使用でできた汚れ、傷までリアルに再現することができました。その一つ一つがそのレンズが存在した証、まるで人の顔に刻まれた歴史のように感じました。GAPPURI ZEISSを手に取っていただいた時、まるでポートレートのように、一本一本のレンズに個性を感じていただき、レンズへの愛を深めていただけると幸いです。(A.Inden)


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( 2019.03.29 )

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ある意味では、ツァイスレンズを使った写真集ともいえる側面を持つ一冊。とことんこだわった印刷ですから、ぜひ紙で見ていただきたい! ページをめくる喜び、モノとしての本の魅力を感じていただける書籍版。大変お待たせいたしました。再入荷の書籍版をこの機会にぜひどうぞ。

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