PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
FUJIFILM GF63mmF2.8 R WR
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
中判フォーマットセンサー(43.8×32.9mm)を擁するミラーレス一眼のGFX 50Sの発売と同時に新しい3本のフジノン GFレンズが用意されました。そのうちの一本が、こちらの単焦点標準レンズ「FUJIFILM GF63mm F2.8 R WR」。絞り開放から大変キレのある像を結び、色収差もしっかり抑えられているなど、隙の無い描写性能を見せ付けてくれます。隙が無いというと杓子定規な写りで、面白みに欠けるということではありません。大口径レンズらしいボリューミーで柔らかなボケと、シャープな像の共演は見事なものです。ご存知のように、フルサイズでのF2.8よりも中判のそれは、被写界深度がさらに浅くなりますから開放の画の魅力はかなりのものです。その証拠にと言ったらなんですが、今回ご覧いただく作例カットはF4.5に絞ったカットが1枚。他はすべて開放、という潔さ。おいおいそれでホントにレビューになってるのぉ?というツッコミも出てきそうですが…そこはPY編集部ベテランカメラマン。絞りはもはや被写界深度を稼ぐためだけだなとの判断でしょう。どうやら近接から遠景まで開放で、どのように描けるのかをたっぷりとご覧に入れたかったようです。そうです、このレンズの醍醐味は開放だ!と言わんばかりの作例カットをとくとご覧くださいませ。
( Photography : A.Inden / Text : KIMURAX )
開放から1段絞ったF4あたりからすでにシャープさが画面全体に行き渡ります。とにかく細かい。咲き誇る花弁の一つひとつから枝先、画面左側にある笹の葉先の様子まで、実に丁寧に描ききっています。その描き込みの凄さから、ついディテールへと眼が行ってしまいましたが、画全体の奥行きはさすが。センサーサイズの懐の深さをまざまざと見せつけてくれます。もちろんそのセンサーサイズが故に、ややもするとレンズ自体の粗までもが写し出されるわけですが…拡大して眼を皿のようにしてチェックしてみても見あたらず。そういえば絞りの話でお伝えしておくことがありました。FXレンズではお馴染みの「プログラムAE」や「シャッタースピード優先AE」での撮影時に使用する「Aポジション」に加え、本レンズにはボディからも絞り値を変更できる「Cポジション」を絞りリング上に設置。使い勝手のよさにも磨きがかけられています。
前ボケ、いいですね。シチュエーション的にはパープルフリンジが出ても不思議ではありませんが出ていません。四隅の像が流れるようなこともなく、絞り開放からよく写ります。
すこし触れただけも、すぐにパリパリッと音を立てて剥がれてしまいそうなペンキ。カラッカラに乾ききった質感が伝わってきます。その塗り重ねられた様子や、その時々に塗られた白の色合いの差異。うっすらと覆う赤錆のシミ。しっかりとしたトーン表現がなされていればこそのリアリティだと思います。
ガラスへの映り込みと前後のデフォーカスエリアの洋服が、とても自然に馴染んでいます。誤魔化すようなことはなく、目の前にあるがままの様子を克明に描き込んでいると言っていいでしょう。フォーカスしたストライプ柄のシャツの繊維までハッキリ。絞り開放から描写力全開です。AFがキビキビ捉えてくれるので、こういったストリートスナップも中判システムながらテンポ良くシャッターを切って行けます。
フルサイズレンズでF2.8の被写界深度よりもさらに浅くなることは冒頭でも触れましたが、実際の写りを見るとよくわかりますよね。ピント面の前後から、淀むことなく自然にじんわりと連なっていくボケ味。ピント面で捉えた部分のリアリティに、思わずドキッとさせられます。
一番目に付くのがアルミ製のガソリンタンクでしょうか。金属の艶かしい質感から曲面まで精緻に再現されています。
かなり年季の入ったボートの船底であることがよくわかる描き込み。色乗り、バッチリです!
実物以上のサイズへと、どんどん拡大していっても失われないリアリティ。マクロ的な撮影にもトライしてみたくなりますね。
本レンズの最短撮影距離は50cm。それにしても開放からよく解像するレンズです。せっかくの明るいレンズですからできるだけ開いて、気軽に身近な被写体を切り取っていく面白いですよ。
これだけ解像力のあるレンズですから、とにかくピント合わせがシビア。しかしながらレンズ、ボディ共に手ブレ補正機能はありません。三脚などが有ればなお安心でしょうが、気合いの手持ちでも全然いけちゃいました。取り回し的にも、フルサイズ機での撮影感覚とほとんど変わらないですからね、この「63mm F2.8 R WR」を装着していれば。
中判デジタルを、アクティブに。
日本初となる中判ミラーレス一眼のために用意された単焦点標準レンズの全長はたったの71mm。レビュー執筆時点では5本の単焦点レンズがラインナップしていますが、最もコンパクトにまとめられています。ミラーレスにしたことで、中判ながらハンドリング性がグッとアップしたGFXシステムのアドバンテージをより享受し易い組み合わせになるレンズだと言えそうです。システム自体プロフェッショナルユースがメインになることを想定しており、防塵・防滴に加えマイナス10度の耐低温構造まで採用するという信頼の造り込み。日常使いにはなんら不足のないスペックを有していますから、これ一本つけっぱなしで街中スナップという撮影スタイルだって楽しめてしまいます。描写力の確かさは作例カットで既にお分かりいただけたことでしょう。スイスイと動き回りながら、被写体との距離が写りにどんな変化をもたらすのか、いろいろと試してみるのもこれまた一興。ふと見過ごしてしまいそうな日常を切り取るだけでも、たちまち作品へと仕立て上げてしまう表現力に、思わずニンマリしてしまうことでしょう。プロの方のみならず、ハイアマチュアの方々が「GFX 50S」という武器を手に入れる際には、外せないレンズです。
( 2017.10.02 )
35mm版換算、約50mmの画角を持つ、GFXシリーズ用標準レンズです。すっきりとしたデザインで小型軽量。フルサイズ機一眼レフとほぼ変わらぬハンドリングで撮影できます。前群繰り出し式のフォーカスで撮影距離による収差の変動も抑えました。
防塵・防滴・マイナス10度の耐低温構造ではありますが、常にむき出しの状態になっている前玉は保護しておいた方が精神衛生上よろしいかと思います。こちらは富士フイルム純正の62mm径用のレンズ保護フィルターです。
中判サイズ(43.8×32.9mm)、Gフォーマットのセンサーを搭載した中判ミラーレスデジタルカメラGFX 50Sです。有効画素数は5140万画素。中判といえど、小型軽量ですから、さまざまなシーンに持ち出してみてください。
GFX 50S用のEVFチルトアダプターです。このアダプターをボディ、EVFユニットの間に装着すれば、さまざまなアングルでの撮影が可能になります。横位置撮影時で0~90度、縦位置撮影時で-45~+45度の範囲でEVFの装着角度を調整することができます。