Canon EOS-1D X, Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE, 1/2000, F2.8, ISO 100, Photo by A.Inden

Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE

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最高の性能を求めてカールツァイスが生み出したオータスシリーズに85mm F1.4のレンズが登場しました。高価な硝材を惜しみなく費やした贅沢な設計で、手にすればずっしりと重く、フォーカスはマニュアル。利便性やコストを考えれば手にする人は限られてくると思いますが、だからこそ "意欲的な" 製品と言えますし、こういったレンズが現れてくること自体が実に嬉しいものです。本レビューはキヤノンEFマウント用のものとなりますが、性能は同様であるニコンマウント用のレビューもご覧いただきながら、キヤノンボディでの撮影および作例のバリエーションとして、このレンズの描写をお楽しみいただきたいと思います。

( 写真:A.Inden / 文:48 )

Canon EOS-1D X, Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE, 1/2000, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

どんな言葉を尽くせば、このレンズの力が伝わるのだろう。

砂粒一粒を判別できるようなシャープネスに、被写体が浮き立つような立体感。すばらしい解像力に目が奪われるのですが、それだけがこの写真の雰囲気を生み出しているわけではありません。前後のボケのスムースさ、青空を背景に光が溢れるグラデーション、砂と影の織りなす表情、その色合い。さまざまな要素が重なりあって、この写真の印象が生まれるわけです。すばらしい解像力だとか、美しいボケだとか、ヌケの良さだとか。並べる言葉は色々とあるのですが、それだけではこのレンズの本質をどうにも説明できていない気がします。

Canon EOS-1D X, Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE, 1/1000, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

オータスが求めたのは最高の描写性能です。三次元を二次元に集約するという難しい仕事のなかで、収差が生まれるのは当然のこと。そんな収差を徹底的に排したというレンズは、あたかも磨き上げられた日本酒のような世界です。ピント面を明瞭に描き、前後を淡くぼかし、隅々までクリアな色を見せて、まったくクセがない。鮮やかな世界を口腔に描きながらも、水のように澄み切った印象を残してくれる。却ってわかりにくいでしょうか。

Canon EOS-1D X, Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE, 1/125, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

レンズを実際に使ってみることが一番良いのですが、そうもできないからこそレビューの意義があると思います。今回の作例では、なるべく日常的なシーンを選んでみました。瞬発力を必要とするようなスナップも含めていませんから、似たようなシチュエーションを見つければ似たような写真を撮影できると思います。ひとつ「手持ちの機材を使って、レビューの写真と比較してみる」なんていう見方を楽しんでいただきたいと思うのです。85mmレンズをお持ちであれば純粋に比較として、お持ちでなければ85mmレンズが拓く世界を想像するために。木の椅子に光が落ちるふとした光景ですが、中望遠レンズでなければこのような雰囲気は生まれません。

Canon EOS-1D X, Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE, 1/20, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

大口径レンズを手にしたばかりの頃なら、大きくボケるだけでもうれしいものでした。沢山のレンズを使い、色々な写真を見続けていれば、やがてボケの質にも目が行くようになります。しかしボケの美しさは数値での評価が難しく、なんとなく感覚的な話になってしまいますよね。「ボケがうるさい」なんて聞いても、なんのことだかよくわからない。それはまだ「キレイなボケ」を見ていないからかもしれません。キッチンに置かれたパンチングストレーナー。ピント面が被写体を硬質に描いていればこそ、ボケのスムースさも際立って見えます。

Canon EOS-1D X, Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE, 1/4000, F4, ISO 100, Photo by A.Inden

少し絞って街角を切り取れば、壁面のタイル一枚一枚に至るまで、曖昧さの一切ない描写にシビれます。中望遠はポートレートレンズという印象が強いかもしれませんが、実のところ画面の整理がしやすい画角ですし、絞りを開けば印象的な画が得られ、街角スナップや風景撮影に使いやすい焦点距離だと思います。標準単焦点レンズをお持ちの方が次に選ぶ一本として、魅力的な選択肢ではないでしょうか。同じF1.4でも、55mmと85mmはずいぶんとできることが変わってきます。

Canon EOS-1D X, Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE, 1/250, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

単なるパイプ椅子を、このように表現できるわけです。ビニールの背もたれの表情や前後の自然なボケが圧倒的ですね。あらゆるシーンで撮影者の期待する結果を残してくれるという感覚で、やさしい調子に写すにもクールな調子で決めるにも、まさに撮影者の意図次第。表現力の広さは撮影者の腕に応じて、なんていうと難しいレンズのように感じてしまうかもしれませんが、言い換えれば懐が深いということ。静物を被写体にしているのなら焦る必要はありませんから、じっくりとピントを合わせて露出を変えながら撮ってみましょう。

Canon EOS-1D X, Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE, 1/3000, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

忘れてはいけないことは、本レンズがマニュアルフォーカスであることです。AFが欲しいと思ってしまうのも正直なところではあるのですが、撮っていて楽しいのはMFですね。ピントをどこに置くのか、じっくりと考えながらヘリコイドを回していく。手に伝わるトルクも心地よく、1枚1枚の写真を「自分で撮っている」という実感を味わうことができます。上の写真のように動きのある被写体を狙うには少しコツが必要ですが、ピントが合っていなくてもシャッターが切れるというのもひとつの利点。「なにしろ重くてさあ」とか「ピント合わせるの大変で」なんてニヤニヤしながら、その写りをおおいに楽しんでいただきたいと思います。

Canon EOS-1D X, Carl Zeiss Otus 1.4/85 ZE, 1/125, F1.4, ISO 100, Photo by A.Inden

いつかは手にしてみたい "究極" の一本

良いレンズとは何か。そんな曖昧な問いでは答えが定められるものではありませんが、描写性能という観点から言うならば Otus 1.4/85 は間違いなく一つの頂点にあります。この上なく端正に、ドラマティックに、目にした光景を持ち帰ってくれる本レンズは、使うほどに確かな結果をもたらしてくれる頼もしい相棒となることでしょう。優秀すぎてつまらない、なんていう心配はご無用。もちろんレンズグルメの方々なら欠点を個性として愛しクセを使いこなす腕前をお持ちだと思いますが、欠点の見当たらないこの崇高な世界には必ず驚きと興奮を感じていただけるはずです。何でもいいからレンズを向けて、とにかくその描写が見たくてシャッターを切る。少し大げさかもしれませんが、中判のカメラを手に入れてそんな風に撮り歩いた頃の気持ちを、久しぶりに思い出させてくれるレンズでした。

使ってみたいレンズに出会えることは幸せです。手にするには少々の覚悟が必要なレンズだと思いますが、もしチャンスがあるのなら(そして覚悟ができたのなら)、勇気を持って一歩を踏み出してみてください。気に入ったレンズを手にしたあとで、多くの方は同じことを思うものです。
「もっと早く手に入れていればよかった」と。

( 2015.02.20 )




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誕生、成長、成人、結婚。これからの人生の節目をこのようなレンズで写真に残せるのなら、その価値はお金に代えられるものではありません。オータスを持つ貴方だから撮れる写真で、皆を笑顔にしてください。

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プロテクタ代わりに使える紫外線カットフィルターです。やはりこれも、カールツァイスでなくてはいけませんよね。

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