PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

Irix Firefly 15mm F2.4

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

スイス、ポーランド、韓国の3カ国に拠点を置き、設計、マーケティング、製造をそれぞれで行っているレンズメーカーIrix(アイリックス)からリリースされている「Firefly 15mm F2.4」のレビューをお届けします。本レンズはフルサイズ一眼レフ対応、画角110度の超広角レンズです。レンズ構成は11枚15枚。3枚の高屈折レンズ、2枚のEDおよび非球面レンズの組み合わせで低ディストーションを実現しているとのこと。マニュアルフォーカスレンズで、シビアに無限大のピント調整ができるようオーバーインフのピントリングを搭載しており、無限遠の位置が暗所でもわかるようインフィニティクリックがついているのが特長です。またフォーカスロック機能により不用意なピントのズレを防止し、リアフィルタースロットが装備されているためオプションのNDフィルターを装着することが可能であるなど、写真を撮るための使いやすさを細部にわたり追求しています。
大きな特徴として、同じ焦点距離で材質の違う2種類のハウジング(Firefly、Blackstoneバージョン)が用意されており、レンズを使用するシチュエーションによって選択することが可能になっています。どちらのハウジングも全天候対応シーリングが施されています。今回レビューするレンズ「Firefly」は持ち運びやすさを考慮した軽量樹脂製のハウジングで軽さを追求しています。対応するマウントは、キヤノンEF用、ニコンF用、ペンタックスK用(受注生産)となっています。

( Photography & Text : A.Inden )

Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

画面の一点に向かってスパっと気持ちの良い直線が伸びて行く、超広角レンズらしい画を一枚。デジタルになってレンズの収差をボディ内で処理するレンズが増えてきましたが、本レンズは光学補正のみで歪曲収差がほとんど見られません。ここまで光学的に補正されているので、フィルムカメラに装着しても同じ描写が楽しめます。

Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

手前の被写体にピントを送り、ボケ味をチェックしてみました。超広角にボケ味?と思いますが、F2.4の開放値を見るとどうしても気になってしまいます。上の作例の背景にあるレンガの壁は柔らかく素直なボケ、下の作例の右側にある小枝はちょっと二線ボケ気味でザワっとしたボケです。開放でのピントピークはカリカリしたものではなく、立体感を伴った解像感のある描写です。コンクリートに描かれたペイント文字の雰囲気にゾクっときました。

Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

派手に太陽を入れてみましたが、ハレーションはよく抑えられていて左側にごくわずかに感じられる程度です。右のビルの反射もかなり強いものですがハレーションは見られません。ハレーションが気になる撮影では、ライブビューで確認しながら撮ることである程度コントロールできそうです。

Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

ステンドグラスが自然な色調で再現されています。床や壁の写り込みの色も濁ることなくクリアに発色しています。ステンドグラスの微妙な色のグラデーションも見事です。色再現は目にパッと訴えてくる派手な感じではありませんが、落ち着いた厚みのある色味です。開放で手すりの柱にピントを合わせましたが、しっかりステンドグラスまでピントが来ています。開放でもかなり被写界深度が稼げるのは、暗い場所で深いピントが必要なときには強みです。


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長時間露光や同じ条件で撮り続けたいとき、不用意にピントが動いてしまわないようにフォーカスロック機能が付いています。レンズ先端のリングをlockの方に回すとピントリングが固定されます。カチッとロックされるのではなく締め付けることによってロックさせるため、締め付け具合を調整することで、ピントリングのテンションを変えることができます。フルサイズの場合15mmではF8ぐらいまで絞るとほとんどパンフォーカスになるので、ピントを2mに固定して、街中をノーファインダーでスナップするのも面白いのではないでしょうか。

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無限大のピント調整が可能なようにオーバーインフのピントリングが搭載されています。写真左側が通常の無限遠の位置、右が無限遠を過ぎた状態です。AFが当たり前になり無限遠のピント合わせをシビアに考えなくて良くなりましたが、MFで撮影する場合、遠くの被写体に確実にピントを合わせるため、無限遠付近を行き来していちばんピントが合うところを確認します。星空撮影などAFが迷うような条件ではオーバーインフがあることで安心して撮影が行えるでしょう。インフィニティクリックを装備しているので、通常撮影の際は無限遠の位置で一度ピントリングがカチリと止まるようになっています。


Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

縦横の直線がわかりやすい建築物を撮影してみました。歪曲はほとんど感じられません。光学補正のみでここまでスッキリさせ、さらに開放値をF2.4を実現。恐るべきレンズ性能です。

Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

開放では周辺光量落ちがやや目立ちます。これは好みの問題もあるかと思いますが、真ん中に視線を集中させるには、良い塩梅ではないでしょうか。もちろんF8程度まで絞ると解消されます。


Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden

最短撮影距離、開放で撮影。開放でのピントピークの描写は素晴らしく、植物の異なる質感を見事に写し分けています。背景の選び方次第でボケをうまくまとめることができそうです。

Canon EOS-1D X, Irix Firefly 15mm F2.4, Photo by A.Inden


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描写を理解し自分なりにさじ加減できる楽しさ

「写真家によって考案されたレンズ」。このコピーと本レンズの仕様から使いやすさを追求したレンズなのではと思い試写を始めました。しかし、作例を撮り進めるにつれ、その自然な描写に「この描写こそが写真家として手に入れたかったものなんだ」という想いを強く感じました。

デジタル用に新しく開発されたレンズは、カメラの高画素化が進む中で自然と高解像度を求められるようになってきました。さらに、ミラーレス化が進み、コンパクト化も求められるようになっています。高性能でコンパクトとは、「いいレンズは大きくて重いもんだよ」なんて言われていた時代からすると無理難題のような注文ですが、画像処理エンジンが発達することで、デジタル処理で補正できるものと光学的に補正するもののすみ分けが進み、細かな収差は消え、クリアーな描写が実現できるようになってきたのです。ただ、あまりにも整いすぎた画は、個性が消えて味気がないと思ってしまうのは贅沢というものでしょうか。

レンズは完璧な描写を目指すものというのは理解できます。ただ、個性が残っているレンズを自分なりに使いこなして自分らしい写真を生み出していく、そんな楽しみがあった方が面白いと感じませんか。絵を描くためにさまざまな絵筆があるように、写真を撮るのにも描写の違った個性を感じられるレンズの選択肢が必要ではないでしょうか。そんな風に考えると、デジタル化の流れとは少し違うように感じられる描写は、さすが写真家がプロデュースしたレンズだと納得できます。

( 2020.08.28 )

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超広角、F2.4の解放値でありながら光学設計だけで収差がほとんど補正されたレンズ。そのフィルムのような自然な描写を楽しんでみてください。

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ボディーは頑丈でなければと思う方は、光学性能は同じで外装がマグネシウムハウジングのこのレンズを。

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超広角レンズのフィルターは径が大きく高価になりがちですが、レンズの後ろにつけるタイプであればこの値段。

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